牡蠣は栄養がたっぷり! 肝臓にうれしい成分も? 管理栄養士が解説します!

磯の香りとまろやかな味わいが魅力の「牡蠣」。おいしいだけでなく、お酒好きな人にとってうれしい栄養もたっぷり詰まっています。牡蠣に含まれる栄養成分や、その健康効果について、管理栄養士の森由香子先生に解説していただきました。

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牡蠣は、世界中でお酒とともに楽しまれている!

冬の味覚、牡蠣がおいしい季節になりました。

世界中の人々がお酒と共にも楽しんでいる貝といえば、牡蠣が筆頭ではないでしょうか。スコットランドではウイスキーをかけたり、カナダではウォッカに浸したり、日本では日本酒で蒸し上げたりする食べ方もあります。オイスターバーを見ても、日本をはじめニューヨークやロンドン、パリなど世界各地にあり、1年中食することができますね。

実は、私は日本だけでなく海外旅行にいった際は必ずオイスターバーに立ち寄るほど牡蠣が大好物。各地の旬の生牡蠣の形状や味を比べながら楽しめるのは、オイスターバーの醍醐味のひとつです。生牡蠣をほおばった瞬間、磯の香りとクリーミーな味わいが口いっぱいにひろがり、至福のひと時が味わえます。何もつけずに食べても美味しいですが、ソースを変えて味変しながら味わうのもまた一興です。また、冬の風物詩である牡蠣小屋で、焼き上がったばかりのアツアツの殻付き牡蠣を一つひとつ開けながら、コクと旨みを堪能していくのも楽しいものです。

牡蠣のおいしさの秘密は?

牡蠣
真牡蠣は、産卵期前の冬の時期になるとグリコーゲンという糖質が増え、まろやかでトロリとした濃厚な味わいになります。さらに、旨みと甘みをもたらすグルタミン酸、グリシン、タウリンなどもグッと増え、味にさらなる深みをもたらします。

また、内蔵のぷっくりとしたやわらかい食感は牡蠣の育ち方によるものです。牡蠣は海中の岩などに定着するとそこで成長するため筋肉が発達することがなく、代わりに内蔵が大きくなっていくのです。人間も運動不足になると筋肉が発達せず、お腹がぷっくりふくらむので、ある意味似ていますね。

牡蠣の漁獲量日本一は広島県!

牡蠣棚
日本で主に流通しているのは、冬から初春に旬を迎える真牡蠣と、夏に旬を迎える岩牡蠣です。世界にはほかにも、イタボガキ、オリンピア、シカメガキ、スミノエガキ、バージニカ、ヨーロッパヒラガキなどさまざまな種類の牡蠣が存在しています。

日本の牡蠣はほとんどが養殖されたものです。漁獲量の第一位は広島県で、日本で流通している牡蠣の約6割を占めます。

ちなみに私ごとですが、広島県の江田島でおこなわれる牡蠣マラソン大会に2回ほど参加したことがあります。走った後にふるまわれるグリコーゲンたっぷりの殻付き蒸し牡蠣(食べ放題)は、完走した達成感もあいまって格別な味わいでした。因みにキャラメルの「グリコ」は、牡蠣のグリコーゲンが名前の由来です。

牡蠣は栄養価の高い食品

牡蠣
牡蠣はよく「海のミルク」と例えられますが、これはクリーミーな味わいが牛乳のようであることと、栄養価が高い食品であるためです。

実は、牡蠣のほうが牛乳よりも含有量が多い栄養素もたくさんあります。下の表をご覧ください。

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牡蠣の栄養

食品名 重量(g) エネルギー(kcal) たんぱく質(g) カルシウム(mg) マグネシウム(mg) 鉄(mg) 亜鉛(mg) 銅(mg) ビタミンB2(mg) ビタミンB12(μg)
牡蠣 養殖 生 200 116 13.8 168 130 4.2 28 2.08 0.28 46
普通牛乳 200 122 6.6 220 20 0 0.8 0.02 0.3 0.6

出典:日本食品成分表(八訂)
カルシウムやビタミンB2は牛乳のほうがやや多いのですが、たんぱく質、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、ビタミンB12は牡蠣に軍配があがっています。エネルギー量(カロリー)も牡蠣のほうが少し低いですね。牡蠣1個が50gぐらいですので、4個で牛乳一杯分以上の栄養が摂れることがわかります。

牡蠣に含まれる、注目すべき3つの栄養成分は?

