ブランデーを自宅で美味しく味わうために知っておくべきこととは?

お酒好きが最後にたどり着くお酒とも言われるブランデー。種類や飲み方によって味わいも大きく変わるため、知れば知るほどハマる人も多いそう。奥深いブランデーの魅力や美味しい飲み方をご紹介します。

ライター:nonnon
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ブランデーとは、どんなお酒?

フランスの生産地を巡って買い付けた、こだわりのブランデーを提供するバー・ドラスの中森さんに、ブランデーの魅力や味わい方をお聞きしました。

――まずはブランデーの特徴について教えてください。

ブランデーは果実を原料に発酵、蒸留して造られるお酒です。その多くは白ぶどうを原料にしており、りんご、洋梨、さくらんぼなど白ぶどう以外の果実を使ったものはフルーツブランデーと呼ばれています。

ブランデーの最大の特徴はその芳醇な香り。ぶどうを発酵させ「ワイン」を造り、それを蒸留することでぶどう本来の香りが濃縮され、うっとりするような優雅な香りが生まれます。

アルコール度数は40~50度でウイスキーと同じくらいです。ストレートで飲むことが多いので食事と合わせて楽しむというより、単体でじっくりと味わうタイプのお酒だと思います。

――フランデーは高級なお酒というイメージがありますが?

日本ではバブルの時代に「レミーマルタン ルイ13世」に代表されるような数十万円もする銘柄が有名になってしまい、高級クラブで飲むお酒というイメージが先行してしまったことが関係していると思います。

最近では世界的にもブランデーをカジュアルに楽しもうというムーブメントがあり、ソーダやトニックで割ってカクテルで楽しむなど、飲み方のバリエーションも広がっています。

――フランデーはいつ頃から飲まれているのでしょうか?

各ブランデーで諸説ありますが、コニャックでは16世紀頃にはオランダ人が飲んでいた記録が残っています。

寒冷なオランダの気候はワインの原料となるぶどうの栽培には適していなかったため、フランスからワインを輸入していました。船で運ぶ間にワインが腐ってしまうのを防ぐため、あらかじめ自分たちで蒸留していたようです。蒸留したワインは「火を通して焼いたワイン」という意味の「ブランデヴェイン」と呼ばれ、のちに短縮されて「ブランデー」となったと言われています。

その後、イギリスにも薬効のあるハーブやスパイスを漬け込んだブランデーが輸入されるようなりました。アメリカでもブランデーは薬効があると考えられ、消化不良や滋養強壮、消毒剤などにも効く治療薬として重宝されていたようです。

ブランデーのつくり方とは?

ブランデー蒸留所
――ブランデーはどのようにつくられているのでしょうか?

種類によって若干の違いはありますが、おおむね次のような過程でつくられています。

① ワインを醸造
まず、原料となる白ぶどうを発酵させてワインをつくります。ぶどうは果皮と種子を除くために圧搾され、醸造されます。ブランデーに過剰なタンニンは不要なので、果汁のみを使用します。

② 蒸溜
ワインを蒸溜します。アルコールを含む液体を蒸溜するとより度数の高い液体になり、アルコール度数約70%という高い度数の「ブランデーのもと」が作られます。

③ 熟成
蒸溜されたブランデーはその後、樽で熟成されます。熟成には香りを引き出す効果や、アルコール度数を下げる目的があります。熟成が15~20年ほどのものは十分にアルコール度数が下がらないため、加水して度数を下げることが多く、加水の技術によって味や品質に違いが出てきます。

④ ブレンド
ブランデーは樽からそのまま瓶詰めされることはほとんどなく、熟成年数の異なる樽からブランデーをブレンドし、味を調合して瓶詰めされます。

ブランデーの種類と等級とは?

ブランデー
――ブランデーにはどのような種類があるのでしょうか?

ブランデーは世界各国で生産されていますが、生産量も多く、質の高さで知られるのがフランスで造られている「コニャック」です。ブランデーの魅力を知るには、まずはコニャックを飲んでいただきたいですね。

コニャックはフランス南西部のコニャック地方を中心とした地域で造られるブランデーです。原産地域、原料、製造法などに細かな規定があり、それをクリアしたものだけが名乗ることができる「原産地呼称制度」によって厳しく管理されています。

コニャックを生産しているメーカーは300社以上あり、生産量の8割はヘネシー、マーテル、レミー・マルタン、クルボアジェなどの大手メーカーが占めています。

残りの2割はぶどうの栽培から蒸溜、熟成、瓶詰めまですべて一貫して行う「プロプリエテール」と呼ばれる生産者によるもの。小規模生産者が多く日本では流通が少なかったのですが、最近は通販などで手軽に買えるようになり、愛飲する人も増えています。

