今飲むべき「ポルトガルワイン」、その魅力とは? 専門家おすすめ銘柄も紹介

お手頃かつ高品質なものが多いと、今世界のワイン好きから注目を集めているポルトガルワイン。ポートやマデイラといった酒精強化ワインだけでなく、ヴィーニョ・ヴェルデをはじめ様々な地域で土地の個性を生かしたワインづくりが行われています。そんなポルトガルワインの特徴や産地・品種の基礎知識、おすすめ銘柄を専門家に教えていただきました。

ライター:ココンココン
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安くておいしいワインといえば、チリ産や南アフリカ産が注目されがちですが、ここ10年で日本での輸入量が約4倍、コスパ抜群のワインとしてめきめきと頭角をあらわしているのがポルトガルワイン。世界のワイン好きからも評価が高く、今飲むべきワインとしてイチオシなのです。

そんなポルトガルワインを日本で広めるべく活動する、ポルトガルワイン協会日本事務局の代表でシニアワインアドバイザーの田辺由美さんに、その魅力や楽しみ方をうかがいました。

*スティルワイン(スパークリングワイン、酒精強化ワイン、フレーバードワインにあたらない非発泡性ワイン)の輸入量 (出典:メルシャン「2019年 日本のワイン市場」スティルワインの輸入数量推移)
 

この方にお聞きしました

田辺由美さん

■JSA認定シニア・ワインアドバイザー
■田辺由美のWINE SCHOOL主宰
www.wincle.com
www.sakuraaward.com

ポルトガルワイン協会日本事務局代表。ワインアンドワインカルチャー株式会社代表取締役、ワイン総合コンサルタント、ワインエデュケーター。
津田塾大学数学科卒後、アメリカ合衆国ニューヨーク州コーネル大学にてワインの知識と経験を積み、1992年「田辺由美のWINE SCHOOL」を立上げる。多くのソムリエを育て、延べ生徒数は1万人を超える。
一方、日本を代表するワイン専門家の一人として世界のワイン産地を訪れ、ワインコラムの連載、ワイン関係の著作など執筆活動も積極的に行い、2009年には長年の功績が認められフランス政府よりフランス農事功労章を受章。
2015年北海道道庁主催「北海道ワインアカデミー」名誉校長、2018年十勝総合振興局「ワインアカデミー十勝」名誉校長に就任。
2014年に女性の視点からワインを審査する Japan Women’s Wine Awards (通称:サクラアワード)を立ち上げ、新たな啓蒙活動を始める。
著書に「田辺由美のWINE BOOK」「田辺由美のWINE NOTE」「~十勝の宝石~由美ちゃん、ワイン造るの?」(共に飛鳥出版)等多数。

田辺由美さん

ポルトガルワインの特徴

~多様な固有品種と、和食と相性抜群の味わい~

ポルトガルワインが世界から注目を浴びる理由の一つが、250種もの固有品種からつくり出される他にはない味わいです。ヨーロッパ大陸の一番はしっこという地理的要因などもあり、ポルトガルならではのブドウ品種が守り受け継がれています。

田辺「ポルトガルの人達が土着の固有品種を今も大事にしているのは、ワインは食文化のひとつという考えによるところが大きいと思います。

ポルトガルのブドウから作ったワインは、ポルトガルの料理に合う。それを大事にしているから、ワインが独り歩きしない。常に食べ物と一緒に地元で愛され、家庭に寄り添うワインを作ってきました。

だから価格もお手頃なんですが、それでいてすごく品質がいいのが特徴です」

ポルトガル料理といえば、海の幸をふんだんに使ったシンプルなもので、和食と共通する部分が多いそう。また、長崎との貿易を通じて昔から食文化の交流の歴史があり、天ぷらがポルトガルに由来するのは有名な話。つまり、ポルトガルワインは和食ととっても相性が良く、そこも大きな魅力と田辺さんは言います。
たことポルトガルワイン
©ポルトガルワイン協会

ポルトガルワインの歴史

~日本の歴史とも深いかかわりが!?~

ポルトガルでワインづくりがはじまったのは、紀元前2000年。今から4000年も前のこと。フェニキア人(現在のシリアの一部)によってもたらされました。その後、キリスト教が伝えられると、宗教儀式にワインが使われるようになり、ワインづくりも発展していきます。

14世紀ごろ、当時も今も世界最大のワイン輸入国・イギリスが、主なワイン輸入先だったフランスとの対立が深まったことから、新たなワイン輸入国を探すなか、白羽の矢がたったのがポルトガル。ドウロ川沿いでつくられるワインに注目するようになります。

