イタリア人のおすすめ! チャーハンに合うワイン

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが、在住していたヴェネツィアをはじめ、イタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回はイタリアのチャーハン、そして日本のチャーハンとワインのマリアージュについてご紹介します。

ライター:京藤好男京藤好男
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イタリア流チャーハンは主食ではない

ご飯が残れば、翌日は「チャーハン」が、我が家の定番だ。もちろん、家飲みの食卓に上がるのだが、米料理は意外にワインと合わせるのがむずかしい。

そこで某大学で私の仕事を手伝ってくれている、ナポリ東洋大学からの留学生マルティーナ・ヴェッキさんにたずねてみた。すると、

「チャーハンだけでは食べないから、よくわからないわ」

ちょっと困り顔で答えてくれた。決して、フシギちゃんなのではない。その真相はこうだ。

イタリアの家庭料理として一般的なチャーハンは、”Riso alla cantonese”[リーゾ アッラ カントネーゼ]と言われるもの。直訳すれば「広東風ライス」となる。特徴は「バスマティ」というインド産の長粒種を使うこと。加えて、具はいたってシンプルにすること。例えば、グリンピース、ハム、卵だけ。味付けも塩と醤油だけ。いかがだろう? 日本のチャーハン好きからすると、物足りなさが否めないのではないか。

さて、先の「バスマティ」という米だが、いわゆる「香り米」である。そして、それを10分ほどお湯で茹でる。その硬さも「アル・デンテ」というのが、さすがイタリアだ。それを先ほどの具と一緒にフライパンで炒めるわけだ。つまりチャーハンの仕上がりは、かなりパサパサしている。

だから「チャーハンだけでは食べない」のである。イタリアの食卓におけるチャーハンの位置づけは「つけ合わせ」なのである。主に、肉汁のたっぷりある一品のお皿に添えられている。例えば、先ほどのマルティーナさんの故郷はイスキア島なのだが、名物料理に「ウサギ肉の煮込みイスキア風(Coniglio all’ischiana)」がある。文字通り、ウサギ肉をトマトで煮込んだ一品だが、これにチャーハンを添えて、煮汁や肉と絡ませながらいただくというわけだ。

「チャーハンをこの煮込みといただくなら、イスキアの白がおすすめ。ビアンコレッラ・ディスキアという白がぴったりだと思います。あと、サルデーニャ島のヴェルメンティーノ・サルディも人気の組み合わせですよ」

マルティーナさんは、そのように教えてくれた。南イタリアらしいチョイスだ。ピアンコレッラ・ディスキア(Biancolella d’Ischia)もヴェルメンィーノ・サルディ(Vermentino sardi)も、ボディがしっかりある、濃いめの白で、肉料理に負けない味わいが特徴である。

日本のチャーハンに合うイタリアワイン

だが、ここで挫けるわけにはいかない。むしろ、私はそこに「日本のチャーハンに合うイタリアワイン」のヒントを見出したのだ。

つまり、イタリアのチャーハンは、チャーハン自体をシンプルにして、メインの料理と絡ませる。日本のチャーハンは、具をたっぷりにして最初から同じフライパンで炒め合わせる。結果的に「主食プラス主菜」の一品が出来上がるわけだ。

そこで肉の味が強めのチャーハン2品で試してみた。「豚の角煮のチャーハン」と「オムライス」である。注意点は次の通りだ。「角煮チャーハン」は煮汁も加えて炒めること。「オムライス」はチキンライスにしっかり味をつけて、卵は上からふんわり乗せる程度にする。あくまでも、目的は家飲みのつまみにすることである。

これらに、3万種類の料理とワインの組み合わせを紹介することで有名なイタリアのグルメサイト”Vino Cult”を参考にして、しっかりめのボディを持つ白を合わせてみたが、どれもかなりいける。

参考資料: http://vinocult.it/ricette/riso-alla-cantonese-cantonese-rice/

中でも、個人的に出色だと気に入ったのが、

ピノ・グリージョ(Pinot Grigio)

である。私の愛飲しているものはヴェネト産のものだが、ピノ・グリージョ100%使用のものならどれでもよいだろう。ブドウ品種のピノ・グリージョは、ピノ・ノワールという黒ブドウの突然変異種と言われ、つまり赤ワイン用のブドウである。本来「赤」でありながら、白ワイン用に栽培されている変わり種。そこから出来るワインは「白」でありながら、赤の強さを持つ辛口に仕上がる。

「肉系チャーハンにピノ・グリージョの組み合わせ」

これを定番に、さらなる組み合わせの妙を追求していこうと心に誓った。


※記事の情報は2017年8月15日の情報です。
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