スコッチウイスキーとは? ~生産地別の特色からおすすめ銘柄まで~

世界5大ウイスキーの1つである「スコッチウイスキー」。長い歴史を持ち、世界で最も多く生産されているウイスキーは、どんな特徴や文化的背景をもつ飲み物なのでしょうか? スコッチの本場での楽しみ方やおすすめ銘柄もご紹介します。

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スコッチウイスキーとは?

スコッチウイスキーとは、スコットランドで造られるウイスキーのこと。スコットランドは英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の構成国の1つで、イングランドの北側に接する国です。面積は北海道と同じくらいです。スコットランドといえば、2014年に放送されたNHK連続テレビ小説「マッサン」でウイスキー造りを学びに行った亀山政春(モデルはニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝)がヒロイン・エリーと出会った場所でもあります。

スコッチウイスキーは2009年に制定された「スコッチウイスキー規則(The Scotch Whisky Regulations 2009)」で「スコットランドの蒸留所で、水と大麦麦芽(他の全粒穀物を加えても良い)を原料として酵母により発酵させ、アルコール分94.8度未満で蒸留し、700L以下のオーク樽で最低3年以上熟成させ、水、カラメル色素(カラメルⅠ)以外のどのような物質も加えず、アルコール分40度以上で瓶詰めしたもの」と定義されています。

つまり、スコットランドで蒸留・熟成させない限り、どんなに似た製法で造られていてもスコッチウイスキーとは名乗れないということ。同じ英国の構成国であるイングランド、ウェールズ、北アイルランドで造られたウイスキーであっても、スコッチウイスキーと呼ぶことはできないのです。

スコッチウイスキーの特徴

スコッチウイスキーの多くは、大麦麦芽を乾燥させるときにピート(泥炭)の煙で燻すため、独特のスモーキーフレーバー(ピート香ともいう)がついているのが最大の特徴です。

ピートとは、スコットランドで多く産出される炭化のあまり進んでいない泥状の炭のこと。北部地方の原野に多いヒースやヘザーと呼ばれる野草、コケなどが年月をかけて堆積してできます。スコットランドではピートを家庭用の燃料として暖炉にくべるのにも使われます。
ピート

スコッチウイスキーの種類

スコッチウイスキーは原料と製法の違いから「モルトウイスキー」と「グレーンウイスキー」の2つに分けられます。

「モルトウイスキー」は大麦麦芽(モルト)のみを使用し、単式蒸留機で2~3回蒸留したものです。
「グレーンウイスキー」はトウモロコシや小麦などを主原料に、連続式蒸留機で蒸留したものです。

モルトウイスキーには個性的なフレーバーがあるのに対し、グレーンウイスキーにはさほど個性が感じられないことから、それだけで商品化されることはまれです。

さらに製品としてのスコッチウイスキーは「①シングルモルトスコッチ」、「②ブレンデッドスコッチ」、「③ヴァテッドスコッチ」に大別されます。

①シングルモルトスコッチ:単一の蒸留所で造られたモルトウイスキーのみを瓶詰したもの
主要銘柄:ラフロイグ、ボウモア、ザ・グレンリベットなど

②ブレンデッドスコッチ:数十種類のモルトウイスキーとグレーンウイスキーを瓶詰したもの
主要銘柄:ジョニーウォーカー、バランタイン、ホワイトホースなど

③ヴァテッドスコッチ:複数の蒸留所で造られたモルトウイスキーを瓶詰したもの
主要銘柄:モンキーショルダーなど

ただし「③ヴァテッドスコッチ」は今ではあまり造られなくなったため、現在市場に一般流通しているのは「①シングルモルトスコッチ」と「②ブレンデッドスコッチ」のどちらかになります。

