2018.01.09
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イタリア人の食卓訪問! マンマの家飲みおもてなし(1)

マンマの料理の写真

映画に出てくるような、豪快で愛情たっぷり、料理上手なイタリアのお母さん。マンマは子供たちがすっかり大人になっても、家に友だちを連れ帰ったら、ササっと素敵な料理を作ってもてなしてくれるのです。

おもてなしの達人、マンマ・エレナの食卓へ

ある日の夜、何の連絡もなく、ガチャ(玄関のドアが開く音)「ただいまー。お母さん、友達つれてきちゃった。何か作って」なんて、娘や息子(成人を想定)が帰ってきたら、どうします?

 

「こんな時間に、何よ! 急に言われたって、何もないわ」なんて、怒っちゃいます? それとも、

 

「電話一本くれればいいのに!」と、愚痴ったり、

 

「その辺で買ってきて!」なんて、コンビニに行かせたり。わかります!

 

しかし、イタリアのマンマ、ひと味違います。「よし来た!」と腕まくりして、あり合わせの物で、チョチョイと1品、また1品とこしらえて、

 

「さあ、いい日に来たわよ。このごちそうで、ゆっくりしていって」、なんて飲み会を始めちゃいます。この懐の深さ。えー、本当? なんて思うかも。ですが、この「友達」って、実は僕のこと。そしてその「娘」は、僕の親友クラウディア・ベルジェズィオさんのことなのです。

 

17年前、日本人男性との結婚を期に来日。その後、在日イタリア大使館に赴任したマンマ、エレナさんとも同居しながら、日本で二児の母となったクラウディアさん。その頃、イタリア語学校の同僚だった私を、ある日の授業後、麻布の自宅マンションに招いてくれたのです。それも急な出来事。なのに、そのときのマンマ・エレナの何事にも動じないおもてなし。感動ものでした。

 

エレナさんとクラウディアさんの写真

エレナさん(中央)とクラウディアさん(左)と筆者。

 

エレナさんは2006年まで東京の大使館で勤務し、その後イタリアへ。現在はボローニャで暮らしていますが、この年末に来日。クラウディアさん一家とクリスマス休暇を過ごすとの知らせを聞き、居ても立ってもいられず、会いに出かけたというわけ。せっかくだから「家飲みのおすすめを教えて」とお願いすると、「日本でも作りやすい、イタリアのおつまみ、教えてあげるわ」と、またもや快いお返事。そんなわけで、僕は久しぶりにマンマ・エレナとクラウディアさんの食卓にお邪魔したのです。今回は、そんなイタリアのマンマが教える、おすすめ家飲みレシピとワインをご紹介します。

 

マンマの手料理の基本、リピエーネの作り方

最初の一品は「モッツァレッラ入りナスのリピエーネのオーブン焼き」。リピエーネとは、様々な詰め物をした料理のこと。残り物の野菜などを上手に使い切ることができる、便利な前菜ですよ。

 

まずは材料、4人分。

 

リピエーネの材料の写真

・大きめのナス 2個 ・モッツァレッラ200g ・パン粉 ・バジル

・ホールトマト缶(または湯むきトマト)300g ・オリーブオイル

・ニンニク1片 ・塩 ・コショウ

 

それでは調理開始。ナスはできるだけデカイのを選んでください。イタリアのナスは、日本のよりも大きくて丸め。その方が、具材がたくさん乗って、コクのある仕上がりになります。

 

「日本人もナスはたくさん食べるから、きっと気にいるわ」とマンマ。料理の仕込みはクラウディアさんが手際よく進めてくれます。

 

まずはナスを半分に切り、その実の部分に切れ目を入れておく。ここでいきなりマンマのひと工夫。それを茹でます。鍋のお湯に塩を少々して10分ほど。「揚げたりするパターンもあるけど、ここで油を使わないことで、食べ心地が軽くなるのよ。仕事後の疲れた胃にもやさしいわ」とは、泣けるマンマの心遣い。

 

続いて、茹でたナスを取り出し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。そのナスから、実だけスプーンでくり抜きます。コツは、皮から1cm幅ほどの実は残し、土手を作ること。こうすると、あとで具材を詰めたとき、土手がしっかりして崩れません。(このナスの皮の部分は、あとで器にするので別に取っておいてくださいね)

