これからの人生で、自分好みのワインと出会うために<お酒のたしなみ入門②>

渋谷のワインバー bar bossa店主・林伸次さんが綴る連載コラム。2回目のテーマは、「好きなワインを見つける方法」について。

ライター:林 伸次林 伸次
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僕が働いている、bar bossaはワインがメインなのですが、たまに「辛口の赤ワインをください」という注文を受けます。

日本語の「辛口」って意味が2種類ありまして、「香辛料等で味付けしたカレーや担々麺のようなホットでスパイシーな辛さ」と「塩味が強い、醤油や味噌のような塩が多く含まれている辛さ」です。

赤ワインでそういう味はないですよね。この「辛口の赤ワイン」というのは「日本酒の表現」から借りているんです。日本酒で辛口と言えば、「甘くないこと」という意味です。お客様が注文するところの「辛口の赤ワイン」というのは、「甘くない赤ワイン」ということなんです。

さて、ここで僕たち「ワインを扱う人間」は想像します。「甘くない赤ワインということは、フルボディでしっかりしているボルドーのようなワインなんだろうか、それとも酸味があって軽やかなブルゴーニュのようなワインなんだろうか」と悩みます。そしてこれ、お客様の好みによるんです。

それで、出来れば、「辛口の赤ワインをください」と言わずに、「フルボディのしっかりした赤ワインを」とか「酸味があって、タンニンの少ない赤ワインを」とかって注文していただきたいんです。

何か面倒くさい感じですか? ワインって近づきたくない感じですか?

世界中で晩餐会と言えば、フランス料理が出てきて、みんなシャンパーニュで乾杯して料理にワインをあわせます。あなたの人生のうち、晩餐会に出る機会はないかもしれないですが、ちょっとしたパーティーや食事会で、ワインが普通に出てくる機会はたくさんあるでしょう。 ちょっとしたことを覚えると、ワインって難しくありません。今回はそんな話をいたします。
 
バーボッサ店内

まずは品種を知って、好みの軸を見つけましょう

ワインのイメージ
まず、ワインはブドウから作られますが、ワインの味のほとんどは、「ブドウの品種」で決まります。

赤ワインはこんな品種があります。
カベルネ・ソーヴィニヨン・・・濃くて骨格がしっかりしています。ボルドーの5大シャトーが有名です。
メルロー・・・濃くて肉厚でまろやかです。ボルドーのペトリュスが有名です。
ピノ・ノワール・・・繊細で軽やかで上品です。ブルゴーニュが代表的で、例えばジュヴレイ・シャンベルタンが有名です。
シラー・・・濃厚でスパイシーです。コート・デュ・ローヌ、例えばコルナスなんかが有名です。オーストラリアで作られるとシラーズと呼びます。

白ワインの代表的な品種はこんな感じです。
シャルドネ・・・ふくよかでまろやかです。樽熟させることが多いです。ブルゴーニュが代表的で、ムルソーが有名です。
ソーヴィニヨン・ブラン・・・爽やかでさっぱりしていてハーブ香があります。ロワールが代表的です。
リースリング・・・華やかな香りがしてフルーティーです。アルザスが代表的です。

もちろん、他にも色々とブドウ品種はありますが、だいたいこの辺りを飲んで「自分はこういうカベルネ・ソーヴィニヨンみたいなしっかりとしたボディの赤ワインが好きなんだな」といった感じで、覚えてしまいましょう。

そして、お店でワインを買うとき、「カベルネ・ソーヴィニヨン」と書いてあるワインを選ぶと自分の好きな味に近いワインに出会えますし、飲食店でも、「カベルネ・ソーヴィニヨンが好きなのですが」と伝えると、ソムリエやサービスの人が、あなたと一緒に選んでくれます。

※このブドウ品種の説明は代表的なイメージで、目安です。作り手や場所によって色々と違います。ご了承ください。

味や香りを表す言葉で、「好き」を広げましょう

次に、ワインの味や香りを表現する言葉を知りましょう。

ブドウは北の寒いところで育てられると、日照時間が少ないので酸味が強いワインになります。逆に、ブドウが南の温かいところで育てられると、日照時間が多いので糖度が高く、濃厚で果実味のたっぷりしたワインになります。

自分は「軽やかで酸味がしっかりしたワイン」が好きなのか、「それとも濃厚で果実味のたっぷりしたワイン」が好きなのか、それを言葉で表現していただけると、飲食店のサービスの人間は助かります。

ワインは醸造した後、樽で寝かせます。そのとき、樽の香りがワインにのりうつって、ワインから、「ロースト香」が出ることがあります。「バターやクッキーやカカオの香り」といった感じで表現される香りです。

この「樽の香り」が好きかどうかを知ることもポイントです。「樽の香りがしっかりするワイン」、あるいは「樽の香りがあまりしないワイン」といった風に注文していただけると助かります。

さて、ここで「ワインの香り」ですが、「腐葉土の香り」とか「干し草の香り」とか、色々と言いますよね。あれは、ヨーロッパの農家の周りにあるモノの香りで表現しているんです。それが彼らの「共通用語」なんです。

例えば、「畳の香り」がするワインがあったとしても、世界中の人たちは畳の香りは想像できないですよね。でも、干し草とかカシスとかなめし革の香りは、彼らの日常の周りにあるモノなので、それを使って表現しているというわけです。

一応、ワインの世界では「ヨーロッパの農家の周りにあるモノの香りで表現する」というのが世界標準になっています。

日本人同士で「これは、納豆の香りだね」とか「ぬか漬けの香り」といった風に表現するのは遊びとしてはアリですが、世界標準は「ヨーロッパの農家の周りにあるモノ」です。そちらで表現しましょう。

そして、飲食店で「以前、バラの香りのする赤ワインを飲んで美味しかったのですが、そういうのありますか?」といった感じで、香りから表現するのも面白いですね。
ワインイメージ

それではまとめます。
①ワインはブドウ品種です。代表的なワインのブドウ品種、自分はどれが好みで、どれが好みではないのかを知りましょう。

②ワインの味わいを表現する言葉を知りましょう。酸味がしっかりしていて軽やか、あるいは濃厚で果実味がしっかりしている、どちらが好みですか?

③ワインの香りの表現も意識的になると、もっと広がります。レモンやグレープフルーツの香りがするフレッシュな印象の白ワイン、カシスやブルーベリーの香りがする果実味のある赤ワイン、どんな香りが好きですか?


このあたりを意識的になると、ワインって広がっていきます。ぜひ、お試しください。


※記事の情報は2018年12月23日時点のものです。
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