安田弘之『ちひろさん』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉖》

今回のおつまみは、まさにシンプルイズベスト。安田弘之さんの人気作品『ちひろさん』より、ちひろさんが居酒屋のニセ女将になって作ったおつまみが登場します! 家飲み大好きな筆者が、「小説やエッセイ、漫画に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:安田弘之『ちひろさん』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉖》

老若男女を惹きつける元風俗嬢・ちひろが戯れでニセ女将に!?


◾こんな本です
たおやかなのに逞しく、情は厚いが切り捨て上手で、優しいけど怒ると怖い。そんな魅力をもった風俗嬢の物語『ちひろ』の続編としてスタートしたのが『ちひろさん』(全9巻)。

風俗をやめて海辺の町に移り住んだちひろは、小さな弁当屋で働くことに。元風俗嬢という過去を隠さず生きる彼女に、小学生からお年寄りまで町中の人が「うっかりその素顔を見せてしまう」(byちひろ)ようになります。
帰りたくなかった家も、死にたかった朝も、ひとりぼっちの運動会も、ちひろとの出会いがきっかけで、少しずつ景色を変えて…

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』裏表紙より
こんな風に周りを元気にしたり、強さを分けてくれたりするちひろはさながらスーパーウーマン。それでいて正義一辺倒ではなくブラックな部分もあるのがまたよくて。前作『ちひろ』の頃から、彼女の大ファンな私です。

ちひろの個性やストーリーもさることながら、安田先生の描く、1コマずつがまるでイラスト作品のような絵が好きで好きでたまりません。ちひろが働く弁当屋のさまざまなお弁当を始めとする食べ物はとってもおいしそうだし、雪模様や桜吹雪、トンボ舞う秋空、いろんな季節の海など、丁寧に描き込まれた風景の描写がとても素敵なんです。これから読まれる方はぜひその辺もじっくり堪能してみてくださいね。

◾ここを再現
全話の中で、私的ベスト3に入る大好きな回[ニセ女将]からの再現です。

ある日、お気に入りの「狭くて細長くて人気のない」酒場に立ち寄ったちひろ。もう1ヶ月も営業していないその店が気になり真っ暗な店内に入ってみると、店主が一人で飲んでいました。

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
「飲みたきゃ勝手に飲んでろ 俺はサウナに行ってくる」と出かける店主。経営状態の厳しさを心配しつつも「え〜〜〜〜〜いいの!?」と浮かれたちひろは厨房に入り……。

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
「なーんもねーなぁ」といいつつ、手早く玉子焼きを作り、アジの干物を焼きます。

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
あら、おいしそう!

興が乗ってきたちひろは……

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
勝手にお店をオープンしちゃいます! 自由すぎるぜちーちゃん!

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
これには町のおっちゃんたちも大喜び。

女将・ちひろのフリーダムなもてなしに、ぐいぐい酒が進んでいきます。もちろんちひろも飲みながらニセ女将タイムを満喫。

この楽しい流れで登場する、ちひろが「あるもん」だけで作ったおつまみを再現します。

◾お品書き

  • 玉子焼き&アジのひらき
  • 目玉焼き&シーチキン
おおお、玉子と魚ばっかりになってしまった(笑)。だがそれがいい!!

【ちひろさん再現レシピ①】玉子焼き&アジのひらき

玉子焼き&アジのひらき
<材料>
・卵
・塩
・お好みでだし醤油
・アジのひらき

<作り方>
① アジは魚焼きグリルなどで焼く。
② 卵を溶いて調味料を加えて混ぜ、焼く。

◾食べてみました
玉子焼きをどんな風に味付けしたかは作品に描かれていなかったので、想像でちょっとしょっぱめにしてみました。この町は関西じゃなさそうだから出し巻きではないだろうし、ちひろが甘い玉子焼きでお酒を飲むとも思えないから。

アジには大根おろしやすだちなんかも一切添えず焼いたまま。シンプルにうまいです。

これを初めて入る店の厨房で作って飲むところを想像したら、ふふっと笑いがこみあげてさらにお酒がおいしくなりました。

【ちひろさん再現レシピ②】目玉焼き&シーチキン

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
玉子焼きがより手軽な目玉焼きに、アジのひらきがさらに簡素なシーチキンになりました。焼いただけ、開けただけでもちひろが出すと値打ちもんでしょ。

<材料>
・卵
・シーチキン缶

<作り方>
① 目玉焼きを好みの加減で焼く。
② シーチキンを小鉢に盛る。
目玉焼き&シーチキン
◾食べてみました
絵から察するにシーチキンはフレークではなくてチャンクタイプ。これならつまみにしやすくていいですね。そのまま食べてもけっこうな塩味がついていると発見しました。

で、目玉焼きには何をかけたんだろう? 流行ってない店だからいろんな調味料があるとも思えないし、王道の醤油かな…と想定し、黄身にぷつっと穴をあけて醤油をちらりと垂らしました。目玉焼きはテフロン加工のフライパンでじっくり弱火焼きにしたら、白身がぷりっとして黄身は6割程度の半熟、といい感じに仕上がりました。どちらも、コップ酒が似合いましたね〜。

***

「いつか酒場のカウンターに立ってお客さんを迎えてみたい」というのは私の夢のひとつ。

今回のちひろみたいなチャンスがいつか来ればいいのになぁと夢想しながら食べて飲みました。私だったら何を作るだろう。意外と玉子焼きより目玉焼きが難しいよね、アジはほぐしてキュウリと和えてもいいんじゃない? なんてゴキゲンな妄想は尽きません。

***

そして、ニセ女将ナイトは大いに盛り上がり、ちひろとおっちゃん達は店中の酒を飲み干す勢い。最後、長時間のサウナから戻った店主が見たものとは―――。

安田弘之 /秋田書店 『ちひろさん②』[ニセ女将]より
ぜひ、本編で続きをお楽しみくださいね。

※記事の情報は2021年12月27日時点のものです。
  • 1現在のページ