家飲みワインでヨーロッパ旅行気分を楽しもう!

コロナ禍で海外旅行ができなくなっておよそ7か月。国内は少し動き始めたものの、海外に出かけられるようになるには、まだしばらくかかりそうです。そこで欧州各地のワインを飲んで旅行気分を味わうことにしました。

メインビジュアル:家飲みワインでヨーロッパ旅行気分を楽しもう!

1日目:ポルトガル|初めてでもおいしい『マテウス・ロゼ』

まずは最西端のポルトガルから。

ポルトガルは酒精強化して(製造の途中でワインのブランデー等を加える)熟成させたポートやマデイラのワインが有名ですが、ふつうのワイン(スティルワイン)も豊富です。なにしろ固有のブドウ品種は250種類以上あると言われ、18世紀半ばに世界で初めて原産地呼称制度をつくったほどの歴史あるワイン産地です。

こんなワイン伝統国が生んだ世界規模の大ヒット商品が『マテウス・ロゼ』。実は私がこの酒は私が初めて“おいしい”と思ったワインです。お酒を飲み始めた頃は、背伸びしてワインを飲んでみたものの、酸っぱかったり渋かったりで少しもおいしいと思いませんでした。ところが『マテウス・ロゼ』にはそんな癖がないのです。少し甘さもあってワインが苦手という人に、ぜひ試して欲しいワインです。

35年ぶりくらいでしょうか、この酒を試すのは。渋くて酸っぱいのをおいしいと感じるようになってからは、とんとご無沙汰でした。久しぶりに飲んでみると、飲みやすさはそのままに甘さは以前よりすっきりときれいになった感じ。時代に合わせて品質を上げてきているのだと思います。

この日は一日中庭の手入れをしていてくたくた。近くのスーパーで肉のオードブル盛り合わせとカツオのカルパッチョ、お刺身などを調達しただけの手抜き晩酌。バラエティに富んだフードですが、『マテウス・ロゼ』は肉にも刺身にも寄り添って反発することがありませんでした。パーティに1本あるととても重宝するワインです。
マテウス・ロゼ
『マテウス・ロゼ』は少し弱めのスパークリングワイン。オレンジがかったピンクがきれい。飲みやすさとフードとの相性の幅広さが使いやすい

2日目:ドイツ|『マドンナ』はおでんの友

翌日はドイツワインにしてみました。私のワイン遍歴をたどると『マテウス・ロゼ』で飲みやすいワインがあると知ってから、しばらく好んで飲んだのが「ドイツワイン」でした。白ワインの伝統産地が生んだ、ほのかに甘くフレッシュでフルーティなワインは世界中で大ブームになり一時代を築きましたが、私もこのタイプに嵌ったのですね。

そのせいかドイツワインには甘口が多い印象がありましたが、近年はドライで複雑、優雅なスタイルに大きく変わってきています。ちょっとお高いですけれど、今ではエレガントなリースリング種のワインが大好きになりました。

と言いつつ今日はやや甘口で飲みやすい『リープフラウミルヒ マドンナ』。まだ20代半ばだった頃、これやラベルに猫が描かれた「カッツ」を毎週のように飲んでいた記憶が蘇ります。

用意した料理はおでん。おでん種のセットを買ってきて、大根、昆布、こんにゃく、柔らかくなってきていたトマトを放り込んだだけの簡単おでんです。ワインに合わせたわけではなく、たまたま『マドンナ』を用意した日に、何も考えずにおでんをつくってしまったのでした。

でもこれが予想外にいい組み合わせでした。『マドンナ』の甘さが、おでんの出汁の甘さと釣り合って、よく馴染むのです。ツルツルと進んであっという間に一本開けてしまいました。ラベルを見るとアルコール度数は9.5%。お酒があまり強くない方でも楽しめるワインです。
リープフラウミルヒ マドンナ
その昔テレビコマーシャルをするほど日本でもポピュラーだった『マドンナ』。「リープフラウミルヒ」は「聖母の乳」という意味

3日目:フランス・ボルドー|気軽に楽しめる『バロン・ド・レスタック』

3日目はフランスです。選んだのはリーズナブルでおいしいワインが豊富なボルドーです。ボルドーは重厚な味わいのイメージがありますが、ふだん使いできるものもたくさんあります。『バロン・ド・レスタック』もそんな気軽に楽しめるボルドーワインのひとつです。

とは言うもののボルドーを名乗るだけあって、骨格のしっかりした味わいで、樽由来でしょうかバニラのような香りがたちます。ほどよい酸と渋味があり、ドライ過ぎずとてもよくまとまっていました。

この日はこのワインと決めていたので、メニューはすき焼きにしました。牛肉の旨味にワインの旨味が乗って、最強の組み合わせだなあ、溶き卵は付けない方が合うなあなど、いろいろ試しながらたっぷりいただきました。
バロンド・レスタック
フランスで最も愛飲されているボルドーワイン『バロン・ド・レスタック』。バランスのよい味わいで日本の家庭料理にも合わせやすい
それにしても思い出すのは3年前に訪れたボルドーの街です。世界中からワインが集められたワイン博物館やきれいに化粧直しが済んだ古い町並みが忘れられません。何よりもブルス広場の水鏡が素敵です。
ボルドー光の広場
ガロンヌ川に面したブルス広場は噴水と霧で石畳に2㎝の水が張られる。ボルドー一番の撮影スポットになった

