酒好きほぼ100人に聞いた「酒造業の新規参入ラッシュ」知っていますか?

国内の酒類消費量は減少傾向が続いていますが、近年、成長分野の酒類製造免許は続々と下付され、酒造業は新規参入ラッシュとなっています。今回の酒好きほぼ100人に聞く「酒飲みのミカタ」は急増する酒造業について聞きました。

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どんどん増える酒類メーカー

最初に新規に下付された酒類製造免許の推移を確認します(グラフ1)。2014年に71だった新規の酒造免許は年々増加し、2022年は298と4倍以上です。累計では1611になり、過去9年間に新規で取得した免許場が全酒類免許場の13%を占めています。
グラフ1 新規酒類製造免許数の推移

最多はクラフトビールブルワリー

内訳をみると最も多いのは発泡酒で518場(32%)、次が果実酒(ワイン)の283場(18%)、そしてリキュールの224場(14%)です。発泡酒免許の増加は、クラフトビールのブルワリーのスタートアップでは、最低製造数量が年間6KL(ビールの10分の1)と低い発泡酒免許を選択することが多いためです。
グラフ2 新規酒類製造免許の酒類別構成比
TOSACOビール
クラフトビールが大好きで土佐にIターンしてブルワリーを起ち上げた「TOSACOビール」
酒専門店の籠屋秋元商店
酒専門店の籠屋秋元商店は日本ならではのビールを造ろうとブルワリーを併設した直営レストランを開業

ワイナリーも各地の続々誕生

果実酒免許は長野や北海道など各地でブドウの栽培から取り組むワイナリーが続々と立ち上がっていることに加えて、リンゴ農家がシードル製造に乗り出す例も散見され免許取得が加速しています。
長野県東御市のアルカンヴィーニュ
長野県東御市のアルカンヴィーニュは、ワイナリー開業希望者の育成を目指して開業
ブドウ栽培
自分でブドウ栽培から醸造までおこなうドメーヌ型のワイナリーの開業が多い。果樹栽培農家の高齢化に悩む行政は、こうした動きを歓迎し、サポート体制を整えるところも少なくない

梅酒や薬草酒の製造にも新規参入

リキュール免許は清酒や焼酎のメーカーが取得し商品ラインナップを拡充する例が目立ちますが、梅産地などでリキュール特区が設けられたり、個人で薬草リキュールの製造に乗り出したりする動きが出ています。
金ヶ崎薬草酒造
金ヶ崎薬草酒造(岩手県)はリキュール製造免許で薬草酒の製造を開始
ボタニカルの多くを自ら栽培
薬草酒づくりに使うボタニカルの多くは自分で栽培する

ジン&ウイスキーの蒸留所は急増

2018年以降のスピリッツ免許とウイスキー免許の増加の背景には、クラフトジンやジャパニーズウイスキーの人気の高まりがあります。焼酎メーカーの事業拡張が目立ちますが、異業種からの参入や海外資本が投資する例も見られます。
遊佐蒸溜所
山形県の甲類焼酎メーカーが稼働させた遊佐蒸溜所
北海道自由ウヰスキー㈱ 紅櫻蒸溜所
札幌以内の私設公園内にある北海道自由ウヰスキー㈱ 紅櫻蒸溜所
表1 新規製造免許取得者数推移

参入ラッシュの認知はビール類がトップ

さて、アンケートでは酒類製造免許の新規取得増の認知を、種類別に聞いてみました(グラフ3)。もっとも認知率が高かったのは「ビール類」で約7割が認知していました(「よく知っている」と「知っている」の計)。ワインは6割弱、ウイスキーは5割強です。

全国に酒造特区が180弱と最も多いどぶろくは新規免許(その他の醸造酒製造免許)の取得数が9年間で115ありますが、増加していることの認知率は4割にとどまりました。実際の増減だけでなく、アンケート回答者がふだん親しんでいる酒類や、関心を向けている酒類で認知率が高まっていると思われます。
グラフ3 製造免許の新規取得数増加への認知度

