春の山菜は栄養たっぷり! 管理栄養士おすすめの調理法とは?

タラの芽、こごみ、フキノトウ…。ほのかな苦味がお酒好きにはたまらない春の山菜は、抗酸化物質であるポリフェノールをはじめ様々な栄養素が豊富に含まれています。旬の恵みをあますことなく頂くためのおすすめ調理法を管理栄養士がご紹介します。

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春の山菜にはポリフェノールがたっぷり

山菜が出回ると春の訪れを実感しますね。「万葉集」にも、摘み草の喜びが詠まれており、かなり古い昔から山菜が利用されていることがうかがえます。

山菜の多くは若い芽で、これから成長していくために外敵から自分自身の身を守るために、苦みやえぐみを備えています。苦みやえぐみの成分は、ご存知の通りポリフェノールです。ポリフェノール(poly phenol)は、たくさんの(poly)フェノール基(phenol)をもつ物質で約500種類以上あります。

ポリフェノールは、体の中で過剰に発生した活性酸素を除去したり、酸化を抑制したりする抗酸化物質です。

今回は春の山菜を代表するタラの芽、こごみ、フキノトウ、ぜんまい、わらびの栄養やおすすめの調理法について紹介いたします。

【春の山菜①タラの芽】たんぱく質やアンチエイジングビタミンが豊富

タラの芽
■栄養成分とおすすめ調理法
万人が美味しいと評価することから山菜の王として君臨しているのがタラの芽です。

日本が原産のタラの木(落葉低木)の新芽で、採取時期が植物の生長点(細胞分裂の 活発な部分)にあたっているため、栄養価がとても高くなっています。β-カロテンも多く緑黄色野菜に区分されています。

また、たんぱく質が山菜の中でも高く、ビタミンCやビタミンEなどのアンチエイジングビタミン、高血圧予防のカリウム、貧血予防の鉄、葉酸、骨粗鬆症予防のカルシウムやビタミンK、エネルギー代謝に関わるビタミンB1、ビタミンB2、腸内環境を整える食物繊維などの栄養成分が含まれます。

独特の香り、ほのかな苦み、ほっくりした歯ごたえを楽しむには、何といっても天ぷらが一押しです。170℃の油でじっくり揚げるとアクがぬけてコクが増し、美味しくいただけます。

他に、タラの芽味噌もおすすめです。タラの芽を粗みじんにしたものを、油で炒め味噌、みりん、砂糖を加えて弱火でまぜながら炒めます。ご飯、カマンベールチーズ、イカ、ホタテとも相性が良いです。

【春の山菜②こごみ(くさそてつ)】β-カロテンがたっぷりの緑黄色野菜

こごみ
■栄養成分とおすすめ調理法
シダの仲間の多年草で、くるくると巻いた形状が独特です。β-カロテンがとても多く100g中1100μgも含まれ、緑黄色野菜として区分されています。

山菜の中でもビタミンCやビタミンKが豊富です。アクが少ないため、軽くゆでる程度でいただけるので調理によるビタミンCの損失が少なくなくてすみます。

ただ、ビタミンB1が含まれていませんので、ビタミンB1が補給できる胡麻和えがおすすめです。シャキッとした歯ごたえと香ばしいゴマの香りが良く合い酒肴にもなります。

豚もも薄切り肉でこごみを巻いて焼いたものもビタミンB1を補え、栄養成分が整います。

【春の山菜③フキノトウ】独特のほろ苦さの正体はクロロゲン酸

フキノトウ
■栄養成分とおすすめ調理法
キク科の多年草で、フキのつぼみの花茎です。フキはまず花が咲き、その次に葉が伸びるという成長過程をたどります。食用とするならば、なるべくつぼみが開かないうちに賞味します。雄の花は淡黄色、雌の花は白色です。

独特の香りとほろ苦さは、カリウムとポリフェノール化合物のクロロゲン酸によるものです。クロロゲン酸は胃酸の分泌を促進する働きがあり、消化活動を高めてくれます。

フキノトウは山菜のなかでもカリウム、カルシウム、ビタミンE、食物繊維が多いです。カルシウムの吸収を助けるのはクエン酸やビタミンDです。天ぷらで頂くときは、天つゆにお酢やレモン汁を加えてクエン酸を上手に摂りましょう。

また、ビタミンDが豊富な黒キクラゲ、マイタケ、シイタケや魚料理を組み合わせれば、カルシウムの体内への吸収率が高まります。

【春の山菜④ぜんまい】油で炒めると栄養価アップ

ゼンマイ
■栄養成分とおすすめ調理法
森や林の湿ったところに生えている山菜として有名です。とても繁殖力が強い多年草で、アクが強いのが特徴です。また注意したいのは、ぜんまいに含まれるビタミンB1の働きを阻害するビタミンB1分解酵素です。加熱に弱いので、十分に沸いたお湯でアク抜きをしましょう。

ぜんまいは、乾燥したもの、水煮したものを利用することも多いですが、この時期は是非、アク抜きをして生のぜんまいを楽しみましょう。アク抜きしたぜんまいは、風味と歯ごたえを楽しめるので、炒め煮がおすすめです。実は、ぜんまいはビタミンEがあまり含まれておりません。油を使った料理をすることにより、ビタミンEが補給でき栄養価が上がります。

ぜんまいは、パントテン酸、葉酸が山菜の中でも豊富です。パントテン酸は、糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝に関わるビタミンB群のひとつです。

β-カロテン、ビタミンCも比較的多く含まれています。β-カロテンは体の中で必要に応じてビタミンAに変わります。ビタミンAは、ビタミンCやビタミンEと同様にアンチエイジング作用があります。

【春の山菜⑤わらび】お肌の健康維持に欠かせないビタミンB2量がダントツ

わらび
■栄養成分とおすすめ調理法
くせのない香りとぬめりが特徴で、日当たりの良い草原などに生えるシダ植物の新芽で人気の高い山菜です。根からはでんぷんがとれ、わらび餅の原料になります。

アク抜きには、木灰や重曹を利用しますが、これは、木灰や重曹のアルカリ作用によって組織が軟化されアク成分の溶出が促進されやすくなることが理由です。ぜんまいと同様にビタミンB1の働きを阻害するビタミンB1分解酵素を含んでいますので、熱湯を利用して、しっかりアク抜きをしましょう。

山菜のなかでも、ダントツでビタミンB2が豊富です。ビタミンB2は、活性酸素を消去するグルタチオン還元酵素を助ける働きや、肌の健康を維持する作用もあります。

その一方、わらびは比較的ビタミンKが少ないので、ビタミンKが補給できるマヨネーズ和えがおすすめです。

わらびは、乾燥させたものも人気が高いですね。干しわらびは、ビタミンCが含まれませんが、カロテン、カリウム、食物繊維は多く含まれます。

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春にしか味わえない旬の恵みに感謝しながら、山菜料理をお酒とともに楽しみましょう。

<参考図書>
『新版 おいしく食べる山菜・野草』世界文化社
『山菜大図鑑』永岡書店
『七訂 食品成分表2018』女子栄養大学出版部


※記事の情報は2020年4月16日時点のものです。
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