上の表からもわかる通り、栄養たっぷりの牡蠣。

ここではその中でも、特に優れた3つの栄養素とその働きについて詳しく解説します。
 

牡蠣の優れた栄養素①|亜鉛

亜鉛は、200種以上の酵素の成分になっています。アルコールは酵素の働きで分解されますので、お酒好きな方は特にしっかり摂りたいミネラルです。

亜鉛は、たんぱく質の合成や遺伝子伝達、発現にも関与するほか、コラーゲンの生合成、骨の代謝、味覚機能にも関わります。また、インスリンなどのホルモンを構成する成分でもあるため、ホルモン作用や分泌の調節にも役立ちます。

ストレスを感じると、体内の亜鉛は減少します。これは、ストレスを感じた際に肝臓や腎臓で合成されるメタロチオネインというストレスたんぱくが、亜鉛と結合するためです。亜鉛が不足すると、味覚障害、性機能不全、免疫不全、創傷の治癒遅延、下痢、低アルブミン血症などが起こる可能性があります。牡蠣を食べるなどして、意識して補給するとよいでしょう。
 

 牡蠣の優れた栄養素②|ビタミンB12

ビタミンB12は、核酸の合成や、脂質やアミノ酸の代謝を促すほか、神経のはたらきを正常に保つ働きをします。

ビタミンB12が不足すると、悪性貧血が起こりやすくなります。ビタミンB12に加え、葉酸、鉄、銅を一緒に摂ることで、赤血球を効率よく形成することができます。牡蠣にはそのすべてが含まれているので、貧血予防にもぴったりです。

ビタミンB12を体内で吸収するためには、胃で合成、分解される内因子と結合する必要があります。内因子は胃粘膜の壁細胞から胃液とともに分泌されます。胃液の分泌は飲酒によって高まるのですが、逆に飲み過ぎて胃が荒れてしまわないように気を付けましょう。
 

 牡蠣の優れた栄養素③|タウリン

アミノ酸の一種で、旨み成分の一つでもあるタウリン。インスリンの分泌促進、視力回復作用、疲労回復効果に加え、肝臓や心臓機能向上作用があり、医薬品の成分としても利用されています。また、肝機能を改善、強化することで、アルコールの分解を高める効果も期待できます。

さらにタウリンには、血中のコレステロール値を下げる働きもあります。肝臓内で、コレステロールを主成分として生成される胆汁酸の分泌を促し、肝臓から血中に流れるコレステロールの量を減らしてくれるのです。

タウリンにはほかにも、病気や老化の原因となる活性酸素を消去する抗酸化作用もあります。

タウリンは熱に強いので加熱しても壊れることはありませんが、水溶性なので茹でずに酒蒸しにすると損失を抑えることができます。タウリンの恩恵を逃さず受けたい場合、生牡蠣であれば水なしパックか、殻付きを選ぶことをおすすめします。

牡蠣にあたる原因は?

牡蠣にあたったことがある方も少なからずいらっしゃると思います。冬の時期であれば、原因の一つにノロウイルスが考えられます。生食用は、定期的に行われる水質検査で細菌数の基準を満たした海域で穫れたものですが、ノロウイルスの基準は明確に定められておらず、生食用でも一定数含まれている可能性があります。

生で食べれば水溶性ビタミン(ビタミンB群)や必須脂肪酸(EPA、DHA)を無駄なく摂ることができますが、前述したように生牡蠣は4つも食べれば牛乳1杯以上の栄養が摂れますので、食べ過ぎには気を付けましょう。

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寒い日が続いております。美味しいお酒と牡蠣料理で、心も体も温まりましょう。健やかな飲酒ライフをお過ごしください。


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※記事の情報は2023年2月13日時点のものです。
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