「ウコンは肝機能を高める効果あり」は果たして本当か?

“肝臓に良い”というイメージでお酒好きに頼られる存在となっているウコンやオルニチン、タウリン配合のドリンク。その健康効果は実際のところどうなんでしょうか? 人気管理栄養士の森由香子さんが詳しく解説します。

メインビジュアル:「ウコンは肝機能を高める効果あり」は果たして本当か?
「これから飲むぞ!」というときに、みなさんがコンビニやドラッグストアで手に取るドリンク類といえば、ウコンやオルニチン、タウリンが配合されたものではないでしょうか?

おそらく、飲酒による肝臓の負担を減らす、二日酔いを予防するなど肝臓の機能を高める効果を期待して、飲まれているのだと思います。

今回は、健康的な飲酒生活を送るためにそれらの成分どれぐらい効果が期待できるのかを管理栄養士の視点から探っていきたいと思います。

肝臓に問題のある人は、ウコンの摂取は逆効果

まず、ウコンです。ウコンはターメリックとも呼ばれ、ショウガ科ウコン属の多年草です。

ウコンの黄色い色はクルクミンと呼ばれるもので、カレー粉、マスタードなどに含まれているお馴染みの成分です。二日酔いの原因であるアセトアルデヒドを体内に残りにくくする効果や、抗炎症作用、抗酸化作用が期待されています。

しかし、ウコンの摂取に関して注意したほうが良い方が少なからずいらっしゃいます。

厚労省の情報発信サイト(*1)には「胆嚢疾患患者は、症状を悪化させるおそれがあるためウコンのサプリメントを摂取すべきではありません。」という記載があります。

また、「ほとんどの成人に対してウコンは安全であると考えられます。」「動物では、高用量のウコン投与により肝機能障害がみとめられました。ヒトでは肝機能障害の報告はありません。」ともあります。

健康に問題ない方は、ウコンの摂取をあまり気にしなくてもよさそうですが、肝機能に問題のある方は気を付けたほうが良いことがわかります。

オルニチンは肝機能を助け、疲労感を軽減

オルニチンが含まれるしじみ
次にオルニチンです。昔から二日酔いにオルニチンが含有するシジミの味噌汁が良いとされていますが、そもそもオルニチンとは何でしょうか。

オルニチンは天然に広く存在するアミノ酸で、タンパク質中には通常存在せず、体の中でL-アルギニンから生合成されます。オルニチンは、二日酔いの原因であるアセトアルデヒドの分解に効果があるとされています。

ある報告(*2)によると、毎日ビール1杯以上飲むなど飲酒習慣のある男女42名に対し、8週間かけてオルニチンを毎日400mg摂取するグループとプラセボ(比較実験に利用される偽薬)を摂取するグループに分けて比較したところ、オルニチンを摂取したグループのほうが起床時のストレスマーカーの値が低く、疲労回復の自覚が強いという結果がでました。

オルニチンは、肝機能を助ける作用があるだけでなく疲労感の軽減にも効果が期待できそうです。ちなみに、前述の厚労省情報サイトには肝臓や飲酒に関する記述はありませんでした。

タウリンも二日酔い防止に効果あり

タウリンが含まれる牡蠣
オルニチンは貝類の中でもシジミに多く含まれていますが、アサリ、ハマグリ、牡蠣も二日酔い防止に欠かせない成分の存在がわかっています。

それは、タウリン(アミノ酸の一種)です。タウリンは貝柱ではなくワタに多く含有されており、一般的に肝臓の解毒作用を強化する働きがあり、アルコール障害にも効果的(*3)とされています。

現時点において、ウコン、オルニチン、タウリンは、肝臓の機能向上に対して明らかなエビデンスがまだ得られてないものの、全く効果がないと否定するエビデンスも得られていないことがわかりました。

しかし、これだけ長い間、市場に出回り根強い人気があるというところに真実が隠されているのかもしれませんね。

私たちが健康的に飲酒ライフを送るうえで注意すべき点は、ウコン、オルニチン、タウリンの摂取効果を期待し過ぎて、毎日お酒を飲み過ぎない事ではないでしょうか。適量の飲酒を心がける、休肝日をもつことも忘れてはいけませんね。

【参考文献】
*1…「統合医療」に係る情報発信等推進事業
*2…「オルニチン研究室」
*3…農林水産省Webサイト


※記事の情報は2020年3月17日時点のものです。
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