「モルドバワイン」とはどんなワイン? 特徴や味わい、歴史についてソムリエが解説!

知る人ぞ知る「モルドバワイン」。最近では専門に取り扱うショップも増えており、ワイン愛好家を中心に注目されています。世界最古のワイン産地とも言われる「モルドバ共和国」で造られる「モルドバワイン」とは、どのような特徴を持つのでしょうか? その味わいや歴史について、ソムリエがわかりやすく解説します!

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モルドバワインに今、注目が集まっている!

ワインといえばフランスやイタリア、スペインといった西ヨーロッパを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は東欧のモルドバ共和国も古代からワインを造っていた産地として知られています。

日本国内ではまだまだ認知度は高いとは言えないものの、その味わいや品質の高さ、独自のぶどう品種、コストパフォーマンスなどから近年人気がでており、モルドバワインの専門店も首都圏を中心に続々とオープンしています。

モルドバ共和国とは?

モルドバ共和国
モルドバ共和国は旧ソ連の構成国で、西はルーマニア、北、東、南はウクライナと国境を接している東ヨーロッパの内陸国です。肥沃な土壌を持ち、気温の日変化・年変化が大きい大陸性気候で、ぶどうの栽培条件としても優れた地域と言えます。

モルドバ共和国の国土面積は33,843 k㎡で、人口は約264万人。日本でいうと関東地方7都県程の広さ、京都府の人口と同程度です。日本と比べてもコンパクトな国であることが分かると思います。

モルドバワインの歴史

モルドバワインは古くから造られており、諸説ありますが、考古学的遺物によると、およそ紀元前3,000年からワイン造りが行われていたという説があります。

ローマ時代から王侯貴族の飲み物として広がり、ヨーロッパ各国の王室でも愛されていました。1878年のパリで行われた国際品評会では、現在では「赤ワインの王様」と呼ばれている「ネグル・デェ・プルカリ」が金メダルを獲得するまでになりました。

19世紀後半になるとフィロキセラ、20世紀後半にはアルコール禁止令で打撃を受け、一時停滞しましたが、1991年にモルドバ共和国が独立した後、ワイン産業は目覚ましい発展を遂げています。現在モルドバ共和国で生産されたワインのほとんどはヨーロッパへ輸出されていますが、日本のインポーターもモルドバワインに目を向けるようになり、日本への輸出も少しずつ増えてきています。

※フィロキセラ(Phylloxera):アブラムシの1種で体長は1~2mmほど。ぶどうの樹の葉や根に寄生し、樹液を吸うことでぶどうを枯死させる害虫。日本の和名は「ブドウネアブラムシ」。

モルドバワインの生産地は?

ブドウの収穫
モルドバ共和国のワイン生産地はPGI(品質管理や信頼性を保障するための地理的表示)によって以下の通り大きく3つの地域に分かれています。

また、モルドバ共和国では「家庭ワイン」の区分があるので、自家消費用として15アール以下の畑の場合は登録不要でワインを造ることが許可されています。

【モルドバ共和国のワイン生産地区分】

・中央部:PGI Codru コードル

モルドバ共和国の首都「キシナウ」があり、国内最大のぶどう栽培面積を誇ります。コードルでは白ぶどうの栽培が盛んで、モルドバ共和国全体の約7割の白ぶどうがコードル地域で栽培されています。主な品種はフェテアスカ・アルバのほか、ソーヴィニヨンブランなどの国際品種も盛んに栽培されています。

・南東部:PGI Stegan Voda ステファン・ヴォダ
モルドバ共和国南東の低地で、年間を通じて降水量が少ない地域です。黒海からの影響も強く受けており、ララ・ネアグラという品種のぶどうが一番多く栽培されている地域として有名です。

・南西部:PGI Valul lui Traian ヴァル・ルイ・トゥラヤン
温暖で雨の少ない地域で、赤ワインの生産に特化しています。また、デザートワインの生産地としても有名な地域です。

モルドバワインのぶどう品種は?

