音楽をこよなく愛するフレンチシェフ 井熊良仁さんおすすめの家飲み音楽とは《私の家飲みプレイリスト⑦》

ジャズの名曲からクラシックまで、フランス料理のコースのような見事なプレイリストをお届けします。

ライター:池谷 恵司池谷 恵司
メインビジュアル:音楽をこよなく愛するフレンチシェフ 井熊良仁さんおすすめの家飲み音楽とは《私の家飲みプレイリスト⑦》
あなたは家飲みのお供にどんなBGMをかけていますか? 音楽好き&お酒好きの方々に、素敵な家飲みミュージックを選曲していただく連載企画「私の家飲みプレイリスト」。今回ご登場いただくのは、フランス料理の名店、シェ松尾で長らくシェフを務め、現在は新宿のdining lounge concept Bでの料理長、その他のレストランのプロデュースを務める井熊良仁さん。フレンチのシェフは、どんな音楽を聴きながら、どんなお酒を飲むのでしょうか。

(記事の最後にSpotifyで実際に音楽が聴けるプレイリストがあります。音楽を聴きながらの家飲みをぜひお楽しみください)

今回、選曲してくれたのはこの方!

フレンチシェフ 井熊良仁さん

老舗フレンチレストランシェ松尾 青山サロン、シェ松尾 天王洲クラブなど数々のレストランでシェフを務める。現在は新宿駅にほど近いdining lounge concept Bでの料理長や、およびその他店舗のプロデュースに携わる。

フレンチシェフ 井熊良仁さん

井熊さんの選曲はこちら

  • リー・モーガン・・・Candy
  • リー・モーガン・・・The Delightful Deggie
  • リー・モーガン・・・The Delightful Deggie (Big Band Version)
  • マイルス・デイビス・・・Dear Old Stockholm
  • パット・メセニー・・・Last Train Home
  • ゴンサロ・ルバルカバ・・・Imagine
  • ジョン・コルトレーン・・・Giant Steps
  • ジョン・コルトレーン & ジョニー・ハートマン・・・They Say It's Wonderful
  • アレサ・フランクリン・・・Somewhere
  • クインシー・ジョーンズ・・・Jazz Corner Of The World
  • クインシー・ジョーンズ・・・Birdland
  • モーリス・ラベル・・・水の戯れ
  • 冨田勲・・・アラベスク第一番(ドビュッシー)
  • 冨田勲・・・月の光(ドビュッシー)
  • ショパン・・・ノクターン第20番遺作

リー・モーガン発、ドビュッシー行きのオン・ザ・ロック

「音楽は好きですね。修業時代は風呂もないアパートで、仕事が終わって夜中に帰って来るとラジカセで音楽を聴くぐらいしか楽しみがなかった。でも音楽があったからこそ挫けなかったんじゃないかな」と語る井熊さん。その頃はミュージシャンの友人からジャズギターのラルフ・タウナーや80年代のパンクジャズ「ゴールデン・パロミノス」など、マニアックな音楽を教えてもらって聴いていたのだとか。そんな音楽好きなシェフ、井熊さんですが、家でお酒は飲むのでしょうか。「もちろん飲みますよ。たいていは妻と食事をしながら、料理に合わせてワインか日本酒ですね」。一人で飲むことは? 「あまりなかったけど、最近youtubeで昔のサントリーの大原麗子が出演していたCMを見たら、やっぱりいいなぁと思って。『少し愛して、長く愛して。』とかね。それで最近はバカラのオン・ザ・ロックのグラスにオールドを入れて飲んでいます」。
オン・ザ・ロック
そんな井熊さんですが、オールドのロックを片手に一人で飲むなら、どんな音楽を聴くのでしょうか。「まずはワンホーンのカルテットのジャズからだね。ワンホーンならサックスよりトランペットがいい。リー・モーガンの『キャンディ』あたりが最高だと思う。音は明るいけど、ワンホーンだからザワザワしてない。そこがいいね」。硬派なハードバップのジャズならウィスキーはシングルモルトのほうが似合うような気もします。「いや、その時代のジャズには、シングルモルトよりオールドのようなマイルドなブレンデッドのほうがいい」。2曲目もその流れでリー・モーガンの代表曲『サイドワインダー』。そして3、4曲目もさらにリー・モーガンが続きます。これは同じ曲ですか? 「The Delightful Deggieっていう曲なんだけど、1つはコンボで1つはビッグバンドでの演奏。アレンジ違いで両方聴き比べるのが楽しいんだよ」。そしてリー・モーガンをたて続けに聴いたところで 「帝王マイルス・デイビスだね。『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』というアルバムに入っているんだけど、LPだったらB面にある『Dear Old Stockholm』」。なるほど。ちなみにラウンド・アバウト・ミッドナイトとは深夜12時を過ぎた頃、という意味。プレイリストも、ちょうどこのあたりで深夜0時を回るころ。
ウィスキーに合わせるなら、青カビ系のフレッシュチーズ
ところで今晩はオン・ザ・ロックですが、そんなとき井熊シェフならツマミはどうしますか。「そうだね。この時間ならもうお腹は空いてないから、何か食べるならチーズかな。ウィスキーに合わせるなら、青カビ系のフレッシュチーズがいい。イギリスのスティルトンか、イタリアのゴルゴンゾーラ。あとはドイツのカンボゾーラもいいと思う。これはフランスのカマンベールとイタリアのゴルゴンゾーラを合わせたようなチーズ。それに羊乳のセミハードチーズもあうんじゃないかな」。なるほど美味しそうです。