甘いワインが貴重だった時代であることと、港から150㎞もの奥地が産地だったこともあり、ワインの風味を損なわないようにワインにブランデーを加えたものが、後に酒精強化ワインとして知られるようになるポートワインの原型なんだそうです。
ドウロ川
ドウロ川沿いに広がるブドウの段々畑。この川の下流にポルト港があり、ポートワイン(ポルトワイン)が船でイギリスへ輸送されていた ©ポルトガルワイン協会

その後、ポルトガルは新大陸発見の大航海時代へ。そこで発見された大西洋のマデイラ島が寄港地として発展するなかで、航海用につくられるようになったワインがマデイラワイン。
マデイラ島
別名「大西洋の真珠」と呼ばれるマデイラ島

ちょうどこのころ、日本にキリスト教が伝わり、ワインももたらされます。

田辺「日本人で初めてワインを飲んだのは織田信長と言われています。ポルトガル語で赤ワインを意味する『tinto』(ティント)から『珍陀酒』(ちんたしゅ)と呼ばれ、それが、おそらくマデイラワインだったようです」

こうしてイギリスとの交易や大航海時代を経て酒精強化技術もさらに発達し、ポルトガル国外にポートとマデイラがその名を知られていきますが、通常のスティルワインは生産されてはいたものの、ほぼ国内消費にとどまっていました。

1980年代になり、ポルトガルのEU加盟をきっかけに、ポルトガルワインに近代化と国際化の波が押し寄せます。

近代的なブドウ栽培やワイナリーが増え、大学や世界の国々でワイン醸造を学んだ若手のつくり手も登場。こうして古来の固有品種を大事にしつつ、近代テクノロジーも取り入れてつくり出される個性豊かなポルトガルワインが世界で注目を集めるようになっていったんだとか。

田辺「実は、もうひとつ、ポルトガルワインと日本の歴史にまつわる逸話が残っています。

日本が鎖国を解くきっかけになったのは黒船。アメリカを出港してアジアをまわって日本にやってきたのですが、その前にマデイラに寄港していたという記録が残っています。当時アメリカで人気があり貴重なマデイラを積んで長い航海に備えたのでしょう。ペリー総督はかなりのマデイラ愛飲者でした。そして日本への手土産としたのでしょうね。

日本の歴史の要所要所でポルトガルワインが登場するなんて、興味深いですよね」

おぼえておきたいポルトガルワインの固有品種

日本の約1/4の国土に固有品種が約250種というポルトガル。これは1ヘクタール当たりの固有品種数では世界一。そんななかでも、代表的な品種を教えていただきました。

田辺「ポルトガルワインはブドウをブレンドするのが特徴です。伝統的に混植、つまり1つの畑に数種類の品種を植えるため、必然的にブレンドすることになるのですが、それがまた多彩な味わいを生み出します。

最近は単一品種でつくられるものも多く、ブレンドの場合もメインで使われているブドウを見ることで、セレクトの目安になりますよ」

<白>
●アルバリーニョ
アルバリーニョ
©ポルトガルワイン協会
ポルトガルワインでもっとも注目を集める生産地ヴィーニョ・ヴェルデを代表するブドウ品種。冷涼な気候で栽培され、ピーチ、レモン、パッションフルーツ、ライチ、オレンジピール、ジャスミンなど多彩なアロマをもつワインに。特に、北部のモンサン地区とメルガソ地区では糖度が上がり、高品質なワインがつくられる。

●アンタン・ヴァズ
アンタン・ヴァズ
©ポルトガルワイン協会
内陸部の一大産地アレンテージョで古くから栽培されている品種。温暖で日射量の多い気候で栽培され、単一品種ではトロピカルフルーツやタンジェリンの果皮などのフレッシュな果実味と酸、ミネラル感のあるワインに。ロウレイロやアリントとブレンドされることが多い品種。

●アリント(ペーデルナン)
 ●アリント(ペーデルナン)
©ポルトガルワイン協会
さまざまな産地で栽培される品種。ヴィーニョ・ヴェルデ地方では、ペーデルナンという名前で知られる。リンゴ、ライム、レモンを思わせるフレッシュな香り、そしてミネラル感があり、さわやかな酸味のワインをつくる。酸度が高いため、スパークリングワインにもよく使われる。

