〈家飲み文化部②〉観れば家飲みしたくなる、家飲みシーンがステキな映画8選

ライター:まるまる

4. 「マーサの幸せレシピ」 床がディナーのテーブル代わり


2001年 独 監督:サンドラ・ネッテルベック 出演:マルティナ・ゲデック、セルジオ・カステリット、マクシメ・フェルステ

家飲みの主役は、酒そのものよりも、やっぱり家庭料理です。ではどんな料理がいいのか。この映画がそのヒントをくれるかもしれません。

ドイツ・ハンブルクの高級フランス料理店のシェフ、マーサ(マルティナ・ゲデック)。疎遠だった妹が事故で急死し、その娘、8歳のリナ(マクシメ・フェルステ)を急遽引き取ることになります。ところが、母を亡くしたショックなのかこの姪っ子が何も食べようとしないのです。一流シェフのマーサが作る家庭料理にも、ぜんぜん手をつけません。

その窮状を、イタリア人の新人副シェフ、マルコ(セルジオ・カステリット)が救います。リナが厨房に来たとき、マルコは「まかない」のパスタをおいしそうに食べてみせることで、彼女の食欲に火をつけます。

そして、マルコとリナが準備してマーサを招待した食事の場面。二人で料理したのはスパゲッティ、そして焼いただけのいろいろな野菜、生ハムというシンプルなもの。料理はテーブルではなく床に置かれ、野菜は手づかみ。車座になって語らいながらむしゃむしゃ食べます。マルコはグラスに赤ワインをどばどば注いで飲みます。これが食べるのも飲むのも、ものすごく美味しそうで楽しそう。イタリア人歌手のパオロ・コンテが歌う「Via Con Me」が挿入歌として流れ、とても良い雰囲気を醸し出しています。

繊細で完璧な料理よりも大切なものはなにか、マーサは二人に教わるのです。この映画では、この他にも家飲みシーンがいくつかあって、どれもいい感じ。テーマ曲に使われているキース・ジャレットの「カントリー」は、家飲みのBGMにもピッタリな名曲です。

5. 「再会の食卓」 人生に家族に、白酒で乾杯


2010年 中国 監督:ワン・チュエンアン 出演:リサ・ルー、リン・フォン、シュー・ツァイゲン、モニカ・モー

1949年の国民党軍の台湾撤退で、ユィアー(リサ・ルー)とリゥ・イェンション(リン・フォン)の新婚夫婦は生き別れになっていました。上海で別の男性ルー・シャンミン(シュー・ツァイゲン)との事実婚生活を送り、子供たちを育て上げたユィアーのところへ、40数年ぶりに、台湾での妻と死別したリゥが現れます。ユィアーを台湾に連れ帰るのが目的です。普通なら大いにもめそうな展開ですが、すでに三人とも高齢。ルーは、リゥを忘れられない妻の心を理解し、二人を快く台湾に行かせてやろうと決心します。

物語の舞台となっているのは1990年代、バブルが興隆しはじめた上海。古い町並みが次々と超高層ビル群に飲み込まれていきます。その街の市場を、リゥを精一杯もてなそうとするルーが、少しでも良い上海ガニを求めて駆け回ります。またリゥも食材を買い込み高級料理の「佛跳牆(ぶっちょうしょう)」をつくるなど、家で三人、毎日のように食卓を囲みます。特にルーは訪れる別れを乗り越えようとでもするように、夢中で食べます。

そして、よく飲むのです。三人が家でいつも飲んでいるのは、中国の蒸留酒「白酒」です。このアルコール度数50度以上にもなる強い酒を、お猪口で乾杯を繰り返し、何杯も飲みます。一度だけあったレストランの場面でも、ルーは黄酒(紹興酒などの醸造酒)では物足りないから白酒を持ってこいと注文していました。70歳近い高齢者が50度の酒を毎日ストレートであおり、40年以上前の恋を巡ってあけすけに語りあうのがリアルな中国人像なのであれば、その生命力に今の日本人で太刀打ちできるのか、自信がなくなってきます。

台湾撤退前の新婚時代の回想シーンは一度も出てこないのですが、ユィアーの孫娘ナナを美人女優モニカ・モーが演じているので、観客は美しき若妻ユィアーの姿を想像しつつ、1949年に思いを馳せることができます。

6. 「ノッティングヒルの恋人」 不味い料理と不幸自慢


1999年 英 監督:ロジャー・ミッシェル 出演:ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント

料理はおいしいにこしたことはありません。でも、料理が不味くたって楽しめるのが家飲みです。

美しいハリウッド女優アナ(ジュリア・ロバーツ)とロンドンのさえない書店主ウィリアム(ヒュー・グラント)の恋を描いた「ノッティングヒルの恋人」は、現代版「ローマの休日」といった物語です。アナが本を買うため書店を訪れたことで知り合った二人。ウィリアムが、まさか来ないよなと思いつつ、友人たちが妹のために催してくれる誕生パーティーにアナを誘うと、アナは思いがけず「行く」と答えます。

誕生日会に自宅と料理を提供してくれるのはウィリアムの親友のマックス(ティム・マッキナリー)です。このマックスの手料理がとにかく不味い。だから誰も食べません。アナも前もってウィリアムから「食べるな」と忠告されていたためべジタリアンだからと言い訳をして丁重に断ります。

料理は不出来でも参加者は心から楽しそうで、赤白のワインが何本も空いていきます。デザートのチョコレート・ブラウニーがひと切れ余ったのを争奪するためにはじめたのは「不幸自慢」ゲームです。一人ずつ自分がいかに不幸かを打ち明け合い、爆笑したりしんみりしたり。そんなふうに互いの親交をさらに深め合うのです。

食べものがうまいとか不味いとか、そんなの本質的なことじゃない、という制作者の思いが伝わってきます。派手な食文化が育たない負け惜しみでもなんでもなく、イギリス人は本当に、あんまり美食を追い求めたりするのはカッコ悪いと考えているのではないでしょうか。不味い料理も自分の不幸も笑いの種にして、友人を大切にして地に足のついた人生を謳歌する。そうしたイギリス人気質に、窮屈だけれど居心地のいい家の雰囲気に、アナが静かに感化されていく。その過程がこのラブコメ映画に何とも言えない深みを与えています。
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