日本酒古酒・長期熟成酒の味わい

このところ密かにアツい日本酒の古酒。長期熟成された日本酒が拓く古くて新しい日本酒ワールドとは?

メインビジュアル:日本酒古酒・長期熟成酒の味わい
日本酒に賞味期限はないとはいうものの、そう何年も置いておいたらどうにかなっちゃうんじゃないの? そう思われる方もいるかもしれません。中には、日本酒を長期間放っておくと「酢」になってしまう! と思い込んでいる方もいるようで…… でも、日本酒を長期熟成させた「古酒」、あるんです。日本で「古酒」というと泡盛のくーす(古酒)や、香ばしく熟成した麦焼酎の長期熟成ものが思い浮かびます。これらはいずれにしても蒸留酒ですが、例えばワインのビンテージものは、何年も熟成させた醸造酒の古酒です。同じ醸造酒、同じようなアルコール度数の日本酒「古酒」があっても不思議はありませんね。この日本酒の古酒、あるいは長期熟成酒の周辺が、近頃ちょっとアツい模様です。

日本酒の古酒の定義とは?

日本酒の古酒には、酒税法などで定めらた定義は特にありません。新酒はもちろん古酒ではありませんが、かなりの長期間、蔵元で保管・管理されて熟成されたものが古酒と呼ばれています。日本酒の古酒の普及と技術向上のために、酒造メーカーが集まって設立された任意団体「長期熟成酒研究会」ではこれを定義して普及活動を行っています。その定義とは「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」である事としています。中には3年どころか30年もの、なんていう古酒も存在します(ページ下のショップリンクでお買い求めいただけます)。

その味わいは?

古酒イベントの様子
「熟成古酒ルネッサンス2018」古酒に群がる人々……。
古酒の味わいは「まろやか」「濃厚」。昨年、長期熟成酒研究会主催の「熟成古酒ルネッサンス2018」にお邪魔していろいろと古酒を試飲させていただいたのですが、その多くはまったり、まろやか。甘みが増し、中にはみりんのような味わいや、キャラメルのような香りのものもありました。食中酒というよりは、デザートや、食前酒にぴったりといった印象。
古酒イベントの様子
ずらりと並んだビンテージ。
古酒たちは、熟成の程度によってその色は美しい琥珀色に……。滑らかな褐色の色合いも楽しみのひとつです。現在、日本酒の熟成に関してはまだまだ知見や情報が乏しく、各メーカーさんも鋭意研究中と言うことです。次ページでは、意外な古酒の歴史や魅力をお教えします。
 

まろやかさの秘密

味わいがまろやかになる理由は、長期の熟成を経て、アルコール分子と水の分子がしっかり結びつくことによるそうです。アルコールの周りを水が取り囲み包み込むことによってアルコールの刺激がまろやかになり、丸くなるとか。これは焼酎のいわゆる「前割」が味をまろやかにするのと同じ原理のようです。それに加えて各種の酵素が働き独特の味わいをつくっていくのです。しかも酔い方もまろやか、あとに残らず、体にもやさしいのです。
まろやかさの原理
赤い丸がアルコール分子。青い丸が水分子。古酒になるとアルコールを水が包み込んでいる。(長期熟成酒研究会HP「新酒と熟成古酒のアルコールの状態」図解より改変作成)

江戸時代の古酒

実は、日本酒を熟成させる文化は、江戸時代までは確かにあったようです。江戸の酒番付の一位に君臨していたのは「大和屋又商店」という造り酒屋のの9年熟成させた九年酒でした。また、明治までは皇室で独自に造られた九年熟成の酒が行事に用いられていたそうです。このような熟成古酒の文化がなくなったのは、明治政府によって定められた酒の税法「造石税」がきっかけだそうです。これは売った酒に対して課税するのではなく、造った酒に対して課税するもので、売れようが売れまいが酒を造ったら即課税されていたのです。なので、長期熟成中に酒が傷んで売り物にならなくなるリスクを避けるため、蔵元では造った酒をすぐに売り切ってしまうようになったのです。そして、3年、5年と酒を熟成させる文化は途絶えてしまったのでした……。 しかし、現在では熟成古酒の魅力が見直され、じわじわと息を吹き返しつつあるのです。

マイ熟成酒?

先の長期熟成酒研究会のホームページを眺めていると、「自家熟成古酒(My古酒)のススメ」 なる耳寄りなエントリが。好きなお酒を新聞紙でくるんでクローゼットにしまっておくだけでマイ熟成古酒が楽しめるそうですよ! これはトライしてみたいですね。このところ、日本酒トレンドはかつての「淡麗辛口」万歳! から、生酛・山廃といった「濃醇旨口」、よりリッチで複雑な味わい路線へとシフトし、多様化しています。古酒・長期熟成酒もその路線の一環として、古くて新しい日本酒の楽しみを拓いてくれるのです。

※記事の情報は2019年1月10日時点のものです。
 
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