●エンクルザード
●エンクルザード 
©ポルトガルワイン協会
ポルトガルワインの最高級白ブドウ品種。ダン地方で多く栽培され、バラやスミレの繊細な香りやライトな柑橘系の香り、そして樹脂のタッチやミネラル感があり、糖と酸のバランスにすぐれている。長期熟成に向き、しっかりとした白ワインに。単一品種で使われることが多いブドウ。

●ロウレイロ
●ロウレイロ 
©ポルトガルワイン協会
ヴィーニョ・ヴェルデ地方で広く栽培されている品種。ロウレイロとはローレルの意味で月桂樹の花やオレンジの花、アカシア、ライムの花の香りをもち、さわやかでバランスのとれた酸味がある。単一品種で使われるほか、アリントやアルバリーニョなどとブレンドされることも。

●モスカテル・デ・セトゥーバル
●モスカテル・デ・セトゥーバル
©ポルトガルワイン協会
マスカット・オブ・アレキサンドリアと同じ品種で、ポルトガル三大酒精強化ワインのひとつ・セトゥーバルに使われる。オレンジの皮、ハチミツ、スパイス、オレンジの花、アカシアの花などの香りが特徴的なワインに。フルーティーなやや甘口ワインにも使われる。

<赤>
●アラゴネス(ティンタ・ロリス)
●アラゴネス(ティンタ・ロリス)
©ポルトガルワイン協会
ポルトガルとスペインで多く栽培され、スペインではテンプラニーリョと呼ばれる。ポルトガルでも産地によって名称が異なり、ダンとドウロではティンタ・ロリスと呼ばれる。豊かなベリー系のフルーツ香とスパイシーさをあわせもち、しっかりと優雅な赤ワインをつくる。

●カステラン(ホアン・デ・サンタレーム/ベリクタイ)
●カステラン(ホアン・デ・サンタレーム/ベリクタイ)
©ポルトガルワイン協会
ポルトガル南部で多く栽培され、特に気温が高く乾燥した砂質土壌のアレンテージョ地方に適した品種とされている。そのほか、リスボンやリスボン近くのセトゥーバル、テージョでも栽培され、タンニンと酸味が多く、赤カラント、干しプラム、ベリーを思わせるしっかりとした高品質なワインがつくられる。

●ハエン(メンシア) 
●ハエン(メンシア) 
©ポルトガルワイン協会
ほとんどがダン地方で栽培される品種。ブラックベリー、ブルーベリー、チェリーを思わせるアロマをもち、作柄のよい年は非常に香り高いものに。シンプルでありながらも、やわらかくシルクのような魅力的な赤ワインをつくる。

●トゥリガ・ナシオナル
●トゥリガ・ナシオナル
©ポルトガルワイン協会
ポルトガルで最高級とされる赤ブドウ品種。ポートワインの主要品種で、ダン、ドウロの赤ワインに多く使われる。皮が厚く、タンニンが豊富で骨格がしっかりとした長期熟成が可能なワインをつくる。熟したブラックカラントやラズベリーの卓越した香りとハーブの複雑な風味が特徴。

●バガ
​​​​​​​●バガ
©ポルトガルワイン協会
バイラーダ地方やダン地方で広く栽培される品種。小粒で皮が厚く、色素やタンニンが強いワインをつくる。ベリーと黒いプラムのくっきりとした風味や、コーヒー、干し草、タバコ、煙のアロマが特徴。熟成させると、ハーブ、杉、ドライフルーツの香りなど複雑さが増し、やわらかく上品な味わいに。

おぼえておきたいポルトガルワインの主要産地

ポルトガルはヨーロッパの南西のはしに位置し、その大きさは北海道より少し大きいくらい。ほぼ全域でワインがつくられています。

田辺「ポルトガルワインの代表格でもある北部のヴィーニョ・ヴェルデ、近代的なワインづくりで注目を集めるアレンテージョ、しっかりとした赤ワインを生むダンやドウロ、スパークリングが人気のバイラーダ、酒精強化ワインで有名なポート、マデイラ、セトゥーバルあたりを押さえておくとよいですよ」
ポルトガルワイン地図
ポルトガルワインの生産地マップ ©ポルトガルワイン協会
●ヴィーニョ・ヴェルデ
緑豊かで雨の多い北部に広がる一大産地で、世界のポルトガルワイン人気の火付け役にもなったエリア。ヴィーニョとはワイン、ヴェルデは緑を意味し、その名のとおり酸度の高いさわやかな味わいが特徴。

