イタリア人ジェラート職人が教えてくれた! アイスに合うお酒はこれだ(2)

今回は2つのイタリア産リキュール、「マルサラ」と「リモンチェッロ」を合わせてみます。

ライター:京藤好男京藤好男
メインビジュアル:イタリア人ジェラート職人が教えてくれた! アイスに合うお酒はこれだ(2)
アイスとワイン、あまりない組み合わせですよね。でも、ジェラートの国イタリアの達人にかかれば、まるで魔法のように相性の良さを引き出してくれるのです。ジェラート職人アンドレアさんのアドバイスに従って、今回も組み合わせの妙を検証してみたいと思います。

ジェラートとイタリア産リキュールの組み合わせを教えてもらった!

イタリア人のジェラート職人アンドレアさんが教えてくれた「基本の組み合わせ」に従って、前回は赤ワインとチョコレート・リキュールにジェラートを合わせてみました。それが見事なほど、互いの味を引き立てることに驚かされましたね。
さて、今回はちょっとした応用編。イタリア人ならではの発想で、味に変化をつけると言うのですが…

アンドレア「ジェラートに合わせるなら、やっぱりイタリア産のリキュールがおすすめだ。イタリアのリキュールは独特のくせがあるけれど、うまく合わせれば、これが美味しさの元になる。いや、新たな美味しさを生み出すと言ったほうがいいかな。言わば、化学反応が起きるわけだ

そう自信たっぷりに、アンドレアさんはおすすめのジェラートと、組み合わせのリキュールを教えてくれたのです。
ジェラート職人のアンドレアさん

ケーキの隠し味にも使われるお酒を合わせてみる。

では最初のおすすめリキュール、「マルサラ」です。このお酒は、シチリア島の西岸部の港町マルサラで作られる「酒精強化ワイン」と呼ばれるもの。ワインにブランデーを加えて寝かせ、アルコール度数を高くしています。
普通、イタリアでは食後酒として提供されますが、その独特の風味が好まれて、お菓子やケーキの隠し味にも活用されます。なかでも有名なのがティラミス。エスプレッソと一緒にマルサラを少し混ぜ込み、ビスケット(スポンジ部分)に染み込ませると独特の香りを放ちますよ。
お菓子作りにも使われる「マルサラ」

そして、今回アンドレアさんが見つくろってくれたおすすめジェラートがこちら。「ヘーゼルナッツのジェラート」です。実はイタリアは、ヘーゼルナッツの収穫量がヨーロッパ1位なんです。ですから、イタリアのジェラート屋さんには、たいていヘーゼルナッツ味が並んでいますよ。いかにもイタリアらしいチョイスですね。
マルサラとヘーゼルナッツのジェラート
マルサラは小さなグラスに移して、少しずつ混ぜ合わせることをおすすめします。分量は好みですが、最初は少量ずつ、味をみながらやってみるのがいいかと思います。
ジェラートにマルサラを少しずつ注ぐ
さて、マルサラは初めてというリサさん。実は先にマルサラだけを飲んでもらったのですが、そのときは「なんだか紹興酒みたい」と渋い顔をしていました。それがジェラートと合わせてみると…

「うわ、ジェラートの味が高級なものに変わりました」と驚き。

「ナッツの味はしっかりするのに、食感が軽くなって、変わりにアルコールの香りがふわっと。あ、これ、ブランデーの香りですね。でも、ブランデーを直接飲むときほど強くはなくて、柔らかくて深みのある大人な香りです。ジェラートというよりも濃厚なババロアやムース、そんなデザートを食べている感じ。すごい変化です」
さすが、ケーキの隠し味に使われるというマルサラ。ジェラートとの相性も抜群でした。

レモン風味のリキュールが劇的な味のアクセントに

さて続いて、イタリアを代表するリキュールと言えば「リモンチェッロ」です。これも食後酒として振舞われることが多いリキュールですが、甘みが強いことからイタリアでは「グラニータ」というシャーベットのようなデザートにかけて味わうこともあります。例えば、冷たいレモンシャーベットに濃くて甘いリモンチェッロを混ぜてカクテル風に。想像しただけで、爽快感が口に漂いますね。
リモンチェッロ

