オカヤイヅミ『いのまま』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉟》

オカヤイヅミ先生の食コミックエッセイ「いのまま」から、作ったことがあるようでなかったお酒に合う2品をピックアップ。ひとりだからこそ味わえる、食べたいときに食べたいものを味わえる幸せ。一緒に噛みしめてみませんか? 家飲み大好きな筆者が「本に出てきた食べ物をおつまみにして、お酒を飲みたい!」という夢を叶える連載です。

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:オカヤイヅミ『いのまま』の再現レシピ《肴は本を飛び出して㉟》

胃のまま、気のままに作る自分のための料理は楽しく、おいしい。

◾こんな本です

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漫画家・イラストレーターのオカヤイヅミ先生がご自身の食生活を等身大に描いた、一話完結スタイルの食コミックエッセイです。

オカヤ先生の作品は『いいとしを』、『白木蓮はきれいに散らない』(この2作品で手塚治虫文化賞短編賞を受賞されています)、『ものするひと』といったストーリー漫画も、『すきまめし』や『ごはんの時間』などの食漫画もどちらもとても魅力的。

前者は読み手の心にある自分でも気づかなかった感情を引き出してくれる表現力に唸らされるし、後者『すきまめし』は気負わずに日常の食を楽しむことの豊かさを教えてくれます。

雑誌の連載をまとめた『いのまま』。第1話の前書きでオカヤ先生はこうおっしゃっています。
ひとり暮らしの部屋で漫画やイラストを描いて生活しています。(中略)生来マイペースなもので仕事の合間にぼんやりしたり食べたいものを思い立ったら作って食べられる暮らしはどうやら性に合っているようで、ずっとこのままならいいのにと大人の割に甘い夢を持っています。

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[あんかけ焼きそば]より
その言葉通り、この回では仕事中にお腹が空き、インスタントラーメンを汁麺ではなく焼きそばに仕立てあんかけにするというフリースタイルを楽しむオカヤ先生。ゆでた麺を湯切りしてさらに炒め、野菜や豚こまといった具をラーメンの粉末スープで味付けしてあんにするというアレンジ力、お見事ですよね。思わずプシュッといっちゃってるのも最高。

またある日は大好きな夏が去りゆくのを悲しむあまり、逆に「秋を楽しんでやる」と発奮。焼きおにぎりと焼ききのこをこしらえ、出汁と七味をかけてほわぁと温かいところをぱくり。別の日には、子供の頃には許せなかった「コーンを乗せた冷奴」を味わって「うん、ちゃんとおいしい」と大人の余裕を楽しむ。

こんなおいしいストーリーが全15編収められています。

オカヤ先生の絵はシンプルなタッチでページ全体がスッキリとしていてとても読みやすいです。それに限られた線でモノクロに描かれた食べ物がどれもおいしそうでおいしそうで、不思議になるくらい。きっとオカヤ先生が日々食べ物と向き合って、ちゃんと見て、食べているからなのでしょうね。

ちなみにこのコミック、雑誌掲載時は『オトナ食堂』というタイトルだったのを単行本化する際に『いのまま』と変更したのだそうです。

「胃のまま」、「意のまま」に食べる暮らしをぜひ覗いてみてください。

『いのまま』ここを再現

作ったことがあるようでなかった、お酒に合う2品をピックアップしました。
 

◾お品書き

  • プチトマトのおひたし
  • もち米シュウマイ

【いのまま再現レシピ①】プチトマトのおひたし

プチトマトのおひたし
ヨガや登山などの“運動”を楽しむ友人を理解できず思い悩むオカヤ先生。「(運動して)すごくえらいね」と言えば「えー 楽しいよ」と返され「???」でしたが、ご自分に置き換えるとその楽しさがわかったよう。ご友人が心躍らせる運動は、先生にとってのこれ!

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[プチトマトのおひたし]より
ちまちまとプチトマトの皮を湯むきして「これがきもちいいいんだ」とニンマリ。

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[プチトマトのおひたし]より
完成したおひたしを件のご友人たちにふるまえば、今度は逆に「えらいねぇ」と言われ「そういうことか」と腑に落ちたようです。めでたしめでたし。

<材料>
・プチトマト
・だし(昆布、カツオ)
・酒
・みりん
・醤油
・おろし生姜

<作り方> ※本編の手順を筆者が適宜アレンジを加えています(以下同)。
① 温めただしに調味料を加え、粗熱が取れたらおろし生姜を入れて冷ましておく。
② ヘタを取ったプチトマトをバットなどに並べて熱湯をかけ、弾けた皮をむく。
③ ①の漬け汁にプチトマトを入れてしっかりと冷やし、味を染み込ませる。

◾食べてみました
プチトマトの皮をむくなんて、自分なら思いつきませんでした。実際、プチトマトのマリネやおひたし(タバスコ入りで作るとおいしい)を自作することはあったのですが皮はついたまま。でも今回むいてみてわかりました。皮がない方が断然おいしいし食感がいい!