白が主流で微発泡のものもあり、最近は赤ワインもつくられている。いずれもフルーティで舌触りがまろやか、アルコール度が低く、赤も冷やして飲むのがおすすめ。

使用するブドウ品種は、アルバリーニョ、ロウレイロ、アリントなど。モンサン地区が主な産地のアルバリーニョはミネラルの繊細な香りで特に高品質とされている。


●ポートとドウロ
ポートワインの産地として知られたドウロ川沿い一帯は、伝統的なテラス式ブドウ畑の美しい景観がユネスコ世界遺産にも登録されている。

近年は、ポートワインだけでなく、スティルワインもたくさんつくられていて、ティンタ・ロリス、トゥリガ・ナシオナル、トゥリガ・フランカなどを使った力強い高品質な赤ワインが高く評価されている。また、最近は辛口の白ワインも人気。


●ダン
四方を山に囲まれ、エストレラ山地の標高の高い地域にまでブドウ畑が広がっている。標高が高いと夜間の冷却などでブドウがゆっくりと熟すため、酸味とアロマにあふれたエレガントなワインができあがる。

主要品種はトゥリガ・ナシオナル、ティンタ・ロリス、アルフロチェイロなど。樽発酵させることで複雑な味わいとなる白ブドウのエンクルザード種を使ったワインも注目されている。


●バイラーダ
太平洋の海岸沿いに位置するワイン産地。冷涼なバイラーダの気候で育つマリア・ゴメス種でつくられる酸がしっかりとしたスパークリングワインが有名。

最近は赤のプレミアムワインを産することでも注目を集め、果実味やタンニンのしっかりしたバガ種でつくられるエレガントな赤ワインでも人気のある産地。


●セトゥーバル
首都リスボンのすぐ南、モスカテル・デ・セトゥーバルでつくられる酒精強化ワインで知られる産地。

近年は、意欲的なつくり手によって白赤ともに、質の高いスティルワインもつくられている。


●アレンテージョ
ポルトガル南部の大半を占めるアレンテージョ地方は、夏は太陽がさんさんと降り注ぐ乾燥した気候。温度管理など、近代的なテクノロジーをとりいれたワインづくりがおこなわれ、高品質な白ワインやリッチな赤ワインを生み出している。

赤品種のアラゴネスをはじめ、フランス品種のアリカンテ・ブッシェ、カステランなどからつくられる果実味と熟成感のある赤ワインは、高級ワインからフルーティな日常ワインまで質の高いものがそろう。

白は、酸味とトロピカルフルーツの風味をもつアンタン・ヴァズ種や、酸味が特徴のアリント種などから多彩なワインがつくられている。


●マデイラ
大西洋に浮かぶマデイラ島は、一年中穏やかな気候に恵まれた島。マデイラワインをつくる黒ブドウ品種ティンタ・ネグラが生産量の80%をしめ、高貴な白ブドウ品種として知られるセルシアル、ヴェルデリョ、ボアル、マルヴァジアなども栽培されている。

つくられているのは、もちろんマデイラワインだが、現地で消費されるスティルワインも生産されている。

ポルトガル三大酒精強化ワイン

酒精強化ワイン
酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)は、アルコール発酵が完全に終わらないうちに、アルコールを添加して人工的に発酵を止める製法のワイン。

ブドウに含まれる糖が発酵によってアルコールに変わりますが、発酵が途中で止まることで、分解されなかった糖が残り、甘口のワインが生まれます。通常、ブランデーなどのアルコール度の高いブドウ由来の蒸留酒が使われるため、でき上がったワインもアルコール度の高いものとなります。

ポルトガルのポートとマデイラ、スペインのシェリーを世界三大酒精強化ワインといいますが、ポートとマデイラに、マスカットからつくられるセトゥーバルを加えた3つをポルトガル三大酒精強化ワインと呼びます。

田辺「酒精強化ワインは長期熟成タイプのワインで、短いものでも数年、長いものは数十年、100年熟成させるものもあります。何十年ものと聞くと非常に高価なものと思いがちですが、意外と手の届く価格なのがポルトガルワインのよいところで、自分の生まれ年のものを買うのもおすすめです」

ポルトガルワインのおすすめ銘柄は?

