「酒は百薬の長」なのか?〈老けない人は何を飲んでいる? ⑭〉

飲酒にまつわるさまざまなメリットと、その前提になる「適量」についてご紹介します。

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厚生労働省が推奨する、愛飲家にとってはつらい「適量」。

「酒は百薬の長」といわれていますね。といっても、飲みすぎれば二日酔いになりますし、さらに大量に飲めば病気の要因にもなります。ほどほどで終わりにしたいけど、飲み出すと止まらないという方も多いでしょう。

いますぐ病気にならなくても、長年にわたるお酒の多飲から病気になることがあります。例えば長年の飲酒からカルシウム不足をひきおこし、骨粗しょう症を発症することも。骨粗しょう症は女性に多いから関係ない話と思っている男性のみなさん、そんなことはありませんよ。歳をとれば男性も骨粗しょう症になり得ます。

「酒は百薬の長」に値する飲酒量は、ご存知のとおり適量です。

厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」では、節度ある適度な飲酒は1日平均純アルコールにして約20グラム。これが一単位と呼ばれる量です。

ビールなら500ml、ワインなら180ml、焼酎(25度)なら110ml、日本酒(15度)なら180mlです。こちらは、何度も聞いたことがあるでしょう。愛飲家の方にとっては、そんなの助走レベルだよ・・・と悲しくなってくる量だとは思います。

でも、よく思い返してみてください。お酒の席で飲酒量が増えていくと、料理やお酒をちゃんと味わうという気持ちがだんだん弱くなってはいませんか。

ある料理人の方から聞いた話ですが、お酒を飲むと味覚が鈍ってくるので、美味しいと感じていただくために、コース料理ではだんだん味を濃くしているとのことです。厚生労働省が推奨するビール中瓶1本程度を飲んだくらいで料理やお酒の美味しさがわからなくなるわけがない、という愛飲家の思いをよそに、料理のプロは冷静に対策を講じているわけです。

適量というのはかなり個人差があります。ほろ酔い程度ぐらいを目安にするとよいのではないでしょうか。

 

飲酒のメリットいろいろ。「適量」に関するうれしい新説も。

さて、愛飲家の皆さんがあまり落胆されないよう、適量の飲酒がカラダにどんなメリットをもたらすのかも、ご紹介しておきます。

よく知られているのは「フレンチパラドックス」。フランス人が、バターも豚肉もアメリカ人の何倍も食べているのに、アメリカ人に比べて心臓病にかかる割合が低いのは、赤ワインのポリフェノールが血管の酸化(サビ)を防ぎ、冠動脈疾患の発症を下げているから、という説です。

また、焼酎には、血栓を溶かすはたらきに関与する「t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)」や「ウロキナーゼ」の分泌、活性を促す効果があるという報告もあります。

アルコールには、善玉といわれるHDLコレステロールを増やす作用があります。善玉コレステロールは、余分なコレステロールを肝臓に運ぶ良い働きをもっています。

飲酒量と死因別の死亡率をみると、男性で死亡率が最も低かったのが、全く飲まない人のグループではなく、「時々飲む」あるいは「1週間に150g(1日約1単位以下)」のグループでした。

最後に、もうちょっと飲みたいという皆さんにちょっとだけうれしい研究報告もご紹介いたしましょう。

国立がんセンター疫学部津金昌一郎氏らの研究によれば、40歳から60歳未満の約2万人を10年間追跡調査したところ、循環器疾患の予防効果があるのは、アルコール量で週450g未満。450g以上になると循環器疾患死亡率が上昇するとのことです。

450gは、1日平均3単位程度。ビールに換算すると中生3杯未満なら循環器疾患の予防効果があるということになります。この数値を、これだけは飲んでいいという免罪符にするかどうかは、皆さんのご判断にお任せしたいところです。

飲酒量は、健康なカラダの維持に大きくかかわってきます。皆さんも、量を調整しながら、いつまでも美味しいお酒を楽しんでください。


※ 記事の情報は2018年6月14日現在のものです。
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