もっと日本酒が好きになる。蔵見学の心得。

日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する簗塲友何里(やなば ゆかり)さんのお酒コラム。今回は、行楽シーズンにぴったりの日本酒蔵見学のお話です。

ライター:簗塲友何里簗塲友何里
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蔵見学に行ってみましょう!

日本酒を造っている蔵は、どんな場所なのか? 日本酒を飲み始めた方も、すでにたくさん飲みなれている方も、実際に訪れてみたら、さらに日本酒が好きになる蔵見学。行ってみたいと思いませんか?

以前は私も蔵見学に慣れている方に連れて行っていただいて、後ろからついて行っていたこともありました。今となっては、他の方を連れて行く立場になりましたが、最初は閉ざされた蔵にお邪魔するのは、とても勇気がいることでした。寡黙に酒造りに励んでらっしゃる聖域のような場所に、足を踏み入れさせてもらう…そんな厳かな気持ちで、蔵見学に臨んだものです。
酒蔵は、もちろん、酒造りが本業です。その合間に蔵を見学させてもらうには、どのようなことに注意したら良いか、今回はまとめてみました。

見学の時期と準備

まずは予約です。酒造りの時期が各蔵元でそろそろ終わり、次の酒造りが始まるまでは、蔵見学をしやすい時期になります。5月から9月くらいまでを狙って、蔵見学を計画してみるのはいかがでしょう。実際、これらの時期は、お酒の造りはお休み中のため、蔵の中はひっそりとガランとしていることが多いですが、ゆっくりと気兼ねなく見学ができるので最初はそこから始めてみるのがおすすめです。

蔵には、一般公開している蔵としていない蔵があります。そして、基本的には、常に蔵見学対応のスタッフがいるわけではありません。そのため、確認して予約をしてから行きましょう。蔵元さんは、時間を空けて待っていてくれています。もちろん時間厳守でお願いします。
蔵の中はひっそりとガランとしていることが多いですが、ゆっくりと気兼ねなく見学ができる

前日から食べない方が良いもの

実は、蔵見学の前に食べてはいけないものがあります。酒蔵は、微生物にとても敏感です。そのため、生きた微生物が入った発酵食品は前日から食べるのをひかえましょう。それはずばり、納豆とヨーグルトなどの乳製品です! 特に納豆菌はとても強く、酒造りにとても影響を及ぼす可能性があります。日本酒は微生物の働きにより発酵をしているため、納豆菌が入ると酒造りに重要な麹酵素を造り出せなくなってしまうのです。

酒造りを始める前に麹室を綺麗に殺菌するとしても、造りの時期外でも大切な守られた空間に入るには、配慮すべきだと思います。酒造りをしている間は、蔵人は納豆を食べないようにしているそうです。乳酸菌は火落ち菌と呼ばれており、発酵中の醪に入ると、酸を大量に作り出し、味わいを損ねて杜氏が目指す味わいを造れなくなる可能性も。

納豆やヨーグルトを食べて蔵を訪れるのは避けましょう。また、漬物も乳酸菌で発酵した食品ですから、これも避けたほうが良いです。

見学中の注意点

蔵に入ってからも気をつけたほうが良いことがあります。まず、酒造りは菌にとても敏感です。素手でタンクや機材、道具には触れないようにしましょう。

また、大きなタンクを上から見るため、高いところに足場が組んであり、歩行が不安定な場所も蔵内にはあります。足元も濡れている可能性もあるので、ヒールのない歩きやすいフラットな清潔な靴をおすすめします。スカートも避けた方が無難ですね。

そして、写真の撮影についても最初に確認してから行いましょう。思わぬところに企業秘密が隠れていることもあります。私はSNSに載せても良いかも確認してから写真撮影を行っています。

造りの時期に見学していた場合は、できたての日本酒が手が届くところにあるかもしれません! もちろん、勝手に試飲してはいけません。日本酒は酒税の関係で、かなり厳密にできた量を管理されているからです。

車では行かない

日本酒の蔵は比較的交通の便が悪いところにあることが多いです。電車の本数も少なく、旅先でいくつかの蔵を回りたくても、なかなか時間的に難しいこともしばしば。でも、自家用車で行くのは避けたほうが良いでしょう。というのも、蔵見学を終えた後はお待ちかねの試飲をさせてくださる蔵も多いからです。そんな嬉しいチャンスを逃さないためにも、少し不便でも電車とタクシーで行くか、レンタカーで行って代行を頼むなどお酒を飲んだ後の対策を打っておきましょう。

貴重な経験になること間違いなしです!

酒屋さんで隣同士に並んでいる日本酒達も、一本一本に異なったストーリーがあります。実際に蔵に足を運んでみると、それぞれの蔵の規模や機械の違い、風土、蔵人の考え方の違いに驚くばかりです。わざわざ足を運んだ蔵には、愛着もわき、以前とは違った視点で日本酒選びができるようになるでしょう。ぜひぜひ、蔵元さんに好感を持たれ、もっとその蔵の日本酒が好きになるためにも、ルールを守って忘れられない蔵見学をお楽しみください。


※記事の情報は2018年6月12日時点のものです。
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