創業680年の伝統「八丁味噌」のふるさとを訪ねてみた。

ライター:まるまる

6トンの味噌に3トンの石を載せて2年間発酵・熟成。

さっそく、味噌の蔵を見せていただくことにしました。年月の重みを感じさせる蔵のなかに足を踏み入れると、大きな木の桶がずらっと並べられている様子に圧倒されます。蔵を案内してくださったのは、まるや八丁味噌・営業部の加藤敦さんです。
まるや八丁味噌・営業部の加藤敦さん
—— 赤みそ、豆味噌、八丁味噌とはどのような味噌なのでしょうか。

加藤 
豆味噌は、大豆と塩から作られ、主に東海地方で製造されています。麹も豆で作る豆麹を使います。米を加える日本の他の地域の味噌に比べ、甘味がなく、旨味が豊富なのが特徴です。八丁味噌も豆味噌の一種ですが、木桶に入れた味噌の上にピラミッド状に石を積み上げて2年間以上熟成させます。長期間熟成させることで、塩角がとれ、旨味の豊富なお味噌となります旧東海道を挟んだお向かいのカクキューさんと弊社の二社で作る八丁味噌協同組合では、その製法を守ることを約束しています。
 
八丁味噌製造工程
—— 味噌作りはだいたいどのような工程になるのですか。

加藤
 大豆を水洗いして、水につけて水分を含ませたあと、釜で蒸します。アメ色になった大豆を冷まして、丸めてこぶし大の味噌玉を作ります。このとき蔵に住み着く乳酸菌が作用して、あとあと味噌になったときにほどよい酸味となります。この味噌玉に麹菌をまぶして四日間経つと、びっしりと麹菌が生えます。それが大豆麹です。その大豆麹を、木桶に塩水と一緒に仕込みます。


—— そして桶のなかで2年。長いですね。

加藤
 一般的な米みそや豆みそと比べるとずいぶん長いですよ。私は営業部なので商品がないとお客さんに怒られますが、現場に早く味噌を出してくれと仮に言ったとしても、絶対に出してくれません(笑)。
 
上に積んである石が独特ですね
—— なんといっても、上に積んである石が独特ですね。この石はどのくらいの重さなんですか。

加藤
 それぞれの桶に入っている味噌が6トン。石は3トンあります。これは矢作川の石なんです。


—— 3トンといえば大型のSUV車よりも重い。どうやって積むんですか。

加藤
 大桶に大豆麹を入れて職人が均一に踏み固めた上に、石積み職人という専門の職人が手で積むんです。3トンの重しをしても、味噌は夏は盛り上がって冬は下がります。きちんとバランスよく石を積まないと崩れてしまうんです。職人は石の顔を出す、といいます。職人にしかわかりませんが、石には顔があるらしいです。きちんと積めば、円錐状になり重さがバランス良くかかる。地震があっても崩れてきません。


—— ただ石を積んでいるだけで崩れない。よく考えるととても不思議です。ひとつの桶に積み終わるのに何日かかるんですか。

加藤
 3〜4時間です。職人はみな何年も厳しい親方のもとで修行します。弊社だけで、年間だいたい100個ぐらいの桶に仕込みますから、その回数だけ石積みをやります。


—— 下からは見えませんが、桶の蓋の上に石が乗っているのでしょうか。

加藤
 いいえ、味噌の上に麻の布を敷いて、その上に石を載せています。


—— それで、なぜ石が沈んでいかないんですか。

加藤
 水分が少ないので石は沈みません。重みで水が少し出るくらいです。ちなみに水分が出てきてもそのままにしておきます。


—— たとえば万力みたいなもので上から圧縮するとか、それでなくても大きな重りをひとつドンと置けばいいのでは…

加藤
 できるかも知れませんが…これが昔からのやり方なのです。味噌が上がったり下がったりするのを、石と石の隙間がうまく吸収してくれています。
 
桶がまた、年季が入っていますね
—— 桶がまた、年季が入っていますね。

加藤
 これは杉桶で、古いもので150年前のもの。だいたい100年くらい使っています。注文を受けてから作り始めるんですが、木を乾燥させるのに2〜3年かかるので、だいぶ前に注文しておく必要があります。はめられている「たが」は、桶が新品のときは竹です。すごく長い竹を切らずに使うので、竹やぶで輪の状態にしてから運ぶんですよ。桶の木は100年持ちますが、竹は30年ぐらいが寿命なので、その後は金属の「たが」で補強します。


—— 原料も桶も石も、それからこの蔵も。ぜんぶ昔のままなんですね。

加藤
 この蔵は風も入りっぱなし。冬は寒いし夏は暑い。そういうことのすべてがこの味噌を作っています。なにかを変えてしまうと味噌も変わってしまうかもしれないので、できないんです。極力昔のままの形と方法を守り続けて、八丁味噌の味を守っています。
 
極力昔のままの形と方法を守り続けて、八丁味噌の味を守っています
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