ぶどう
モルドバ共和国で生産されているぶどうの約7割は、ほかの多数のワイン生産地でも栽培され、消費者の認知度も高い国際ぶどう品種です。残りの約3割のうち、コーカサス品種が2割ほどで、土着品種は1割程度になります。

ここでは、伝統的な土着品種を中心に解説します。

【モルドバ共和国の土着品種】

〈白ぶどう〉

・フェテアスカ・アルバ
モルドバ共和国原産のぶどうで、栽培面積は国内1位。「白い乙女」という意味を持ちます。国内ではスパークリングワインの製造によく使われる品種です。白ワインはややライトな飲み口で、親しみやすい味わいに仕上がります。

・フェテアスカ・レガーラ
栽培面積は国内3位。「高貴な乙女」の意味を持ち、白ぶどうにしては珍しくしっかりしたタンニンが感じられ、樽での熟成にも向いています。フェテアスカ・アルバと比べるとふくよかでリッチな味わいに仕上がることが多い品種です。

・ヴィオリカ
病気と低温に強い品種として、モルドバ共和国で開発されたぶどう品種です。ヴィオリカはモルドバ共和国内では多くの女性に付けられている名前としても知られています。マスカットやライチのようなアロマティックな香りが特徴です。

〈黒ぶどう〉
・フェテアスカ・ネアグラ
栽培面積は国内2位。「黒い乙女」の意味を持ち、深みのある色合いとしっかりとしたタンニンが特徴です。オーク樽との相性も良く、樽での長期熟成を経た赤ワインは余韻が長く素晴らしい味わいに仕上がります。

・ララ・ネアグラ
「黒い貴婦人」の意味を持つララ・ネアグラは古代ダキア人により栽培されてきたルーツを持つ歴史ある品種で、ルーマニアでは別名「バベアスカ・ネアグラ」といわれています。果実味豊かでフレッシュな味わいが特徴です。

モルドバワインの特徴、味わいは?

モルドバワインには「WINE OF MOLDOVA A LEGEND ALIVE」というコウノトリとぶどうをモチーフにしたマークが付けられています。

これは、戦闘で追い詰められた戦士にコウノトリがぶどうを与えたところ、戦局が逆転して勝利したというシュテファン・チェル・マーレ時代の逸話から生まれたものです。義務化されているわけではないのですが、現在もほとんどのワインにモチーフとしてこのマークが付けられています。
ワイン樽
モルドバ共和国では、国際ぶどう品種を使ったワインの方が多く造られていますが、せっかくモルドバワインを楽しむなら、フェテアスカ・アルバやフェテアスカ・ネグラといった土着品種から造られたワインをセレクトするのがおすすめです。

基本的には飲みやすいタイプが多いです。白ワインはフルーティーでほどよい酸味があり、幅広い食事と合わせられますし、赤ワインはタンニンがなめらかで軽やかな味わいのものもあります。長期の熟成に向いているフルボディタイプの赤ワインもあるので、数年寝かせてから重厚な味わいを楽しむこともできます。

モルドバワインにはどんなおつまみが合う?

ママリーガ
ペアリングの一つの手法として「ワインと同じ産地の食べ物を合わせる」という方法があります。モルドバ共和国の食文化は多様で、国民食は「ママリーガ」と呼ばれる練り物です。とうもろこし粉を水でこねたもので、肉やチーズ、サワークリームと一緒に食べます。見た目はマッシュポテトに似ていて、ほんのりととうもろこしの風味が感じられます。

ママリーガは作り方も簡単なので、モルドバ共和国のふくよかな白ワイン(シャルドネやフェテアスカ・レガーラがおすすめ)と合わせてみてください。

また、前述したようにモルドバワインは飲みやすいので、幅広い食事に合わせられます。特に日本に流通しているモルドバの赤ワインはコクのあるフルボディのタイプが多いので、豚肉のトマト煮込みやTボーンステーキといったボリューミーな肉料理に合わせると良いでしょう。

モルドバワインは安価で高品質! 気軽に楽しもう

モルドバワインはヨーロッパのワインの中でもコストパフォーマンスが高く、1,000~2,000円前後で非常にクオリティの高いワインが楽しめます。

ピノ・ノワールやソーヴィニヨンブランといった国際品種はもちろん、モルドバ共和国ならではの土着品種をセレクトして楽しんでみてはいかがでしょうか。

また、現在の円安や国際情勢によって、ワインはどんどん値上がりしていくと言われています。これからますます注目度が上がりそうなモルドバワイン、今のうちに買っておいても損はないかもしれません。

※記事の情報は2022年8月23日時点のものです。
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