まだまだ低い飲用経験

次に新規に参入した生産者の商品の飲用経験を聞いたところ、ビール類が群を抜いて高く5割弱、ワインとウイスキーが約3割、どぶろくが2割でした。新規参入した生産者は概して小規模で、生産量が少ないため販売ルートも限定的です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアには並ばず、買いにくいことが飲用経験率の低さの理由でしょう。
グラフ4 新規製造免許取得者商品の飲用経験

新規参入がない清酒と本格焼酎

ところで、清酒と本格(単式蒸留)焼酎の最近9年間の新規の製造免許はそれぞれ14場、32場とわずかです。内容も既存業者の工場や蔵置所の設置に伴うもので、ほとんど新規参入がありません。このことについて聞いた質問では、認知していた(「よく知っている」と「知っている」の計)のは43%でした。
グラフ5 清酒と本格焼酎の新規製造免許が出ないことへの認知度
ねっかの水田
本格焼酎で新規参入した「ねっか」(福島県)
本格焼酎で新規参入した「ねっか」(福島県)は地域の特産品を原料にすることで製造が許可される特産品しょうちゅう製造免許。農業法人の有志が立ち上げた

続けて「清酒製造免許が新規で出ないため、『その他の醸造酒』の製造免許でクラフトサケ(どぶろくや副原料を使用するなどしたSAKE)を製造していることを知っているか」と質問したところ、認知していたのは38%でした。ただし、その内「よく知っている」と回答した人は12%にとどまり、酒好きな回答者の間でもまだ詳しくは知られていないことがわかります。
グラフ6 その他の醸造免許でのクラフトサケ製造の認知
クラフトサケブリュワリー協会
その他の醸造酒製造免許でSAKEづくりをスタートした醸造所はクラフトサケブリュワリー協会を設立した

酒造免許の自由化に賛成の声多数

新規に酒造免許が下付され酒造業への参入が活発になることについて寄せられたコメントは、歓迎する声がほとんどで「活性化につながる」「選択肢が増えて楽しい」ことが理由として挙げられていました。ただし、零細な新規参入者の事業継続を不安視する声や衛生面や安全面での監視の必要性を指摘する声も聞かれています。また、清酒と本格焼酎の製造免許が新規に下りないことについては、緩和を求める意見が多数寄せられました。

「ウイスキー蒸溜所の誕生は魅力的だが、海外原料100%なものはどうかと思います。清酒は規制緩和すべきだと思います」(男性:30代)
「新しい酒造メーカーが増えるのは良いことだと思う。既存のメーカーを守る意味もあるのかもしれないけれど、新規取得はしやすい方が良いと感じる」(男性:30代)
「ワインやビールの醸造所が増えていることは新聞などで知っていましたが、酒屋さんで見ないので、あまり実感がありません。消費者としては、選択肢が増えることだけでなく、酒屋さん、チェーンのリカーショップなどでどれだけ新しいものが目に入るかというのが重要ポイントだと思っています」(女性:40代)
「競争が起こり、品質が良くなると期待したいが、今ある酒造が、どれだけ生き残れるかは疑問。今となっては業界の成長を阻害しているように感じる。その分、今の造りに慢心している蔵も多いのでは無いかと感じる」(男性:40代)
「消費者にとって選択肢が増えるのは良いことだと思うが、質の担保のためにはある程度(の規制は)やむを得ない面もある」(男性:40)
「(酒造メーカーの)増加により従来のビジネスモデルが変化してきていることは既存のメーカーへの良い刺激になっていると感じでいます。ただ、新規参入企業増加初期はブルーオーシャンだったかも知れませんが、現在はブランドの差別化が難しくなり、レッドオーシャン化しているように思います。資金力、技術力、マーケティング力といった基礎体力を欠いた企業は淘汰されるのでは」(女性:40代)
「供給過多で共倒れにならないか心配。(一定の規制は)粗悪品の抑止になり得るので良い事だと思う 」(男性:50代)
「(製造免許の条件に)最低製造量を設けられているが、厳密に適用したら既存酒蔵は何社生き残れるか?新しい息吹を認めない業界は遅かれ早かれ無くなるだろう」(男性:50代)

【調査概要】
調査期間2023年6月3日~7日/有効回答137人(酒好きな人)/ネットアンケート調査


※記事の情報は2023年7月6日時点のものです。

   

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