さて曲ですが、ここからどうしましょうか。「ここまでずっとトランペットだったから、このあたりでギターのパット・メセニーにしましょう。パット・メセニーならどの曲を聴いてもいいけど、ここは『Last Train Home』にします。タイトルどおり、電車に乗って故郷に帰っている時のような、優しくて懐かしいような曲」。そして次は、キューバが生んだ天才ジャズピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバの『イマジン』。これはジョン・レノンの名曲のカバー。「すごくシンプルな曲で、歌詞がなければ成立しないような曲を、ピアノだけで聴かせてくれる名演だと思う」。ジャズピアノといえば、あのキース・ジャレットが来日した時、井熊シェフがキースのためにプリンを作ったことがあるのだとか。「ずいぶん前のことだけど、渋谷のオーチャードホールにキース・ジャレットのトリオが来て、キースが『プリン』が食べたいと言ったらしい。それでシェ松尾にオーダーが来たから作ったら、お礼でライブに招待してくれました。その時のライブは、今まで聴いたジャズのライブで一番良かったな。キースがていねいにイントロを弾いて、すっと曲に入る瞬間にドラムのジャック・デジョネットがシンバルのカップをカーンと叩いたんだけど、それはそれはカッコ良かった」。
 
厨房の井熊さん

さていよいよ夜も更けてきました。「このあたりでジョン・コルトレーンかな。若い頃はコルトレーンって音が多すぎて好きじゃなかったんだけど、今聴くと清々しいね」。そして次もコルトレーン。ボーカルのジョニー・ハートマンとの共演アルバムから1曲目の『They Say It's Wonderful』。「これはあらゆるジャズボーカルのアルバムで一番好き。これを聴くと、こんどはボーカルが聴きたくなるから、次はアレサ・フランクリンの『Somewhere』。これはクインシー・ジョーンズのベスト盤に入っているんだけど、これが素晴らしい。で、クインシー・ジョーンズなら、こんどは『Jazz Corner Of The World』と『Birdland』が聴きたくなる。これは『Back on the block』というアルバムに続けて入っている曲。『Jazz Corner Of The World』にはディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーの話し声や演奏がコラージュされていて、ジョージ・ベンソンのギター、マイルス・デイビスのトランペット、ジャコ・パストリアスのベースの音などが入っていて、そこからウェザー・リポートの『Birdland』のビッグバンドバージョンになだれ込んでいくわけ。クインシー・ジョーンズって、クラシックでいえばカラヤンみたいなイメージがあるよね。華やかでポップで。で、これで終わりたいところだけど、ちょっとクールダウンしないと寝られない(笑)」。
井熊さんが料理長を務める「dining lounge concept B」
井熊さんが料理長を務める「dining lounge concept B」
「クールダウンするならクラシック。しかもラベルドビュッシーのピアノがいい。ラベルの『水の戯れ』は必ず聴きたいね。あとはドビュッシーの『アラベスク』と『月の光』あたりがいい。もちろんクラシック演奏家のピアノでいいんだけど、今日はあえて冨田勲のシンセで。冨田勲のシンセサイザーを使ったアルバム『月の光』は、クラシックなのにピアノよりシンセの方がいいという珍しい例だと思う。きっとドビュッシーも冨田勲のシンセを聴いたら褒めたんじゃないかな。というわけで、とりあえずここで寝るつもりだけど、寝付けなかったらあと一曲だけ。ショパンの「ノクターン第20番遺作」。もう朝になっちゃうけどね。ま、明日は休み、という日のプレイリストだね」。

井熊さん、ジャズの名曲からクラシックまで、フランス料理のコースのような見事なプレイリスト、ありがとうございました。ぜひみなさんも以下のspotifyのリストを聴きながら、家飲みをお楽しみください。

spotifyで聴く、井熊良仁さんの家飲みプレイリスト
 
取材協力:
■dining lounge concept B
https://www.facebook.com/conceptbshinjuku/
住所:東京都新宿区新宿3丁目26-14 新宿ミニムビルⅠ・Ⅱ:8F
定休日:年中無休
営業時間:月〜日、祝日、祝前日: 11:00〜23:00 (料理L.O. 22:00 ドリンクL.O. 22:30)
電話番号:050-5289-6941
dining lounge concept B
※記事の情報は2018年11月24日時点のものです。
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