だしはちょっといいだしパックを使って手抜きしちゃったけどそれでも充分。

さっぱりとして甘酸っぱく、だしの風味のおかげで後口がとても上品です。そして、トマトの旨みが加わった漬け汁がまたうんまいの! 捨てるに忍びなく、レンチンしたエノキを軽く漬けてそうめん風に食べました。予備の野菜を用意すること、おすすめしておきます。

【いのまま再現レシピ②】もち米シュウマイ

もち米シュウマイ
「なに食べたい?」と聞かれて「ひき肉」と答えるくらいにはひき肉が好きだという先生。

特に好きなのが…

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[もち米シュウマイ]より
だそうです。友人たちとの会食でシュウマイを食べてシュウマイ愛を語るも温度差があり、食べ足りなさにしょぼんとした結果、「ならばたくさん作ってたくさん食べよう」ということに。ひき肉欲を満たせる、もち米シュウマイに挑戦です。

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[もち米シュウマイ]より

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[もち米シュウマイ]より
<材料>
・豚ひき肉
・玉ねぎ(みじん切り)
・ごま油
・もち米(生)※洗ってから30分浸水させ、ザルにあけておく。
▼(調味料)
・酒
・塩
・コショウ
・醤油
▼(つなぎ)
・卵白
・片栗粉

<作り方>
① 豚ひき肉にみじん切りにした玉ねぎを加えてこねる。
② 調味料を1種類ずつ加え、その都度よく混ぜる。
③ つなぎを加えてさらに混ぜ、ごま油を加える。
④ 肉ダネをひと口大に丸め、もち米の上で転がして表面にもち米をまぶす。
⑤ 15〜20分ほど蒸す。蒸篭がない場合は深めのフライパンや鍋でも代用できる。
⑥ 黒酢を付けて味わう。

◾食べてみました
中国料理店の点心メニューでしかお目にかかったことがないもち米シュウマイ。まさか自作できるなんてー! しかも思っていたよりずっと簡単で嬉しい驚きです。

私の場合、みじん切りは「ぶんぶんチョッパー」なる文明の利器におまかせ。生地をこねるのもボウルが汚れるのがアレなもんでポリ袋でモミモミに。

蒸篭の蓋を開けた瞬間、「わ〜」と声が出てしまいました。できてる、ちゃんとできてるよ!

むっちりとしたもち米に包まれたジューシーな肉。下味を強めにしたのでこのままでもいけますが、オカヤ先生おすすめの黒酢を添えるとなおうまい。
もち米シュウマイ
辛子をちょいとつけてもいい感じ。
 
もち米シュウマイ断面
早く食べたくて写真がぶれておりますすんません!
 

オカヤイヅミ /芳文社『いのまま』[もち米シュウマイ]より
まさにその通りの味!
幸福感がすごいです!

今回はひき肉200gと小ぶりな玉ねぎ1/2個で作ったのですが、写真の10個を入れて全部で16個のシュウマイが作れました。分量のご参考までに。

おまけ

・湯むきしたプチトマトの皮
・卵白をつなぎに使った後の卵黄
・衣になり損ねたもち米

という余り食材でもつまみを作ってみました。
余り食材で作ったつまみ
・湯むきしたプチトマトの皮→梅酢漬け。
・卵白をつなぎに使った後の卵黄→醤油をまぶして蒸篭の上段で蒸す。
・衣になり損ねたもち米→残った肉ダネとコーンを混ぜて蒸篭の上段で蒸す簡易おこわ。

ちょっと目先の変わったつまみができて満足です!

***

同じひとり暮らしの者として、とても参考になった今回の2品。私も面倒がらずにもうちょっと丁寧に日々の料理に向かおうと思った次第です。

最後にもう一つご紹介させてください。

オカヤイヅミ /『ホットサンドだより』表紙
こちらはオカヤ先生が毎日のように食べ続けているホットサンドの中身を図解したイラスト集。SNSでも発信されていたものを1冊にまとめてあり、とても見応えがあります。

ホットサンドメーカーを3台所持していながらそれでつまみばっかり作っている私ですが、ホットサンドをもっとちゃんと作ろうと思わされました。名作です!

おつまみ向きからおやつまで、その数なんと51種類!
めくるめくホットサンドの世界は眺めているだけでも楽し過ぎます。

オカヤイヅミ /『ホットサンドだより』より
私はこの中からパセリとコンビーフのホットサンドを真似してみました。 ワッサーと押し込んだパセリがいい仕事をしていましたよ〜。
ホットサンドメーカーにパセリとコンビーフと食パンをのせる
パセリとコンビーフのホットサンド
こちらの冊子は現在のところネット販売が主なようです。

私はこちらで購入しました。

この2冊をバイブルに、「胃のまま」の家飲みを楽しみましょうね、ご同輩!

※記事の情報は2022年9月6日時点のものです。
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