「ワインの酸化防止剤=頭痛の原因」は都市伝説の可能性大!?

「酸化防止剤=体に悪い」というイメージがありますが、本当のところはどうなんでしょうか? 酸化防止剤無添加ワインだったら頭痛にならないの? ワインと酸化防止剤の関係について、管理栄養士の森由香子さんが解説します。

メインビジュアル:「ワインの酸化防止剤=頭痛の原因」は都市伝説の可能性大!?
美味しいワインを飲んで楽しい時間を過ごしても、その後に襲ってくる頭痛や二日酔いは嫌なものですね。

ワインに酸化防止剤として含まれる亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ソーダ)が頭痛の原因としてよく言われますが、本当のところどうなのでしょうか。

まずは亜硫酸塩が、どのようなものなのか、みていきましょう。
ワイン裏ラベル

ワインに添加されている酸化防止剤「亜硫酸塩」ってどんなもの?

亜硫酸塩は、亜硫酸(二酸化硫黄(=亜硫酸ガス)を水に溶かした酸)を中和したものです。製品によっては亜硫酸あるいは二酸化硫黄と表示されている場合もありますが、亜硫酸塩と本質的に同じことです。ここでは今後、一括して「亜硫酸」と表記します。

亜硫酸は、食品衛生法によって使用量の最大限度は定められていますが、使用量は必要最小限に抑えることが望ましいとされています。

○日本での酒類製造における、亜硫酸使用量の最大限度
果実酒、甘味果実酒、雑種=0.35g/kg(350ppm)
その他の品目の酒類=0.03g/kg(30ppm)

国税庁のホームページには、亜硫酸は食品衛生法上の面からも品質の面からも適正かつ効果的に使用する必要があると記されています。

また、同ページには酒類製造における亜硫酸使用にあたっての留意点、注意点、亜硫酸の使用量を減らす方法などが細かく記載されており、取り扱いが厳重に管理されていることがわかります。

一方、輸入ワインはどのようになっているのでしょうか。

EU規定の最大許容量をみると、辛口赤ワイン=0.15g/Kg(150ppm)、辛口白・ロゼワイン=0.2g/Kg(200ppm)、アメリカでの最大許容量は0.35g/Kg(350ppm)となっています。

なぜ亜硫酸をワインに添加するのか?

亜硫酸の働きを大まかにまとめると4つあります。

  • ブドウをつぶす際の果汁の酸化を防ぐ
  • ブドウに付着していた野生酵母、腐敗菌などの有害微生物の繁殖を防ぐ
  • 出来上がったワインの酸化を防ぎ、ワインの寿命を延ばす
  • 発酵中の酵母の作用や貯蔵中のエタノールの酸化などで生成するアセトアルデヒドと結合して結合型亜硫酸となり、アセトアルデヒド特有の刺激臭の匂いを抑える
亜硫酸のこれらの働きがあるからこそ、ワインの色合い、味わい、コク、香りが保たれているのです。
ワインを飲む

ワインの酸化防止剤が頭痛の原因とは言えない

前置きが長くなりましたので、本題にもどります。ワインの酸化防止剤「亜硫酸」は頭痛を引き起こすのか?

これは都市伝説に過ぎないかもしれません。

亜硫酸はワインのほかに、酸化防止、変色防止、保存、防カビとしてかんぴょう、ドライフルーツ、水あめ、煮豆、エビなど広範囲の食品に使用されています。 実のところ、ドライフルーツやかんぴょうの方がワインよりも多くの亜硫酸が含まれていますので、もし、亜硫酸が頭痛の原因と考えるならば、これらの食品を摂取しても頭痛が起きるはずですが、あまり聞いたことがありませんね。

ただし、亜硫酸に対して過敏な人は、少量の摂取でも頭痛を引き起こされる場合があるようです。

ワインによる頭痛、本当の原因は?

ワインによる頭痛の原因は、多くの場合、アセトアルデヒドによるものと考えたほうがよさそうです。

アセトアルデヒドは、アルコール(エタノール)がアルコール脱水素酵素やMEOS(ミクロゾームエタノール酸化系)といったアルコール分解酵素によって分解(酸化)されることで生成される最初の代謝産物であり、体内にたまると脳の血管が拡張、三叉神経が刺激されて頭痛が引き起こされます。

アセトアルデヒドは主として肝臓で水と酢酸へと分解(酸化)されますが、「アセトアルデヒド脱水素酵素」の働きが弱かったり限界を超えたりすると、アセトアルデヒトが体内にたまりやすくアルコールによる頭痛がおこりやすくなります。

アセトアルデヒドの他にも、ワインなど醸造酒に多く含まれるアセトン、フーゼル油、タンニン、メタノールといった不純物も肝臓でのアルコール代謝効率をダウンさせる要因となり、頭痛を引き起こすと考えられています。

頭痛は酸化防止剤によるものというよりも、アルコール代謝で生成するアセトアルデヒド、つまり飲みすぎが原因と考えられそうです。「酸化防止剤無添加ワイン」を選んでも、飲みすぎると頭痛を引き起こす可能性は十分あります。

頭痛防止策として、アルコールは適量におさえ、水分を補給しながら飲酒することが対策となるでしょう。

※記事の情報は2020年8月11日時点のものです。

【参考文献】
国税庁 
東京都福祉保健局 食品衛生の窓
厚生労働省 e-ヘルスネット 
NISSHAエフアイエス株式会社
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