果実酒用”ホワイトリカー”とは? 基礎知識や使い道を深堀りします!

ホワイトリカーはなぜ果実酒のベース酒としてよく使われるのでしょうか? また、果実酒にしなくても飲むことのできるお酒なんでしょうか? 基礎知識から意外な楽しみ方まで、日本蒸留酒酒造組合の内山さんに詳しく教えていただきました。

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果実酒づくりの定番酒“ホワイトリカー”とは?

自家製果実酒を楽しむ方にはお馴染みの「ホワイトリカー」。旬の時期になるとスーパーなどで梅や保存瓶と一緒に“果実酒用ホワイトリカー”と書かれたお酒が並んでいるのを見かけますが、実はどんなお酒かよく知らない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、ホワイトリカーを製造販売する酒造メーカーが多数加盟している日本蒸留酒酒造組合の方に、ホワイトリカーの基礎知識や活用方法などを詳しく教えていただきました。

教えてくれたのはこの方

日本蒸留酒酒造組合 内山 功さん

焼酎甲類又は合成清酒を製造する酒類製造業者で組織されている「日本蒸留酒酒造組合」。本部(東京都中央区)のほか、全国に7つの支部(北海道、東北、関東信越、東京、中部北陸、西日本、九州)を設置しており、焼酎甲類の需要開発(PR)、酒類の公正取引の推進、組合員への酒類行政情報の伝達などの業務を行っている。

内山 功さん

ホワイトリカーの基礎知識①┃ホワイトリカーはどんなお酒?

―ホワイトリカーというと“果実酒を漬けるためのお酒”というイメージがありますが、まずは定義を教えていただけませんか?

ホワイトリカーという名称は法律(酒類業組合法)によって認められた焼酎の呼称です。したがって、ホワイトリカーはお酒としては焼酎そのもののことです。焼酎は、穀物や糖類などに由来するアルコール含有物を蒸留してできる酒類のうち、他の酒類(ウイスキーやブランディーなど)に該当しないもののことを言います。

焼酎には、連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)と単式蒸留焼酎(焼酎乙類)があり、ホワイトリカーの呼称はどちらにも使えますが、実際にホワイトリカーとして販売されているお酒は焼酎甲類が多い印象です。

なお、単式蒸留焼酎のうち一定の条件を満たすものについては、本格焼酎や泡盛などの呼称も認められています。

─ホワイトリカーとして店頭に並んでいるのは焼酎甲類が多いとのことですが、焼酎乙類のホワイトリカーとの見分け方はあるのでしょうか?

パッケージに書かれた情報を見ていただければひと目で分かります。焼酎甲類は「ホワイトリカー①」、焼酎乙類は「ホワイトリカー②」と表示するよう酒類業組合法で定められています。
パッケージに書かれた情報

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ホワイトリカーの基礎知識②┃ホワイトリカーの歴史

─そもそも、ホワイトリカーという名称はいつ頃から使われるようになったのですか?

焼酎甲類がつくられるようになった明治43(1910)年頃はまだホワイトリカーという言葉は使われていませんでした。その後、当組合の前身である「日本蒸留酒酒造組合中央会」が昭和38(1963)年頃から焼酎甲類の愛称をホワイトリカーとしたことが記録に残っています。

─ホワイトリカーという愛称が広まり、それが品目表示として認められたのはいつ頃のことでしょうか?

昭和46(1971)年に関係法令が改正され、「ホワイトリカー」が品目として表示することが認められるようになりました。 

ホワイトリカーの基礎知識③┃ホワイトリカーの味わいは? なぜ果実酒をつくるのに向いている?

─ここからは、梅酒や果実酒のレシピでよく見る“果実酒用ホワイトリカー”についてお聞きします。果実酒用ホワイトリカーは焼酎甲類のものが多いというお話でしたが、香りや味にはどんな特徴があるのか教えてください。

焼酎甲類のホワイトリカーは、焼酎甲類自体がアルコールをつくる能力の高い連続式蒸留という蒸留方法で製造されるため、原料由来の香りや味はほとんど残りません。したがって無味無臭に近く、無色透明、ピュアでクセのない味わいが特徴です。

─そういった特徴が、梅酒などの果実酒づくりにも向いているということなのでしょうか。

そうですね。果実酒づくりに最適なお酒だと思います。

果実酒は漬け込む果実が持つ甘みや酸味、香りを十分に楽しめるのが醍醐味ですよね。そのため、果実酒に使われる多種多様な果実の味わいを邪魔せず、果実が持つ色も活かすことができるので、果実酒用ホワイトリカーは適役というわけです。

ホワイトリカーの基礎知識④┃果実酒用ホワイトリカーはアルコール度数35度のものが多いのはなぜ?

─焼酎甲類は一般的に20度や25度のものが多いですが、スーパーなどに並んでいる果実酒用ホワイトリカーはほとんどがアルコール度数35度のものです。これには何か理由があるのでしょうか?