田辺「まずは代表的な産地の特徴を知って、好きなワインタイプの産地で選ぶとよいでしょう。

私のお気に入り産地はビールのようにゴクゴク飲めるヴィーニョ・ヴェルデ、しっかりした赤ワインを多く産出するダンやバイラーダ、赤も白もレベルの高いアレンテージョ地方、スパークリングならバイラーダ産がおすすめです。」

そこで、田辺さんが注目するおすすめポルトガルワイン銘柄をご紹介いただきました。
 

●キンタス・デ・メルガッソ QMアルヴァリーニョ(スティル・白)
サクラアワード2020ゴールド受賞


■DATA

使用品種:アルバリーニョ100%
産地:ヴィーニョ・ヴェルデ


田辺さんが審査責任者を務める女性審査員による国際的なワインコンクール「サクラアワード」で、2020年度ゴールドを受賞。その他、海外のワインコンクールでも最優秀アルバリーニョ賞をはじめ数々の賞を受賞。微発泡が多いヴィーニョ・ヴェルデの中で、これは無発泡でアルバリーニョのみでつくられたワイン。シトラスフルーツや青りんご、フローラルの華やかなアロマをもつ、さわやかでエレガントな酸味、たっぷりとした余韻も楽しめる。

田辺「和食と相性のいい白です。シンプルにほうれんそうのおひたしや、白身やイカ、タコのお刺身、ホタテのバター焼きもおすすめです」
 

●ザ・レウヴァス アトランティコ・レゼルヴァ(スティル・赤)
サクラアワード2020ゴールド受賞&“もっともすき焼きに合うワイン”グランプリ


■DATA

使用品種:アリカンテ・ブッシェ50%、アラゴネス20%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%、トゥリガ・ナシオナル10%
産地:アレンテージョ


2020年度「サクラアワード」でゴールドを受賞し、“もっともすき焼きに合うワイン”グランプリに4000本の中から選ばれた1本。ブドウの果皮を長く漬けないことで飲みやすく濃くしないつくり方をしていて、口に含むときれいな酸味とほどよいタンニンが感じられるバランスのよい赤ワイン。

田辺「赤いベリー系、スパイス、樽からくるバニラ、そしてカカオのような香り。口の中でも果実味があってスパイシーさがぐっと感じられるリッチな味わい。コスパ抜群の赤です」
 

●ジョゼ・マリア・ダ・フォンセカ ペリキータ(スティル・赤)
サクラアワード2020ダブルゴールド受賞


■DATA

使用品種:カステラン52%、トゥリガ・ナシオナル33%、トゥリガ・フランセーザ15%
産地:ペニンシュラ・デ・セトゥーバル


ポルトガルで初めてびん詰めされた赤ワイン「ペリキータ」をつくる歴史あるワインメーカー。カリフォルニア大学デーヴィス校でワイン醸造学を学んだ6代目による伝統と最新醸造技術の融合で生み出されるワインが話題。2020年度「サクラアワード」でダブルゴールド受賞。

田辺「シナモンやアーモンドのナッティな香りにタバコも感じられる複雑なアロマをもち、口に含むと落ちついたエレガントな味わいです。和牛と相性がよく、まぐろやかつおといった赤身のお魚にもぴったり」
 

●キンタ・ダ・デヴェザ 20年ポート 白(酒精強化)
サクラアワード2020ダブルゴールド受賞


■DATA

使用品種:ゴウヴェイウ、ヴィオジーニョ、マルヴァジア・フィナ
産地:ポート


2020年度「サクラアワード」でダブルゴールド受賞、そして“最優秀酒精強化ワイン”のひとつに選ばれたポートワイン。元来ドウロ地方の品種で現在は全土で栽培されるゴウヴェイウは酸味とボディを有するブドウ品種。そして、ワインに繊細なニュアンスを加えるヴィオジーニョ、ドウロ古来の品種マルヴァジア・フィナでつくられるめずらしいポートの白。

田辺「アーモンドとハチミツの豊かな香りが魅力。20年熟成させたワインをブレンドしていて、甘さとコクのバランスがすばらしい1本です」
 

●マデイラ・ブアル 10年(酒精強化)
サクラアワード2020ゴールド受賞


■DATA

使用品種:ブアル(マルヴァジア・フィナ)100%
産地:マデイラ


2008年洞爺湖サミットのワーキングランチで採用された酒精強化ワイン。マデイラでブアルと呼ばれるブドウは、繊細でニュートラル、フレッシュ、複雑さをあわせもつ品種。おだやかな酸が感じられ、酸を包み込むようなやさしい甘さが特徴的なマデイラワインに仕上がっている。2016年度に次ぎ、2020年度「サクラアワード」でゴールド受賞。