4日目:スペイン|お買い得なCAVA『フレシネ』をシーフードと

4日目はスペインへ。スペインはフランスやイタリアと並ぶワインの大産地で、たしかブドウの栽培面積は欧州で最大だったと記憶しています。大西洋に面した北部にはアルバリーニョ種のキレのいい白ワインがあり、その昔ボルドーにワインを供給した銘醸地リオハにはテンプラリーニョ種の濃醇な赤ワインがありますが、今回いただくのはスパークリングワインの『フレシネ』です。

このワインは「CAVA(カヴァ)」という種類です。産地名ではないのでスペイン各地でつくられていますが、バルセロナがあるカタルーニャ地方で95%がつくられています。白ワインを二次発酵させて炭酸ガスを持たせるときに、瓶詰めした瓶のなかで発酵させるのが特徴で、これはシャンパンと同じ製法です。最近はシャンパン製法ではなくトラディッショナル製法と言われます。

手間暇をかけてつくられただけあって辛口でも味わいに厚みがあり、幅広い料理に合わせられます。スパークリングワインには魚介類を生臭く感じさせるものが少ないので、日本の家庭料理に入り込みやすいのですね。
フレシネ
『フレシネ』を刺身に合わせた。醤油をレモン醤油と刺身醤油の2つ用意するとさらにおいしくいただける。淡白なイカや鯛はレモン醤油、脂ののったマグロは刺身醤油と使い分けるのがおすすめ

5日目:イタリア|餃子鍋で『タヴェルネッロ・オルガニコ』

5日目はイタリアワインの『タヴェルネッロ・オルガニコ』です。スーパーカーのランボルギーニ社があるボローニャが州都のエミリオ・ロマーニャ州産です。この州は高級チーズのパルミジャーノ・レッジャーノやバルサミコ酢などおいしい食材の宝庫ですね。ちなみにボローニャにはイタリア食材の総合テーマパーク「イータリー・フィコ」があり、こうした食材を楽しく学べます。
イタリア食材の製造工程
イータリー・フィコではチーズやハム、オリーブオイル、バルサミコ酢、ワインなどほとんどのイタリア食材の製造工程が見られる。これはポピュラーなチーズ「グラナ・パダーノ」の最初の工程
イタリアにはバローロやモンタルチーノという濃厚な高級ワインもありますが、1本1000円~1500円くらいで十分楽しめるワインが豊富です。日本でもピザやパスタなどイタリア料理はよく食卓に上りますし、サラダもレモンを搾ってオリーブオイル、粉チーズをたっぷりかけたら、どのイタリアワインもおいしくいただけます。

『タヴェルネッロ・オルガニコ』もそんなお手頃なワインですが、イタリアを代表する赤ワイン用ブドウのサンジョベーゼ種100%の本格派です。果実味が豊かで渋くないので家庭料理に幅広く合います。しかも「オルガニコ」。オーガニック認証を受けているものとしてはとてもリーズナブルなワインです。

この日は手羽元と冷蔵庫の残り野菜を煮込んだ餃子鍋です。あっさりした味わいの鍋は『タヴェルネッロ・オルガニコ』でおいしくいただけました。
タヴェルネッロ オルガニコ
『タヴェルネッロ オルガニコ』を生産するカヴィロ社はイタリア最大の協同組合。およそ12,000もの生産者と手を携えて、ブドウを栽培している
ちなみにこれまで飲んだワインはただいまごちそうが当たるキャンペーン中。購入したレシートを送ると生ハムとワインのセットやチーズのセットが当たります。

最終日:フランス・ボジョレー|ジョルジュ・デュブッフ社の2本

最終日はボジョレーのワインです。日本では「ボジョレーヌーヴォー」が圧倒的に有名ですが、ヌーヴォーのほかにもおいしいワインがたくさんあります。ボジョレー地区はガメ種というブドウ品種を使うのが特徴で、この品種はブルゴーニュ地方のワインで知られるピノ・ノワール種に近いブドウです。軽快で飲みやすいワインはもちろん、ちょっとお高くなりますが強さとエレガントさを兼ね備えたワインもあります。

用意したのはボジャレーヌーヴォーのつくり手として世界に名をとどろかせたジョルジュ・デュブッフ社の2本。ボジョレーと産地表示するスタンダードなものと、ボジョレー・ヴィラージュというボジョレーのなかでも特定の地区のブドウでつくったものです。どちらも軽快で飲みやすいですが、ヴィラージュの方が少しコクがあるでしょうか。
ボジョレーのワイン
ボジョレーのワインはヌーヴォーだけでなく熟成させたワインも魅力的
とは言いつつもやはり11月第3木曜日が近づいてくると気になるのがボジョレーヌーヴォーです。いつも今年はどうしようかと迷うのですが、結局、毎年買ってしまいます。春のいかなごのくぎ煮とか初夏の初ガツオとか、季節の風物詩になっているフードと同じノリですね。

ボジョレーヌーヴォーを世界に広めたジョルジュ・デュブッフさんに一度だけお目にかかったことがあります。6年前に解禁に合わせて来日された時に、飯田橋にあるアンスティテュート・フランセで開催されたイベントでご挨拶することができました。にこやかに応じてくださり、写真を撮らせて欲しいと頼むと、きちんとテイスティングのポーズをとってくれました。

デュブッフさんは今年1月に永眠されたそうで、今年のボジョレーヌーヴォーは彼を偲んでいただきたいと思います。日本にはボジョレーヌーヴォーでワインと出会った人が大勢います。彼は日本でワインをふだんのお酒にした功労者のお一人です。
ジョルジュ・デュブッフさん
ボジョレーの帝王と呼ばれたジョルジュ・デュブッフさん。2014年撮影
※記事の情報は2020年11月4日時点のものです。

 

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