ところが今回、アンドレアさんはこのリモンチェッロを、あえてクリーミーでコクのあるヘーゼルナッツのジェラートに合わせてみようというのです。
リモンチェッロをヘーゼルナッツジェラートに合わせてみる

ちょっと不安げなリサさん、恐る恐るリモンチェッロを混ぜています。
半信半疑でリモンチェッロとヘーゼルナッツジェラートを混ぜてみる
「ナッツとレモン、合いますかね…?」 そう言いつつ一口頬張ると…

「なに、これ!」とこの表情。
驚きの表情を見せるリサさん

それ、どういうこと? 美味しいの? まずいってこと?

「想像できるジェラートの味を超えました。もう異次元の味です。口のなかで、レモン、ナッツ、レモン、ナッツと、お互いの味が虹のように変化して。でも、ちゃんと調和が取れているんです。ふんわりとしたナッツの味に、ツンと尖ったレモンの酸味がアクセントになって、でも全体には甘みが広がって。なんとも言葉にできない。一言、エキゾチック」

私も味見させていただきます。なるほど、リモンチェッロが見事なアクセントになって、ナッツ系ジェラートのまったり感を軽くしている印象です。チョコレートにオレンジピールを入れたり、肉料理にフルーツのソースを加えたりすると、違ったベクトルの味が結果的に味を引き立てあったりします。そんな効果が出ていますね。これは、ジェラートだけ、リキュールだけ、では出ることのない、組み合わせならではの妙です。まさに「化学反応」ですね。

するとここで、リサさんの興奮に触発されたのか、カメラ担当のカルアさんが乱入、ではなく、参入してくれました。

「わたくし、ジェラート大好き、リモンチェッロ大好きなの。もう我慢できません」と奪うように次のレシピへ。
リモンチェッロもジェラートも大好物のカルアさん
次はジェラートをちょっと変えてみます。ミルクがベースのホワイトチョコ味。それにリモンチェッロを加えて、さらにこのお酒を投入。
プロセッコを注いでみる
これは、白のスパークリングワインです。特にイタリアで人気の「プロセッコ」がよく合うとのこと。プロセッコはイタリアの北部ヴェネト州産の白ブドウですが、スパークリングワインにすると辛口ながら果実味が豊富で、まろやかな味わいになるのが特徴です。
 
リモンチェッロとプロセッコを注いだホワイトチョコジェラートを試食
「ふわふわしたムース状になっています。うーん、なんというか、ミルク味がまろやかにはなっているんですけど、レモンの風味が消えてるような。ワインによってリキュールが薄まったのかも」とリサさん。
さっきのヘーゼルナッツとリモンチェッロの組み合わせの味わいが強烈なのか、ちょっと物足りない様子。

「ヨーグルトとかカルピスに近い味わいですよ。こういうカクテルだと思えば、アリだと思うけど。夏の焼けるようなビーチで、パラソルの下で飲めばいけると思うな」とカルアさんは気に入っているよう。

実はこの組み合わせ、本来はイタリアでよく知られたカクテルのレシピをアンドレアさんがアレンジしてくれたものなんです。
そのカクテルとはこちら。「ズグロッピーノ」といいます。レモンシャーベットにウォッカとプロセッコを混ぜ合わせた、爽快感たっぷりのイタリアン・カクテルなのです。
ウォッカ、プロセッコ
ズグロッピーノ
実際は、このような夏向きのカクテルになるのですが、本物のレモンを使ったレモンシャーベットがなかなか手に入らない日本で、うまく代用で味を生み出そうと工夫してくれたレシピだったのです。

さて、今回の検証でジェラートとお酒は合わせることが十分に可能であることがわかりました。それ以上に、未知の味を作り出すことまでできることに感激しました。
今回の基本を踏まえて、様々なお酒とアイスとの相性を探ってみるのも、家飲みの楽しみ方の一つになるかと思います。気がおけない仲間が集まったときには、ぜひゲーム感覚で。盛り上りますよ!

※記事の情報は2018年9月18日時点のものです。 
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