いか文庫オススメ! 家飲みが楽しくなる“つまみ本”とは?

梅雨の時期は家で本を読みながらお酒を飲む…というのもなかなかオツなもの。飲みながら読むにはどんな本がいいのか? 本を読む楽しみを広げる活動をしているいか文庫さんに、オススメをセレクトしていただきました。

ライター:nonnon
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お店も売る本もない“エア本屋”いか文庫とは?

――エア本屋、「いか文庫」とは?

粕川:いか文庫は私の思いつきで始まったお店も売る本もないけれど、いつもどこかで開店している“エア本屋”です。もともと書店員として働いていて、本と本屋が大好きなので、さらに多くの人に本屋の楽しみ、本を読む面白さを伝えたいと思ったのがきっかけでした。朗読会や書店とのコラボ、音楽を交えたフェスなど、本に興味のない人でも足を運んでもらえるような企画や活動をしています。

――今回は“お酒を飲むときに読みたい本”というテーマですが、選書のポイントは?

粕川:私はお酒と一緒に美味しいものを食べたい!と思う派なので、読んでいるとお酒を飲みたくなる料理が載っている本、そして、気楽に読めて、お酒がすすむような本を選んでみました。 

いか文庫オススメ① 「古本屋台」Q.B.B(作・久住昌之、画・久住卓也)集英社

「古本屋台」Q.B.B(作・久住昌之、画・久住卓也)集英社
こちらは「孤独のグルメ」の原作者として有名な久住昌之さんが、実弟で、イラストレーターでもある久住卓也さんとともに制作したものです。内容はその名前の通り「古本を売る屋台」とそこに通う常連さんたちの交流が描かれています。

所狭しと並べられた古本を読みながら飲む屋台です。本がメインなのでお酒の注文は1杯まで。つまみもありません。店主は不愛想ですが、本にはめっぽうくわしく、作品の中にでてくる本も古本好きにはツボなものが多く、お酒だけじゃなく、本が好きな方にも楽しんでもらえると思います。見開き一話完結なので区切りがよく、酔いが回ってきても大丈夫(笑)特別な事件も派手な展開もありませんが、しみじみと心に響く本です。

いか文庫オススメ② 「小林カツ代のきょうも食べたいおかず」小林カツ代 河出書房新社

「小林カツ代のきょうも食べたいおかず」小林カツ代 河出書房新社
お料理を紹介している本ですが写真は1つも掲載されていません。まさに“読むレシピ本”。でも、絶対おいしいに違いない! と思える料理ばかりです。その理由はレシピの紹介ではなく、どんな作り方をするかを話し言葉で紹介しているからだと思います。

たとえば「鍋にごま油をピャーとやって、ピャーは大さじ1ですよ」とか「シャッシャッシャと炒めて」「魚を焼いてチャポンと漬ける」とか、擬音の使い方から作っている様子が頭に浮かんできます。カツ代さんはお酒を飲まない人だったそうですが、「つまみをつくるのが上手」と評判で、本の中でも「タラときのこチーズ焼き」「大根の炒め煮」など、つまみにぴったりな料理がたくさん掲載されています。

飲みながらつまみを作ってもいいし、これ食べたいなーと思いながら飲むのも楽しいと思います。

いか文庫オススメ③ 「ままやと姉・向田邦子 かけがえのない贈り物」向田和子 文藝春秋

「ままやと姉・向田邦子 かけがえのない贈り物」向田和子 文藝春秋
作家・向田邦子さんの妹さんが「ままや」という小料理屋を向田邦子さんのすすめで始めた経緯やお店を開店してからのエピソードなど「ままや」にまつわる出来事を中心に綴られた1冊です。

また、向田邦子さんの素顔や家族の話、妹から見た姉、向田邦子の知られざる一面も多く語られています。旅行に行ったり、銀行員だった妹さんに飲食店をやることを勧めたり、お姉さんが与えてくれたあらゆるものが大切な贈り物だったということが伝わってきました。

本に登場する「ままや」の料理は肉じゃが、きんぴら、アスパラのバター焼きなどなじみのある総菜でどれもおいしそうです。家庭料理だけど丁寧につくられた一級品の総菜なんだろうなと。現在はもう営業していませんが、行ってみたかったです。ひとりでゆっくりとお酒を飲みたい時にぜひ、読んでみてください。

いか文庫オススメ④ 「きらきらひかる」江國香織 新潮社

「きらきらひかる」江國香織 新潮社
酒好きの妻と同性愛者の夫という奇妙な夫婦関係を描いたお話。映画化もされているのでご存じの人も多いかもしれませんね。初めて読んだのは高校生のときで、夫の恋人との切ない三角関係やお酒を飲むシーンがとても素敵で大人へのあこがれを感じた作品です。

作品に登場するお酒は「アイリッシュウイスキー」や「ミントジュレップ」「ピーチフィズ」など幅広く、どんな味なのかと想像しながら読んだり、次はこれを飲んでみようという参考になりそうです。ほかにもシャンパンを泡立てるマドラーなどの小道具やお酒好きに関するウンチクも随所に出てきて、酒好きの心をくすぐるエピソードがいくつもあります。

ウイスキーをゆっくりゆっくり飲みながら、どこか不思議でロマンチックな世界観を楽しんでほしいですね。

いか文庫オススメ⑤ 「しょうゆさしの食いしん本」スケラッコ 芳文社

「しょうゆさしの食いしん本」スケラッコ 出版社 芳文社
京都在住のマンガ家、スケラッコさんが日々の食事についてつづったマンガエッセー。食べること、お酒を飲むことが大好きなスケラッコさん。同居人が買ってきてくれたシューマイのおいしさに感動して「自分で作ってみよう」と手作りしたり、ピザを生地から作ったり。これも自分で作るの?というようなものも多く、手間をいとわずに挑戦する姿に「食べること」への愛を感じます。

お酒好きのスケラッコさんなので料理も「つまみになる」がポイント。アヒージョにはワイン、ベトナム風あげ春巻きには氷を入れたビールと、家飲みを楽しんでいる様子が伝わってきて、ついマネしたくなります。作品の中に登場する食材や料理が気になって調べてみると、さらに新しい世界が広がるのも楽しいです。

 
本を読みながら飲むという大人ならではの贅沢。ぜひお試しください!
 

この方にお聞きしました

いか文庫

お店も商品も持たない「エア本屋」。リアル書店でのフェア開催や、テレビ、雑誌、WEBでの本紹介などの活動を行い、本、本屋の楽しみを広げる活動をしている。

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※記事の情報は2019年6月25日時点のものです。
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