おすすめアブルッツォ料理とぴったりのワイン

イタリア留学経験もあり、イタリア語講師として多数の著作がある京藤好男さん。イタリアの食文化にも造詣が深い京藤さんが、在住していたヴェネツィアをはじめ、イタリアの美味しいものや家飲み事情について綴る連載コラム。今回は、海の幸、山の幸に恵まれたイタリア・アブルッツォ州の料理についてご紹介します。

ライター:京藤好男京藤好男
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都内にあるアブルッツォ料理専門店へ

私が監修するNHK-Eテレ『旅するイタリア語』は、多くの裏方さんの支えられている。例えば、今回、南イタリアのカンパニア州を紹介しているが、そのロケに出てくる地元の人々の話す言葉は、かなり訛っている。そうした方言が出てくると、もう私一人では翻訳が追いつかず、方言に詳しいイタリア人の助けを借りなくてはならない。そんなときのアドバイザーとして活躍してくれているのがシモーナ・マリアーニさんだ。専門は言語学で、イタリア各地の方言の研究をしている。なんとも頼もしい存在だ。

彼女はアブルッツォ州の出身である。イタリア半島のちょうど真ん中で、東寄りの地方だ。州の東部はアドリア海に面し、海産物が豊か。内陸はほとんど山に囲まれた大自然が魅力で、農産物、酪農食品、そしてワインが素晴らしい。仕事の合間、彼女はよく「アブルッツォ料理が恋しい」とぼやいている。そんな彼女が足繁く通うアブルッツォ料理の専門店が東京にある。先日、彼女の案内でそのお店にお邪魔した。

その料理店を切り盛りするのは、ソムリエのジュゼッペさんとシェフのダヴィデさん。二人ともアブルッツォ出身だ。馴染み客のシモーナさんもアブルッツォの人となれば、そこはまるで小さなアブルッツォだ。シモーナさんの仕切りで、メニューにもないアブルッツォの料理をたくさん出していただいた。いずれも素朴で、どこか懐かしい味の家庭料理ばかり。なんだか幸せな気分にしてくれる。アブルッツォ料理は、日本では一般に馴染みのないものだが、その中で日本でも手に入り、家飲みにも使えそうなものをいくつかご紹介したい。

・ヴェントリチーナ(Ventricina)
アブルッツォ特産のサラミ。唐辛子が入っているのが特徴で、ビールのつまみにも最適。通販でスライスしたものが手に入る。

・キタッラ(chitarra)
アブルッツォ発祥のパスタで、「ギター」という意味。切り口が四角形のロングパスタ。スパゲッティのような丸形のロングパスタよりも麺にソースが絡まりやすく、濃厚なソースとの相性がいい。仔羊肉のラグーソースでいただくのが定番らしいが、私は今回ポルチーニの特製ソースでいただいた。このパスタでカルボナーラもおすすめだという。これも通販で乾麺が手に入る。家飲みでパスタを出すとき、ちょっとした変化球として重宝しそうだ。

・パッロッテ・カーチェ・エ・オーヴェ(Pallotte Cace e Ove)
チーズと卵を練ってパン粉で揚げたおつまみ。これは手作りしなければならないが、家飲みの一品に最適と見た。外側はカリカリで香ばしく、中身はしっとりして濃厚だ。これ一皿でワインがすすむこと間違いなし。

※数年前のNHKテレビのイタリア語講座で、この料理を紹介していました。まだレシピがネット上に残っていたので、参考にご紹介します。

https://www.nhk.or.jp/gogaku/euro24/recipe/italian02.html

家飲みの引き出しを増やしてくれた組み合わせ

さて、これらの素朴な料理に合うワインだが、アブルッツォといえば、なんと言ってもモンテプルチャーノ・ダブルッツォ(Montepulciano D’Abruzzo)だ。ブドウ品種「モンテプルチャーノ」から、濃厚で酸味と渋味のバランスの良い赤ワインが生み出される。このワインは、イタリアで今最も生産量が多いワインの1つと言われている。日本にも多く輸入されており、スーパーの棚にも見られるようになった。1000円台が多く、1000円を切るコストパフォーマンスの良さも受けている。このワインなら、上のどの料理とも相性がいい。

だが、今回、ジュゼッペさんにすすめられて驚きだったのが、

Cerasuolo D’Abruzzo[チェラズオーロ・ダブルッツォ]

このワインはブドウ品種「モンテプルチャーノ」100%で作られるロゼだ。赤ワインのモンテプルチャーノ・ダブルッツォはボディがしっかりある。ところが同じ品種でも、ロゼになると軽さが出て、しかも辛口に仕上がる。これは先述のヴェントリチーナのようなスパイシーなサラミにも合うし、濃厚なソースのパスタやチーズ系のおつまみにもぴったりだ。辛口のロゼは、手の込んだ料理ほど相性の良さが増すようだ。アブルッツォ料理の体験は、家飲みの料理とワインの組み合わせの引き出しを増やしてくれた。


※記事の情報は2017年10月24日時点のものです。
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