チョコレートの健康効果と正しい食べ方とは?

最近は、健康目的で積極的に摂る人も多い「チョコレート」。ただし、選び方・食べ方を間違うと健康を害する恐れも。管理栄養士の森由香子さんがチョコレートがもつ健康効果を詳しく解説しながら、その効果を上手に発揮させるための正しい取り入れ方をアドバイスします。

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注目高まるチョコレートの健康効果

昨日はバレンタインデー、みなさんチョコレートは食べましたか? 聞いたところによれば、チョコレートの年間消費量の2割ほどがこの時期に消費されるといいます。

バレンタインデーに限らず、間食のひととき、飲酒タイムにとあらゆる場面において、チョコレートを楽しまれている方も多いでしょう。

近年、チョコレートはカカオポリフェノールなどの健康効果が取りざたされ、日ごろから健康維持に役立てている方も増えています。私の元に栄養指導を受けにくる患者さんからも、体に良いといわれているので、それまで食べる習慣がなかったけど毎日チョコレートを食べるようにしています、と健康維持に利用する声をよく聞きます。

チョコレートはカカオ豆を原料としたお菓子です。カカオ豆の主な生産国は、東南アジア、アフリカ、中南米など。品種も様々で、その点はワインやコーヒーと似ています。

抗酸化作用のあるカカオポリフェノール

カカオ豆
チョコレートは、カカオマスと砂糖で作られるビターチョコレート=ダークチョコレート(カカオマス40%以上)、カカオマスと砂糖に乳原料を加えたミルクチョコレート、カカオマスを用いず、ココアバターと砂糖、乳原料でつくったホワイトチョコレートがあります。

カカオマスとは、カカオ豆を砕いて種皮を取り除いた胚乳部(カカオニブ)をすりつぶしたものをいい、国によってカカオリカーあるいは、チョコレートリカーとも呼ばれます。

ココアバターは、カカオ豆に含まれる油脂分のことです。融点が33.8℃、口に含むとすっと溶ける性質があります。

健康効果の高いカカオポリフェノールはカカオマスに含まれています。そのためカカオマスの含有率が高いほどカカオポリフェノールも多く含まれます。

ちなみに、あるメーカーの表示をみるとカカオ72%のチョコレート1枚(5g)で127mg、カカオ86%で147mgです。つまり、カカオ含有率が高いほどカカオポリフェノールの含有量が高くなるわけです。

「カカオポリフェノール」は抗酸化作用が高く、血圧低下、動脈硬化予防、美肌効果、アレルギーの改善、脳の活性化が期待できます。

チョコレートの栄養成分はカカオポリフェノール以外にも

ところで、チョコレートは、カカオポリフェノールの他にも栄養効果があるのでしょうか。

チョコレートには、糖質、たんぱく質、脂質と体のエネルギー源となる栄養素、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、テオブロミン、カフェイン、オレイン酸などの機能性成分などが含まれており、実に栄養成分が豊かな食品です。ですので、カカオポリフェノール以上の栄養効果が期待できます。

「テオブロミン」は、カフェインの代謝産物でもあるためカフェインの仲間に属する苦み成分です。カフェインのように神経を興奮させる作用は弱いですが、集中力や記憶力を高めたり、リラックスさせたりする効果があります。

「カフェイン」は、テオブロミンと同じように作業能力を向上させたりするほかに、眠気を覚ます興奮作用、利尿作用、運動能力の向上などの作用があることがわかっています。

「オレイン酸」は、不飽和脂肪酸の一つであり、血液中の悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)を減らして血液をサラサラにしたり、高血圧や動脈硬化を予防したりする効果があります。

チョコレートは適量を守って食べることが大切

チョコレートを食べて健康になれるのであれば、こんなに良いことはありませんが、適切な食べ方を守ることで成り立つ条件付きであることを忘れてはいけません。

チョコレートは、諸刃の剣です。

実は、チョコレートの脂質には飽和脂肪酸という悪玉コレステロール(LDL)を増やす成分が含まれています。食べ過ぎれば悪玉コレステロールを増やす原因を作ってしまいますので、食べ過ぎには気を付けましょう。

ご参考までに、厚生労働省・農林水産省による食事バランスガイドによれば、菓子・嗜好食品は1日200kcalを目安とするとあります。また、ある健康効果に関する報告では、1日5~10g程度のビターチョコレートを毎日摂り続けることが良いと考えられています。ビターチョコレート1枚(5g)は28kcal、 2枚食べても56kcalです。

そういえば、チョコレートには依存性があるという話を聞いたことがないでしょうか。

ヒトは、砂糖や油脂を多く含む食品を好む性質があり、チョコレートはどちらも含まれていること、香り、甘味、テオブロミンが脳にリラックス感、幸福感などを与えていることから依存性が高くなると考えられています。ゆえにチョコレートは嗜好品としての位置づけになっていて、お酒と同様、適量を守ることが大切な食品です。

チョコレート×お酒でアンチエイジング効果もアップ

チョコレートとお酒
栄養学的にチョコレートと相性のよいお酒はなんでしょうか。

足りない栄養素の補給という観点で考えると、栄養価の高いチョコレートは、お酒のおつまみとして適していると言えるでしょう。特に蒸留酒がお勧めです。ご存知のとおり蒸留酒は、発酵によってつくられた酒をさらに蒸留したものでアルコールの含有量が高く、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類がほとんど含まれていないからです。そのためチョコレートで足りない栄養を補うことができます。

他に、蒸留酒、醸造酒は、ともにポリフェノールが豊かに含まれています。チョコレートのカカオポリフェノールと組み合わさって抗酸化作用の働きに相乗効果が生まれ、パワーがさらにアップ、アンチエイジング的にも良い組み合わせと言えるでしょう。

ところで、チョコレートもお酒と同様に発酵食品であることをご存知でしたか?

チョコレートの原料になる収穫したばかりのカカオ豆は、バナナの葉で覆ったり、木箱に入れて発酵させます。発酵はチョコレートの美味しさに影響を与える大事な工程となり、最終的なチョコレートの味作りを決定します。発酵による化学変化により、私たちが食べているチョコレート色に変化し、独特の香りが生じるのです。

管理栄養士おすすめ! フランジェリコ×ドミニカ産カカオ70%チョコ

最近「Bean to Bar」というワードを、どこかで見たり聞いたりしたことがないでしょうか。

これは、チョコレート製造者がカカオ豆をセレクトすることから板チョコレートを作るまでの全工程を手掛けるスタイルをいいます。

あるチョコレートメーカーでは、「Bean to Bar」スタイルで、ベネズエラ、ドミニカ共和国、ブラジル、ペルーと生産国別のカカオ豆を使ったカカオ70%の板チョコレートを製造、販売しています。同時に4種類を食べ比べてみると各々がもつカカオ豆の香味、味わいが全く異なりチョコレートの奥深さを実感します。

私は、寒い日にフランジェリコ(ヘーゼルナッツのリキュール)を、小さめの耐熱グラスに注いでお湯で割って混ぜ合わせたものを、ドミニカ共和国産カカオ70%チョコレートと一緒にいただくのが至福のひとときとなっています。温かいお酒は、飲み方が自然にゆっくりとなり、それにともないチョコレートの食べ方もちょっとずつになり、たくさん飲んだり食べたりしなくても満足感が得やすくなります。

チョコレートとお酒は、節度をもっていただけば疲れた心とカラダのエネルギーや栄養の補給にもなります。適切な量を守って健康維持をはかりましょう。

※記事の情報は2021年2月15日時点のものです。
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