モルトウイスキーの造り方

蒸留釜
風味の個性が強いため「ラウド(声高な)スピリッツ」とも呼ばれる「モルトウイスキー」。その造り方を見ていきましょう。

①製麦(モルティング)
モルトウイスキーには大麦麦芽(モルト)のみが使われます。大麦には実が2列に並ぶ「二条大麦」と6列に並ぶ「六条大麦」がありますが、スコッチに使用するのはビールの原料でもある二条大麦のみ。二条大麦を水に浸して発芽させ、この時に発生する酵素で大麦の種子に含まれるデンプンを糖に変えます。
伝統的な製麦方法を採っている蒸留所では、水に浸した大麦をコンクリートの床に広げ、発芽が均一に進行するように木製のシャベルのような道具を使って「フロア・モルティング」と呼ばれるすき返し作業を行います。
発芽が進み過ぎると逆に糖分が失われてしまうため、芽がある成長点に達したところでキルンと呼ばれる麦芽乾燥塔に移し、ピート(泥炭)を焚いて麦芽を乾燥させることで発芽の進行を止めます。



②糖化(マッシング)
乾燥させた麦芽を粉砕し、マッシュタンと呼ばれる大きなタンクに移します。そこにお湯を注ぎゆっくりと撹拌。こうして発酵に必要な麦汁(ウォート)を抽出します。



③発酵(ファーメンテイション)
麦汁に酵母を加え、ウォッシュバックと呼ばれる巨大な樽に移して発酵させます。麦汁の中の糖分は酵母に食べられることで、アルコールと炭酸ガスに分解されます。こうしてアルコール度数6~8%のもろみ(ウォッシュ)ができます。



④蒸留(ディスティレーション)
できたもろみをポットスチルと呼ばれる銅製の単式蒸留釜に移して蒸留します。スコットランドでは2回蒸留(ローランドでは3回蒸留を行うのが伝統)が一般的です。加熱されて気化したアルコールは蒸留釜の首の部分からパイプ状のラインアームを通り、冷却装置で冷却されて再び液化。これを2回目の蒸留を行う再留釜に移して再び加熱、気化させ、アルコールの液体「スピリッツ」を採り出します。



⑤熟成(マチュレーション)
蒸留して採り出されたスピリッツのアルコール度数は70度くらい。これに加水して度数を63度前後に下げてから樽に詰めて寝かします。スコッチウイスキーの場合、3年以上の熟成期間が必要です。熟成には、アメリカン・ホワイトオークでできたバーボン樽やスパニッシュオークでつくられたシェリー樽などが使われ、どのような樽を使うかによってモルトウイスキーの個性に違いがでます。樽に詰められたスピリッツは、ウエアハウスと呼ばれる保税倉庫で寝かされます。



⑥瓶詰(ボトリング)
熟成が完了した樽の中身は、すべて1つのタンクに開けられます。樽によって生じる味の差異を、すべて混ぜることで平均的な風味にするためです。樽の中のウイスキーのアルコール度数は50~55度とそのままでは高いため、加水して40度くらいまで下げてから瓶詰します。

スコッチウイスキーの主な生産地と特徴

スコットランド
「スコッチを味わうことは、スコットランドの美しい風景を味わうこと」とは、ある著名なウイスキー評論家の言葉。とりわけ「シングルモルトスコッチ」は、生産地の気候や水、風土がウイスキーのアロマやボディに大きく影響します。スコッチウイスキーの産地は主に6つの地域に分けられます。
 
ローランド
LOWLAND(ローランド)
スコットランド南部に位置し、古くから政治、文化の中心として栄えてきた首都エジンバラがあります。ローランドにはかつてたくさんのモルトウイスキー蒸留所がありましたが、現在稼働しているのは「オーヘントッシャン蒸留所」、「グレンキンチー蒸留所」、「キングスマーン蒸留所」など数か所のみ。一方でグレーンウイスキーの工場やブレンド業者、瓶詰工場の大半はこの地域にあります。ローランドモルトは、なだらかな丘陵地を渡っていく風のような草っぽい柔らかな香りや、穀物の甘さのある香りが特徴です。
 