果実酒用ホワイトリカーは、その名の通り果実酒に使用されることが多いお酒です。35度という高いアルコール度数にすることで、果実の成分の浸出を早めるとともに、カビや味わいの劣化を抑えたり、出来上がった果実酒の保存性を高める効果もあるんです。

─アルコール度数をより高く、36度以上にした果実酒用ホワイトリカーはありますか?

焼酎甲類のアルコール度数は36度未満と酒税法で決まっているので、焼酎甲類のホワイトリカーの場合、36度以上のものはありません。

ホワイトリカーの基礎知識⑤┃果実酒用ホワイトリカーの代用品は? 梅酒に使えるお酒いろいろ

梅を漬ける
─果実酒用ホワイトリカーが果実酒づくりに向いていることがよく分かりましたが、それ以外のお酒でも果実酒を漬けることはできるのでしょうか?

可能ですが、注意点があります。ご家庭で果実酒を漬ける場合、ベースとなるお酒はアルコール度数20度以上のものであることが酒税法により定められています。また、ぶどうや穀類などと一緒に漬けてはいけません。そのため、果実酒用ホワイトリカー以外のお酒を使用する場合にも、アルコール度数20度未満のお酒は代用品として使用することはできません。

─例えば梅酒を漬けるなら、果実酒用ホワイトリカー以外ではどんなお酒が向いていますか?

そうですね、アルコール度数20度以上の蒸留酒が向いていると思います。ブランデーやウイスキー、本格焼酎などです。また、醸造酒でも梅酒用の清酒はアルコール度数20度以上のものもあるので、そういったお酒は果実酒に使用することができますよ。

ホワイトリカーの基礎知識⑥┃ホワイトリカーの賞味期限と保存方法、劣化のサインは?

─果実酒用ホワイトリカーには賞味期限はありますか?

ホワイトリカーは蒸留酒なので、基本的に賞味期限はありません。ただし、環境などにより酒質(お酒の品質)が変わることはありますので、正しい保存方法で保管していただくというのが大切です。

─どんな保存方法がおすすめですか?

光(特に紫外線)や高温、酸素は酒質に影響を与えます。そのため他のお酒と同様に、直射日光や蛍光灯などの光が当たらない涼しい場所で、蓋をしっかりと閉めて保管してください

─夏は気温が高く、保管場所の室温も高くなってしまうこともあると思います。常温保管で大丈夫なんでしょうか?

ホワイトリカーはアルコール以外の成分が少ないため、保存中の変化が少ないお酒です。そのため先ほど申し上げたような方法で保管していただければ、常温での保管が可能で、通常は年数が経っても飲めなくなることはありません。

─飲んでも大丈夫な状態のお酒か、たしかめる方法はありますか?

お酒全般についての一般的な判断基準としては、以下のような状態のお酒は飲まない方がいいとされていますので参考にしてみてください。

■飲まない方がいい状態になっているお酒の見分け方
【におい】

アルコールの香りではなく、ツンと鼻をつくようなすえたにおいがしたとき。

【見た目】
においに問題がなくても、透明なグラスに注いでみて、お酒の色が黒っぽく変色していたとき。劣化が進んでいるサインです。

【味】
においと見た目に問題がなくても、少量を口に含んでみて、お酒ではなくお酢のような味がしたとき。

ホワイトリカーの基礎知識⑦┃ホワイトリカーの果実酒以外の飲み方や使い道は?

ホワイトリカーで作るサワー
─果実酒用ホワイトリカーは果実酒を漬ける以外で楽しむ方法はありますか?

もちろんあります。果実酒用ホワイトリカーも、他の焼酎甲類と同じようにさまざまな飲み方をしていただけますよ。

例えばカクテルのベース酒として使ったり、ホワイトリカーと炭酸でチューハイをつくったり、さらにお好みの果実(レモン、グレープフルーツ、パイナップル等)の果汁を合わせてサワーとして楽しむこともできます。また味や香りにクセがないので、ウーロン茶や緑茶で割ってもおいしいんです。

他にも、飲み方ではありませんが、にんにくや唐辛子を漬け込んで料理の隠し味にする、という使い方もあります。

ホワイトリカーの基礎知識⑧┃果実酒用ホワイトリカーでチューハイを作るときは割合に注意!

─果実酒だけでなく、ホワイトリカーを色々な飲み方で試してみたくなりました! 果実酒用ホワイトリカーでチューハイを作る場合、注意点はありますか。

一般的な焼酎甲類よりもアルコール度数が高いので、お酒と割り材の割合に注意していただきたいです。例えば焼酎1:水4の割合で作った場合、アルコール度数の20度の焼酎を使うと4度の水割りになり、35度の果実酒用ホワイトリカーを使うと7度の水割りになります。

■比率・焼酎別 アルコール度数早見表(イエノミスタイル編集部で試算)
お酒 割り材 それぞれのお酒で割った場合のアルコール度数
果実酒用ホワイトリカー 35度 焼酎 25度 焼酎 20度
1 5 5.83度 4.17度 3.33度
1 4 7度 5度 4度
1 3 8.75度 6.25度 5度
3 7 10.5度 7.5度 6度
1 2 11.67度 8.33度 6.67度
4 6 14度 10度 8度
5 5 17.5度 12.5度 10度

─出来上がりのアルコール度数には気を付けないといけないですね。

ただこれは、割り方によってはメリットにもなり得ます。果実酒用ホワイトリカーをベース酒にすると、20度の焼酎で割った場合などと比べて割り材をたっぷり使えると考えることもできるんです。同じアルコール度数のチューハイをつくろうとした場合には、炭酸が増えて爽快感を強めることができたり、果汁の割合が増えてよりフルーティーな1杯を味わえますよ。

─なるほど、使い方次第で楽しみ方も広がりますね。ストレートで飲むのはどうでしょうか?

