5℃ごとに違う日本酒の名前と味わい、知ってますか?

日本酒とフレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する日本酒ラヴァー、簗塲友何里(やなば ゆかり)さん。家で飲む日本酒の魅力と楽しみ方を、ゆるりと綴っていただきます。今回は、日本酒の温度と味わいについて。

ライター:簗塲友何里簗塲友何里
メインビジュアル:5℃ごとに違う日本酒の名前と味わい、知ってますか?

これが日本酒ワールド。温度違いによって10種類もの呼び方が!

みなさん、日本酒、飲まれてますか?日本酒は世界的に見ても独特のお酒、知っているようで実は知られていない日本酒の魅力をゆったり、お伝えしていきたいと思います。
今回のテーマはお酒の「温度」。温度飲むの変化により様々な味を楽しめちゃうのが、日本酒の醍醐味のひとつです。世界で唯一、温めることで良さを引き出し、香りや味わいが変化するお酒が日本酒なんです。

日本酒には温度の違いでなんと、10種類もの呼び方があります。日本人のセンスの良さが発揮された、どれも素敵な呼び方です。
温度の低いほうから…

雪冷え 5℃
花冷え 10℃
涼冷え 15℃
冷や (常温)  20℃
日向(ひなた)燗 30℃
人肌燗 35℃
ぬる燗 40℃
上燗 45℃
熱燗 50℃
飛び切り燗 55℃

5℃の雪冷え、55℃の飛び切り燗

では、それぞれの味わいはいったいどうなの?気になりますね?まずは一番冷たい温度と熱い温度で比べてみましょう!

まずは雪冷え、5℃! 日本酒を氷水で冷やし、5℃の雪冷えにした状態は、最初に苦味が来つつも、スッとお酒が口の中に入ってきたあと、口の中で温度が上がるにつれて旨味、甘味が現れて来て、その後きれいに消えて行きます。

では、逆に飛び切り燗の55℃では? 80度のお湯で湯煎して飛び切り燗にしてみました。すると同じお酒とは思えない香りと味わい! 酸味がまず来て、旨味が追いかけてきます。その穏やかで、少々おとなしくなった感じが、燗酒でよく言われる「香りと味が飛んだ」という表現どおり。これはこれでおいしい。

温度によって味わいさまざま

では5度刻みで味わったら、どんな味わいの流れが出てくるのでしょうか?
温度による味わいの変化は、日本酒の種類によっても異なります。今回は、火入れの穏やかな純米酒で比較してみます。

花冷え、10℃ぐらいはキリっとしつつも、口内でしだいに香りが開いて、おいしい冷酒として楽しめます。雪冷えよりは酸味が目立ち始め、味に複雑性が出てきます。

冷や、日向燗、人肌燗など、人の体温に近い温度は、口の中に含んだ際にも温度変化があまりなく、味の変化も穏やか。あまり印象は強くないですが、素直な「素の味わい」が楽しめます。

上燗45℃、来ました! 今回の純米酒では、私的に、最も好きな温度帯でした。穏やかでリラックスできる飲みくち。優しい香りもしつつ、旨味もしっかり感じつつ、余韻も長くて消えないうちにまた一口飲みたくなる、飽きずにゆるゆる飲み続ける系です。おいしいです。

熱燗50℃。香りは上燗よりもさらに穏やかで、丸みのある優しい味わいです。とってもバランス良し。

55℃の飛び切り燗を超えて、60度になると、香りもだいぶ飛んできます。ここまで来るとちょっとやりすぎ感あり。

ぬる燗以上の、いわゆる「お燗」した状態は、日本酒の種類で何度まで上げるか、どのようにお燗を付けるかが大きく味を左右します。基本的に香りの成分は温度を上げると飛んで弱くなっていきますが、日本酒によっては50度以上で再び香ばしさが戻り、意外な味わいに変化したりもします。
同じ日本酒でも、飲む温度によって、香りの強さも変わり、苦味や旨味、甘味や酸味などを感じる順番も変わってきたり、同じお酒とは思えない複雑な味わいの違い楽しめます。これが日本酒の奥深さです。ぜひ、いろいろな日本酒を色々な温度で召し上がって、好きなお酒の好きな温度を見つけてくださいね。
温度によって味わいさまざま

暑い季節だからこそ、燗酒もどうぞ

今年の夏はいつにもまして猛暑だそうです。ついつい冷たい飲み物が欲しくなりますね。きりりと冷やした冷酒は飲みやすくて、これからの季節にはぴったり。でも、冷たい物で疲れた胃腸には、逆に温かい、お燗のお酒は優しく感じるかと思います。

夏だからこそ、冷たいお酒ばかりではなく、お燗酒もおすすめです。色々な温度で、日本酒の奥深さにぜひ、触れてみてください。家飲みだからこそできる、日本酒の楽しみです。


※記事の情報は2017年7月24日時点のものです。
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