ハイランド
HIGHLAND(ハイランド)
スコットランドの北部、東のダンディー・シティと西のグリーノックを結ぶ想定線の北側にある広大な地域のこと。丘陵や平野が続くローランド地方とは異なり、湖や複雑に入り組んだ海岸、荒涼とした岩山が多く、北に行くほど峻険な山並みが現れ、天気が変わりやすいことでも知られています。広大なエリアゆえに蒸留所の数も多く、北ハイランド「プルトニー蒸留所」が送り出す潮の香りが印象に残るものもあれば、南ハイランド「グレンタレット蒸留所」で造られるまろやかでバニラのような香りをもつものもあるなどハイランドモルトの味わいは実に多様です。
 
スペイサイド
SPEYSIDE(スぺイサイド)
ハイランド地方の一部にある、スペイ川とその東西を流れるデブロン川、ロッシー川を合わせた3つの川の流域を「スペイサイド」と特別に呼んでいます。かつては密造酒のメッカだった歴史もあり古くからウイスキーの生産地として知られ、スコットランドに約100か所あるウイスキー蒸留所のうち約半数がこの地域にあります。また、豊かな渓谷(ゲール語で「グレン」)に恵まれ、そのため「グレン」と名の付く蒸留所が多いのが特徴です。スぺイサイドモルトは、エレガントでフローラルな風味をもつものが多くあります。
 
アイラ
ISLAY(アイラ)
スコットランド西岸沖に位置し、日本の淡路島くらいの大きさのアイラ島。人口3500人程度のこの小さな島に「ボウモア蒸留所」、「アードベッグ蒸留所」、「ラガヴーリン蒸留所」といった名だたる蒸留所が8つあり、世界中のウイスキーファンが憧れるモルトの聖地として有名です。蒸留所はすべて海辺に建っているため、アイラモルトには潮の香りや海藻、ヨード臭といった言葉で表現される独特のアロマがしみついています。また、「ジョニーウォーカー」や「ホワイトホース」といったメジャーブランドのブレンデッドスコッチにもアイラモルトがブレンドされています。
 
キャンベルタウン
CAMPBELTOWN(キャンベルタウン)
スコットランド西部、キンタイア半島の先端にある町。かつてこの小さな地域には30を超える蒸留所があり、ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝が修業のために訪れたのもこのキャンベルタウンです。しかし時代の流れもあり、現在稼働している蒸留所は「グレンスコシア」、「スプリングバンク」、「グレンガイル」の3か所のみ。キャンベルタウンモルトの特徴は塩辛くパワフルな香味としっかりとしたコクにあります。この強いインパクトと稀少性ゆえに、この町のモルトウイスキーがなくならないことを願う愛好家も多く存在します。
 
アイランズ
ISLANDS(アイランズ)
伝統的には「アイランズ」とはアイラ島を除くスコットランドの島々のことで、アイランズモルトとはオークニー島、スカイ島、マル島、ジュラ島、アラン島の5つの島にある蒸留所で造られるシングルモルトを指します。スカイ島の「タリスカー」のように荒々しく強烈な煙臭をもつものもあれば、オークニー島の「ハイランドパーク」のようにシルキーな口当たりのシングルモルトがあったりと、どれもはっきりとした個性があるため「これがアイランズモルトの特徴」とひとくくりにすることは困難です。

スコッチウイスキーの歴史

そもそもウイスキーがいつ、どこで誕生したかについて正確なことは分かっていません。ですが15世紀までにはスコットランドやアイルランドに蒸留技術が伝わっていたこと、ウイスキーに関する最古の文献としてジェームズ4世時代の1494年のスコットランド王室の出納記録に「王命により修道士ジョン・コーに8ボルのモルト(麦芽)を与えてアクアヴィテ(蒸留酒)を造らしむ」と残っていることから、この頃にはすでにスコットランドに“ウイスキーのようなもの”が存在していたと考えられています。ただし、この頃のウイスキーは嗜好品としてではなく治療薬として造られていたようです。
スコットランド王ジェームズ4世
スコットランド王ジェームズ4世。錬金術と医術に関心が高かったと言われている
初めは貴族や特権階級だけにしか認められていなかったウイスキー製造ですが、スコットランドの肥沃な土地や豊かな水源を生かして全域に広がっていき、やがて富を生み出すようになりました。

