白央篤司のつまみ暦vol.2~初夏の旬つまみ~
フードライターの白央篤司さんが、ショートエッセイと共に季節の晩酌をお届けする「つまみ暦」。食材のおいしさを引き出す楽しみ方は、今日からでも真似したくなるはず! 春から夏への移り変わりを感じるこの時期、白央さんの食卓には、色鮮やかでみずみずしいおつまみがずらりと並んだようです。

本日、家飲み日和


食べるとき、すりごまとしらすをまぶし、軽く和えて出す。こうすると、ドレッシングとトマトがよく絡んで、“アテ”としてグンと良くなるから。湯むきが面倒ならば、ドレッシングにすりごま、しらすを入れて混ぜたものを、刻んだトマトにかけて食べるのでも構わない。これからの暑い時期、真っ赤なものがひとつ卓にあると目から元気をもらえるような気になる。
ちなみに黒酢は岐阜・内堀醸造の「臨醐山黒酢」を愛用している。なんとも食欲を誘う香りで、酸味はしっかりだけど当たりがきつくなく、まろやか。餃子や焼売に使うのもすごくいい。
香り高く、爽やかに楽しむ旬の味

今回はライムを絞り、さらにシェリービネガーを少々ふって風味づけをした。好みで刻んだイタリアンパセリやディルを散らすとなおいい。飲みやすい白ワイン、あるいは冷やした日本酒を合わせたいところ。十代の頃、ヘミングウェイを読んでこういうつまみにえらく憧れた。

夏の家飲みで毎度のように作ってしまうのが、これだ。とにかく薬味をどっさりのせて、そこにちりめんじゃこか、桜えびをのせる。さっきのトマトでしらすを使ったので、今回は桜えびにした。薬味は刻んだ青ねぎ、かいわれ菜。かいわれ菜のツンとした辛みは酒のアテにいいものだと思う。
薬味は他にみょうが、クレソン、あるいはピーマンを細かく刻んだのもいい。味つけはおろしぽん酢でも、しょうが醤油でも、あるいは熱々にしたごま油に塩でも。オリーブオイルに醤油を1:1というのもなかなかオツな味になる。
ちりめんじゃこやしらすは余った分を冷凍しておけば、飲みたくなったときすぐ使える。解凍などせず、冷奴にそのままのせて醤油でもかければいい。ビールなど用意している間に、自然に溶けて一品になる。

いちじくは熟々ものを選び、皮をむいて半分に切ったら、少々の赤ワインビネガーと塩で軽くマリネして、冷蔵庫で冷やしておく。いちじくと同じぐらいの大きさに割いたモッツアレラチーズを添え、ミントを散らし、濃いめのオリーブオイルをまわしかけ、塩と黒こしょうをぱらりで完成。これもうちの初夏の味、ロゼワインか軽めの赤なんかとよく合う。
今回はアスパラ、トマト、いわしに豆腐、いちじくといった食材に自然と手がのびた。ただゆでるだけでも、旬のものはおいしい。そして合わせたくなったのは黒酢などのビネガー類に柑橘のライム、そして薬味あれこれ。
これからの季節、とにかく暑いし、蒸し暑くて眠れず、疲労が溜まって体がスッキリしない、食べる気が湧かない…なんてとき、酸味は食欲をほどよく刺激してくれるし、体にいい活力を与えてくれるようにも感じる。だが酸っぱさがきついとつらいから、はちみつを合わせたり、あるいはフルーツのマリネに使ったり。ホワイトバルサミコみたいな、酸味の穏やかな酢を使うのもおすすめだ。
豆腐、あるいは素麺などの出番が多くなるこれからの時期、せめても薬味はどっさり使って、野菜をとりたい。そんな思いのあれこれが、六月のつまみ録には自然とあらたれたなと思いつつ、今月はここまで。
さて、また飲み直しますか。
※記事の情報は2025年6月24日時点のものです。
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