田辺「マデイラは大好きで、今までに何度も訪れています。淡い琥珀色が美しく、ハチミツ、レーズン、バニラがギュッと凝縮された香りで、長く余韻が楽しめます」
 

●マロ・モスカテル・スペリオール 2004 フォーティファイド 10年熟成(酒精強化)
サクラアワード2020ダブルゴールド受賞


■DATA

使用品種:モスカテル100%
産地:セトゥーバル


2020年度の「サクラアワード」でダブルゴールドを受賞した、ポルトガル三大酒精強化ワインのひとつ・セトゥーバル。モスカテル・デ・セトゥーバルのリッチな味わいが楽しめる。

田辺「松の実やくるみの香り、ドライフラワーの香りをもつ複雑さが特徴です。口の中をなめらかにすべる優雅さのあるデザートワイン」

ポルトガルワインを家で楽しむには?

田辺さんいわく、お値段も手ごろなポルトガルワインは家庭で楽しむのにもってこい。ワイングラスがなければコップでもOKというカジュアルさも魅力です。

和食に合うと言われていますが、具体的には?

田辺「魚介なら、塩焼きでも刺し身でも、煮魚でも合いますよ。ポルトガルは海の幸が豊富で、魚の種類も日本ととても似ているんです。ポルトガルの魚市場に行ったことがありますが、並んでいる魚の名前を全部言えたくらい! 

特にいわしはポピュラーで、シンプルに炭火で焼いたものに、オリーブオイルをたらして、キュッとレモンを絞っていただきます。焼き魚にお醤油じゃなくてオリーブオイルとレモンにすればポルトガル料理になっちゃうんです」
ポルトガルワインとイワシ料理

ポルトガルの固有品種別に食材とのマリアージュってあるのでしょうか?

田辺「ヴィーニョ・ヴェルデに使われるアルバリーニョ種にはシーフードや焼き鳥。ワインの酸が油をさっぱりとさせてくれるので、揚げ物にも合います。イギリスのフィッシュアンドチップスなんてぴったり。そのほか、スパイシーなインド料理やタイ料理に合わせるのもおすすめ。

清涼感たっぷりの白・アリント種は、白身魚や野菜のグリルなどスモーキーな味わいとマッチします。燻製のハムやソーセージとも相性がよいので、サンドイッチにしてもいいですね。

リッチな白のエンクルザード種は、シンプルな調理法のホタテやえび、アンコウと相性抜群です。

ダンやドウロのしっかりとした赤ワインに使われるトゥリガ・ナシオナル種は、どんな肉料理ともオールマイティに合わせられます。照り焼きやチャーシューもおすすめです」

ワインといえばチーズですが、ポルトガルワインにはどんなチーズがおすすめ?

田辺「ポルトガル産のチーズがベストですが、日本ではなかなか手に入りませんから、セミハードタイプを合わせるといいでしょう。そのほかいくつか例をご紹介します。

■ バイラーダ地方のバガ種 × ヤギのソフトチーズ
■ アラゴネス種 × ゴルゴンゾーラ
■ マデイラワイン × ロックフォール、スティルトン
■ ドウロ地方の赤ワイン × ヤギのフレッシュチーズ、長熟タイプのゴーダ、スティルトン
■ ポートワイン × スティルトン


スティルトンはイギリスのブルーチーズですが、イギリス人と関係の深いポートならではのマッチングです。私はスティルトンにポートを加えてざっくり混ぜ合わせたものが大好き!」

最後に酒精強化ワインの楽しみ方は?

田辺「辛口のものは冷やして食前酒に、甘口は食後酒に。デザートと合わせることも多く、ポートワインはチョコレートムースやコーヒー風味のケーキと、マデイラワインはマデイラ名物のハチミツのケーキ、ポーロ・デ・メルやトロピカルフルーツ、ミルクチョコレート系のデザートと、セトゥーバルはアーモンドやチョコレート、コーヒー風味、柑橘系のデザートと合います。

ちなみに、どの酒精強化ワインもポルトガルの伝統菓子との相性は抜群。サバランのように、カステラにポートやマデイラをたっぷり染みこませていただく大人のスイーツもぜひお試しを」

* * * *

伝統的な酒精強化ワインから、話題のヴィーニョ・ヴェルデをはじめとするスティルワインまで、多種多様なポルトガルワインの世界、いかがでしたでしょうか。

歴史的にもつながりが深く、食文化でも共通点が多い日本とポルトガル。ワインだって日本人に合わないはずがない! さっそくポルトガルワインをお試しあれ。

※記事の情報は2020年8月24日時点のものです。
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