フランスでのフランス人による日本酒コンテスト 「Kura Master」体験記

日本酒と発酵フレンチのお店「SAKE Scene〼福」を経営する簗塲友何里(やなば ゆかり)さんのお酒コラム。今回は、フランス人による日本酒コンクールのお話です。

ライター:簗塲友何里簗塲友何里
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フランスの日本酒コンテスト?

最近、日本酒の輸出が伸びていると話題になりますが、実際どうなのか? 日本酒人気が高まるフランスで、実際に体験してきました。
フランスで今年5月に行われたフランス人による日本酒コンテスト「KuraMaster」をお手伝いしてきたのです。私は、東京浜松町で、発酵フレンチと日本酒のレストランを経営していますが、同時に株式会社SAKESceneとして海外での日本酒のPRや、輸出、現地での販路開拓を始めていて、その活動の一環でした。昨年、今年と、この画期的なコンテストに携わり、見て感じたことをリポートします。
日本酒人気が高まるフランスで、実際に体験してきました。

盛り上がった「Kura Master 2018」

さて、第二回目になる今年は、昨年の評判の高さもあり、規模も内容も拡大されていました。エントリーした日本酒たちは、日本からブラインド用の中身が見えないシルバーの袋に入れられ、ナンバリングされてからフランスに輸入されます。フランス側では、どれがどの日本酒かは不明な状態ですね。今回のエントリー数は、なんと、約650銘柄でした! このコンテストのために日本から輸出され、さまざまな蔵が期待を託してエントリーしたのです。
こうして輸入された日本酒がズラリ並んでいるコンクール会場は、ここが、フランスのパリだとは信じがたい奇跡の光景に見えました。そして、これら膨大な日本酒を審査するために集まった審査員は、昨年の倍近い58人! 昨年よりもさらに影響力のある方々が集結しました。3、2、1星のフレンチレストランや高級パレスホテルのソムリエ達が集まった姿は壮観のひとこと。日本酒という未知のお酒の審査から、しっかりと販路に繋げるぞ! という意気込みも感じられます。審査中のディスカッションも長く、皆さんの日本酒への向き合い方、意識の高さが感じられました。
審査後のレセプションでの有料試飲会もかなりのフランス在住の方があつまり、日本での試飲会さながらの、人々の熱気に包まれていました。そこでもこのコンテストの注目度の高さを感じました。
このコンテストの注目度の高さを感じました。

スピーディなテイスティング

第一回目の昨年は、審査のお手伝いもさせていただき、貴重な体験をしました。初回ということもあって、コンクール当日は、審査の前に、審査員の方々に日本からいらした酒造組合中央会の先生などから講義がありました。これは、日本酒の基本的な情報、ワインとの違い、ティスティングでは香りより味わいが主体、といった、私が聞いていても大変勉強になる内容だったのを覚えています。

今回私は、6人の審査員が座るテーブルに付き、ティスティングのお手伝いをしました。審査員長のHotel du Clyonのシェフソムリエ、グザビエ氏がいるテーブルでした。彼は「各日本酒もどれほど食事に合うかを考えながら評価していく」とおっしゃっていました。
審査中は、皆さんかなりスピーディーにティスティングをして行きます。さすが本場のプロフェッショナル達。まさに鮮やかな素晴らしいティスティング風景でした。コメントもどんどんと出てきます。ものすごく早いテンポで泉のようにあふれ出ます。私もフランス語がもっと聞き取れたら、どのように日本酒を感じるのか分かり、どんなに勉強になったことか。

おすすめのKuraMaster2018受賞酒

今回受賞した日本酒の中には、私の経営するSAKE Scene 〼福でもご提供しているものもありました。少しご紹介しましょう。

【純米大吟醸&純米吟醸部門金賞】
伊予賀儀屋 無濾過 純米 赤ラベル(成龍酒造株式会社・愛媛県)
愛媛県の食用米、松山三井を使用した旨口で米の甘味を感じる、綺麗な余韻のお酒。優しく丸い味わいが、淡白な白身魚などにぴったりです。SAKE Scene 〼福では、甘エビのカダイフ 酒粕と発酵クリームのソースに合わせています。

【純米大吟醸&純米吟醸部門金賞】
宮寒梅 純米吟醸45% (合名会社寒梅酒造・宮城県)
ジューシーな旨味と爽やかさ、綺麗なバランスの日本酒です。きりっと冷やして飲むのも良いでしょう。ぜひ爽やかな冷製の一皿と合わせてどうぞ。

KuraMaster 2018 受賞酒のリストはこちら

フランスを制すれば世界を制す

フランスには世界が認める伝統的な独自の判断基準があります。フランスのトップレベルの飲食業の方々が厳しく審査し、認めた日本酒は、世界が注目します。フランス国内でのレストランのワインリストを決めている方々がジャッジすることは、今後の日本酒の販路開拓に大きな影響を与えるのは間違いありません。
今後、日本酒の海外での活躍には期待が高まるばかり。このコンテストにより、フランスのレストランのワインリストに日本酒がもっと並ぶようになり、食事に合わせてさまざまな日本酒をセレクトできるようになれば良いですね。ますます目が離せない、海外での日本酒達の活躍ぶりに期待が大きく膨らみます。


※記事の情報は2018年7月18日時点のものです。
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