 

ナスの写真

さて次に、取り出したナスの実を、細かく刻みます。それからフライパンにオリーブオイル、みじん切りにしたニンニクと一緒に、このナスの実を5分ほど炒めます。炒めるというより、温める、といった感じで。

 

それから小鉢を用意し、具材を混ぜます。炒めたナスの実、パン粉、賽の目に細かく切ったモッツァレッラ、潰したトマト、刻んだバジル。最後に軽く、塩とコショウをします。すると、こんな感じに。

 

炒め物の写真jン

そして、先ほど取っておいたナスの皮の器に、この具材を詰め込みます。

 

ナスに詰め込んだ写真

これが「リピエーネ」という状態。それを、あらかじめ温めておいたオーブンに投入。200度で20〜30分を目安に焼きます。

 

さらなるマンマ・エレナのひと手間。オーブンに入れる前、リピエーネの上から、残ったパン粉をパラパラと振りかけていました。「こうしておくと、焼いたあと香ばしくなって、もっと食べやすくなるのよ」。はい、こんなさりげない気配り。グッと心、持っていかれます。さらに今回は、特別にシチリア産のドライトマトもトッピング。もう、生でかじりたいです。

 

ドライトマトの写真

 

もてなし上手なマンマの秘訣

リピエーネが焼けるまでの間、マンマに聞いてみました。「どうして、いつもそんなに落ち着いて、急な来客でもおもてなしできるの?」と。

 

すると、「お客さん来るの、好きだから」。

 

なんとシンプル。そんな包容力が素敵だ。さらに、それだけではなかった。

 

「いつ来客があってもいいように、レシピを用意してあるのよ」と。この日、特別に秘蔵の虎の巻を見せてくれた。それがこちら。

 

ノートの写真

なんと、すべて手書きです。人知れず、こんな努力を。こんなものを見たら、リピエーネをいただくとき、もう涙で味がわからなくなりそうです。

 

ウルウルしていると、

 

「それより、早くワインを開けましょ」

 

あっけらかんとマンマ、飲む気、満々。

 

エレナさんの写真

エレナさんが、日本で見つけたお気に入りの白ワインをチョイスしてくれた。

 

「このリピエーネには、白でも、赤でも合わせられるわ。白ならば、果実味のあるしっかりしたものがいいわね。今回はシチリア産の白。南のワインはブドウがしっかり熟しているから、軽めでフルーティー、でもコクがある。それに安いのよ」と、ワインのアドバイスもいただいた。日常のテーブルワインの中から、より適切で、良質なものを選んでくれるところが、さすがだ。

 

そんなことに感激していると、さあ、リピエーネもでき上がったようだ。ちょっと焦げたモッツァレッラとパン粉が、実にいい香り。

 

できあがったリピエーネの写真

Alla salute! [アッラ サルーテ]「健康を祝して」

Buon appetito! [ボナッペティート]「たくさん召し上がれ」

 

久しぶりのマンマの料理に、すっかりイタリアに戻った気分の僕。懐かしい話題で盛り上がり、幸せいっぱいです。

 

そんな素敵なマンマのレシピは、次回も続きます。お楽しみに!

 

 

記事の情報は2018年1月9日現在のものです。

 

京藤好男

京藤好男

東京外国語大学イタリア語学科卒業。1995年ヴェネツィア大学留学。イタリア文学専攻。その滞在期間中、ヴェネト州のヴェローナ、ピエモンテ州のランゲ、トスカーナ州のモンタルチーノなど、ワイン名産地の人々と親交を持ち、イタリア・ワインに親しむ。現在、慶應義塾大学など複数の大学で講師を務めるほか、2006-2008年にNHKラジオ『イタリア語講座』、2007年にNHK『テレビイタリア語会話』で講師を務めるなど、様々なメディアで講師活動をしつつ、ワインを始めとするイタリア文化の普及に努めている。著書に『指せば通じる旅のらくらく会話 イタリア』、『文法から学べるイタリア語』(共にナツメ社)、『中級へのイタリア語文法』(三修社)など多数。

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