ストレートやロックでもお飲みいただけます。その場合は、チェイサーをご用意くださいね。

どんなお酒にも言えることですが、適量*を守ることが何より重要です!

*厚生労働省が策定した「健康日本21」では、「節度ある適度な飲酒」は1日平均、純アルコールにして約20g程度とされています。アルコール量は、酒量(ml)× アルコール度数(%)/100 × 0.8(アルコールの比重)で求めることができ、これをホワイトリカー(35度)に当てはめた場合、1日当たりの適量は70ml程度となります。

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【おまけ】果実酒用ホワイトリカー3種を飲み比べてみた! 味の違いは分かるのか?

果実酒用ホワイトリカーは、他の甲類焼酎と同じように飲むことができると知って、さっそく試してみたくなったイエノミスタイル編集部員たち。

果実酒用ホワイトリカー3種を用意して、プチ試飲会を開催してみました!
果実酒用ホワイトリカー3種
■用意したのはこちらの3種
①宝酒造 ホワイトタカラ「果実酒の季節」
②サントリー ホワイトリカー
③アサヒビール ホワイトリカー ダイヤ

果実酒用ホワイトリカー試飲会①┃宝酒造 ホワイトタカラ 果実酒の季節

宝酒造 ホワイトタカラ 果実酒の季節
容量:1.8L
参考小売価格:1,745円(税別)
アルコール度数:35度
編集部員H

編集部員H

1本目は宝酒造 ホワイトタカラ 果実酒の季節です。無味無臭で、素材の味・色・香りをおいしく引き出してくれるホワイトリカーとのことですが、まずはストレートで飲んでみてください。

 編集部員R

編集部員R

このパッケージ、果実酒用ホワイトリカーの中では一番よく見る気がします。飲みごたえのありそうな、アルコールの香りがしっかりとしますね。

編集部員E

編集部員E

飲んでみると香りはそんなに気にならないです。少しとろりとした舌触りで、ほのかに甘みがあります。

編集部員H

編集部員H

アルコール度数が高いせいか後味が残らず、スッと消えるのが清々しくてさわやか。炭酸割りにするとさっぱりとしたプレーンチューハイになりますね。

果実酒用ホワイトリカー試飲会②┃サントリー ホワイトリカー

サントリー ホワイトリカー
容量:1.8L
希望小売価格:1,640円(税別)
アルコール度数:35度
編集部員H

編集部員H

続いて2本目はサントリー ホワイトリカーです。果実のおいしさをそのまま引き立てるニュートラルタイプで、純水仕上げによりさらにすっきりとした味わいですとのことです。1本目との違いは感じられるのでしょうか?

編集部員E

編集部員E

あ、違いがあります! ①と比べるとアルコールの香りが控えめです。

 編集部員R

編集部員R

①はとろりとしてましたけど、こちらはサラッと軽やか。以前飲んだ白酒と飲み心地が似ている気がします。私はこれ結構好きかも。

編集部員A

編集部員A

本当だ。甘みもほとんどなくて、まさにすっきりですね。

編集部員H

編集部員H

こちらは炭酸割りにすることで少しアルコールの香りを感じやすくなりました。

果実酒用ホワイトリカー試飲会③┃アサヒビール ホワイトリカー ダイヤ

アサヒビール ホワイトリカー ダイヤ
容量:1.8L
希望小売価格:1,640円(税別)
アルコール度数:35度
編集部員H

編集部員H

ラストの3本目はアサヒビール ホワイトリカー ダイヤです。マイルドですっきりした味わいで、ホームメイドの果実酒づくりに適した焼酎とのことですが、こちらはいかがですか?

編集部員E

編集部員E

香りも味も、他のふたつに比べると苦みを感じるかも?

 編集部員R

編集部員R

この苦みが、どことなくジンみたい。炭酸割りにしても一番ドライな味わいです。

編集部員A

編集部員A

甲類焼酎の飲み比べをしたときも味の違いがあって驚いたけど、果実酒用ホワイトリカーも結構味の違いがあるんですね。

編集部員H

編集部員H

それぞれ特徴がありつつも、どれも飲みにくさやクセは感じませんでした。炭酸など割り材を使うことで、より飲みやすくなりますね。


***

果実や割り材の風味を引き立てるのが上手なホワイトリカーは、果実酒のベースとしてはもちろん、チューハイやサワーのベース酒として飲むこともできるお酒でした。果実酒を漬けてホワイトリカーがあまったときには、家飲みに活用してみてはいかがでしょうか?

※記事の情報は2023年5月19日時点のものです。
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