生産地域
原料であるぶどうの生産地域も限定され、土壌の質によって6つに分類されています。水分の少ない石灰質の土壌のほうが水分を求めてより強い根を張るため、ブランデーに向いている「糖度が低く酸度が高い」ぶどうが生産できるのです。
・グランド・シャンパーニュ
・プティット・シャンパーニュ
・ボルドリ
・ファン・ボア
・ボン・ボア
・ボア・ゾルディネール
※上から順に質の高いぶどうの生産地

原料(白ぶどう)
コニャックの9割近くが「ユニ・ブラン」という品種を原料にしています。辛口の白ワインに仕上がる品種ですが、この地域で造られるものは糖度が低く酸度が高いので、ワインとして味わうのには向いていません。しかし、酸度が強いと香り成分が多く残るため、香りを楽しむお酒であるブランデーには最適なのです。ユニ・ブランのほか、フォル・ブランシェコロンバールなど品種も原材料として使われています。

製造方法
コニャックは「単式蒸留機」で2回蒸留。蒸留を重ねることで雑味がなくクリアな味わいに仕上がります。木の樽で2年以上熟成を経て出荷。製造の過程で『蒸留水』や『糖』、香りづけや色だしのための『オークチップス』『カラメル』の添加が認められています。

――フランデーにはVSOPやナポレオンという表示がありますが、これは何ですか?

昔は銘柄と勘違いしている方もいましたが、VSOPやナポレオンといった表記はブランデーの「等級」を表すものです。ブランデーの多くは熟成年数の異なる樽から調合されるので、その中で最も熟成年数の短いものが基準になります。等級は熟成年始を表わす「コント」によって決められており、熟成年数が長いほど等級も高くなります。

コントとは
コニャックは「4月1日~翌年3月末日」の周期でコントの数値が変わっていきます。コントは00~10まで12段階。コント00が熟成1年目、コント01が熟成2年目、コント10は熟成11年目となります。

ブランデーの等級
・スリースター…コント2以上のブランデー
・V.S.(Very Special)…コント2以上のブランデー
・V.O.(Very Old)…コント4以上のブランデー
・V.S.O.P.(Very Superior Old Pale)…コント4以上のブランデー
・ナポレオン…コント6以上のブランデー
・X.O.(Extra Old)…コント10以上のブランデー
・Hors d'âge(オール ダージュ)…コント10以上のブランデー

――等級が高いほど、美味しいのですか?

熟成年数が長くなるほど味がまろやかになる傾向があり、香りの良さを感じられると思います。ただ、飲む方の味の好みや飲み方によっても違ってくるので、等級だけでブランデーの美味しさを語ることはできません。等級や価格だけでなく、自分の好みや目的にあったものを選ぶのが大切です。 

ブランデーの特性を知ればもっと美味しく飲める!

――自宅でブランデーを美味しく飲むために、知っておくといいことはありますか?

ブランデーの種類によっても飲み方が違ってきますが、日本での流通量も多く、種類も豊富なコニャックの飲み方をご紹介したいと思います。

基本はストレートで飲むのがおすすめです。ブランデーは蒸溜までの過程に一切水を使っていないので、ウイスキーのように水とのなじみがよくないんです。ストレートで飲むことで、濃縮された味と香りを実感していただけると思います。

グラスに注いですぐのときはお酒が暴れている状態なので、アルコールの匂いがきつく感じることがあります。この段階で飲んでしまうと本来の味を感じられません。しばらく置いて落ち着いたところで飲み始めると、ぶどうの甘さを香りが味わえると思います。

熟成年数の長いものは香りが開いてくるまでに時間がかかるので、5分、10分と時間が経つにつれて、濃厚で優雅な香りに変化してきます。よいコニャックはグラスの残り香までも上質です。飲んだ後のグラスの香りで余韻に浸る。そんな贅沢なひと時が過ごせると思います。1杯飲むのに、30分くらいかけてじっくり楽しむことをおすすめしています。
グラスを回す
香りを楽しむ
――ストレートで飲むときのグラスはどんなものがいいのでしょうか?

熟成年数が短いものなら、くびれがあり、口が開いているタイプが最適です。ワンショットの量でも香りを十分に引き出してくれます。また、アルコールの強い刺激を和らげる効果もあります。

熟成年数が長いヴィンテージのコニャックは香りが開いてくるのに時間がかかるので、ボウルが丸く膨らんでいるクラシックなスタイルのグラスで時間をかけて香りを引き出します。最初はご自宅にあるワイングラスなどでも十分です。自分の好みが分かってきたら、それに合わせてグラスを揃えていけばいいと思います。
ブランデーグラス
熟成年数が高いブランデーにはボウルが大きい形がおすすめ
――ロックや水割りはどうでしょうか?

水割りやロックは日本では好まれる飲み方ですが、銘柄によって苦みやえぐみが出てしまうことがあります。その理由はブランデーに含まれている「エステル」という成分。香りを出すのにとても有効な成分なのですが、アルコールには溶ける反面、水には溶けないという性質があります。

そのため水分を加えると、苦味が出てしまうのです。チェイサーに水を飲んでしまうと、ストレートでも苦味が出てしまうので、うちの店ではチェイサーの代わりにアールグレイのアイスティーをお出ししています。アールグレイの香りと紅茶のタンニンが苦味やえぐみを中和してくれるんです。

ソーダ割りや水割りをお出しする際は、氷の加工など作り方を工夫することで苦味やえぐみが出ないようにしています。ただ、ご自宅ではこうした工夫は難しいかと思いますので、水割りやロックで飲みたいという方は糖分が添加されているコニャックを選んでください。甘さが加わることで苦みが抑えられ、飲みやすくなります。

 ――おつまみにはどんなものが合いますか?

甘味のあるものと相性がいいですね。ドライフルーツやチョコレートなどは定番です。コニャック地方では香りのいい赤肉メロンと合わせたりもします。お店では自家製の羊羹をアテとしてお出ししていますが、ブランデーの豊かな香りとよく合ってさらに美味しさを引き立ててくれます。

また、食後酒として飲むと消化を助けてくれる働きがあります。フレンチのフルコースなど重めのディナーの後に飲むと、胃もたれしないくいので、ぜひ試してみてください。

――自宅でも作れるカクテルはありますか?

自宅で飲むならトニック割りやソーダ割りがいいと思います。フランスでもアペリティフに「コニャックシュエップス」という飲み方を推奨しています。トニックウォーターで割っただけの簡単なカクテルですが、美味しく飲むコツがありますので、ぜひ参考にしてみてください。

トニック割り
使うのは熟成年数の短い、スリースター、V.S.やV.O.の等級のコニャックが適しています。重要なのは氷を炭酸でコーティングするというひと手間。これによって自宅でも美味しいカクテルが作れます。

① グラスに氷を入れ、炭酸水を少量注ぎ、軽くステアしてから捨てる。氷の表面に炭酸で膜をつくることで苦みやえぐみを抑えます。

② 氷に当たらないようにトニックウォーターを注ぎます。

③ コニャックを別のグラスに注ぎ、香りを開かせてからトニックウォーターの入ったグラスに注ぎます。コニャックとトニックウォーターの割合は1対2がおすすめ。
コニャックを注ぐ
④ 軽くワンステアし、オレンジの皮を絞ってグラスの側面に風味をまとわせます。こうすることで苦み成分は入らず、口をつけたときにふわっとオレンジの香りだけを感じることができます。
軽くステア
オレンジの皮で香りづけ
⑤ 完成です。
完成
コニャックの芳醇な香りにトニックの甘味とさわやかな苦味、さらにオレンジの風味も加わり、シンプルなのに複雑さのあるカクテルになっています。

おすすめのブランデー6選

初心者でも楽しめる、ソーダ割りやトニック割りにしても美味しいブランデーを、中森さんにセレクトしていただきました。

ギィ・ピナール (ファン・ボア セレクション)
BIO認定を受けたオーガニックコニャック。軽やかな飲み口とフローラルで優しい香りが特徴です。 

ジャンフィユー・コックドール
1972年にコニャックとしては初めて、フランスの美食を広める活動をしている「フランスの美食と観光委員会」から最優秀品に認定された銘柄。リムーザン・オーク樽の香りがアクセントになっています。

ラニョー・サブラン (No.4)
乾燥した熟成庫と、湿度の高い熟成庫で眠っていたそれぞれのコニャックを絶妙にブレンド。フルーティーで可憐な味わいが楽しめます。

レイモン・ラニョー セレクション
最高の土壌とされるグランド・シャンパーニュに広大なぶどう畑を所有する造り手の逸品。「繊細さの両極を見事に調和させた、最高にバランスのよいコニャック」と評価されています 

ポール・ジロー トラディショナルセレクション
湿度が高い熟成庫を使用しているため、アルコール度の低下が早くなり、熟成期間が短くても加水しないのが特徴。濃厚なぶどうの味わいが楽しめます。

ドルーエ VS
フレンチオークの新樽で6~12ヵ月熟成させた後、古樽でさらに熟成を行っています。純粋で素直なフローラルが魅力の飲みやすい味わい。

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香りを楽しむブランデーは時間をかけてじっくりと味わいたいお酒。自宅で過ごす時間が増えた今だからこそ、家飲みのラインナップにブランデーを加えてみてはいかがでしょうか?
 

この方にお聞きしました

「BAR DORAS」オーナーバーテンダ 中森保貴さん

「DORAS(ドラス)」とはヨーロッパの言葉で「扉」という意味。その名前の通り、世界中を旅し地元にしないお酒を買い付けて紹介しています。著書に「旅するバーテンダー」ほか。

中森保貴さん
※記事の情報は2020年5月21日時点のものです。
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