すると政府はウイスキー製造に対して課税を開始。またスコットランドと政治的協力関係にあったイングランドが戦争資金としてこのウイスキー税をあてにしたため、その後も厳しい課税が重ねられます。これが合法ウイスキーの生産を急落させ、スコットランド人の反イングランド感情を招き、ウイスキーの密造を急増させる結果に。しかし、この密造酒時代の政府に対する反骨精神と自分たちの伝統的なウイスキー造りに対する誇りが、スコッチウイスキーの質を高めていきました。
スぺイサイド・リベット谷で造られた密造ウイスキーを「アンカー」と呼ばれる小さな樽で運んでいるところ
スぺイサイド・リベット谷で造られた密造ウイスキーを「アンカー」と呼ばれる小さな樽で運んでいるところ(scotchwhisky.comより引用)
もうひとつ、スコットランドでウイスキーが高い地位を確立したのには「虫」の存在も大きく影響していると言われています。古くからウイスキーが造られていたとはいえ、19世紀後半まで多くのスコットランド人が飲んでいた酒はワインを蒸留して作るブランデーでした。けれど1860年代に「フィロキセラ(ネアブラムシ)」という樹液を吸う虫が大量発生し、ブドウの木を次々と枯らしていきブランデーの生産量が激減。その結果、ブランデー代わりの蒸留酒としてウイスキーを飲むようになったのです。

1831年には2塔の連続式蒸留機が発明され、特にローランド地方の製造業者は積極的に導入。原料も大麦から原価の安いトウモロコシなどに切り替え、グレーンウイスキーを誕生させました。ただし、グレーンウイスキーは単独では風味があまり感じられないため、個性的な香味をもつモルトウイスキーをブレンドするようになりました。ブレンデッドスコッチの誕生です。ブレンド技術を採り入れることで、味わいも均一に、かつ大量に生産できるようになりました。

その後、大英帝国の繁栄とともに海外でも飲まれるようになったスコッチウイスキーですが、第一次・第二次世界大戦や世界恐慌などがウイスキー生産に大打撃を与え、1943年にはスコッチウイスキーの製造が完全にストップします。そこでスコットランドの蒸留所は、戦時下でも連続式蒸留機を使って大量の工業用アルコールを製造するなどしてこの窮地を乗り越えます。

そして世界が平時を取り戻すとウイスキー製造を再開。日本など新しい取引先にもスコッチウイスキーがどんどん出荷され、今や世界で一番生産されているウイスキーとなったのです。

スコッチウイスキーの飲み方

スコッチウイスキーに常温の水を加える
ウイスキーは嗜好品なので自分の好きなグラス・飲み方で楽しむのが大前提です。でも、せっかく飲むのならその酒が生まれた場所に敬意を表して、その土地の飲み方で味わってみては?

「香りの芸術品」とも呼ばれるシングルモルト。そのアロマを最大限に楽しむには、グラスは口がすぼまったチューリップ型のグレンケアンやコピータ、スニフターがおすすめです。

またウイスキーに氷を入れる飲み方(=オン・ザ・ロック)は香りを閉ざしてしまうので現地では避けられています。代わりに常温の水を少し加えて、アロマを開かせて飲むのがスコットランド流の楽しみ方です。

スコッチウイスキーに合う料理

ハギスとウイスキー
モルトウイスキーは香りを楽しむ酒なので、実はスコットランドの人たちは食事と一緒に飲むことをあまりしないとか。たいていはワインを飲みながら食事をします。

とはいえ、なかにはモルトウイスキーと素晴らしいペアリングを楽しませてくれる食べ物も。例えば、塩っぽくスモーキーなウイスキーにはスモークサーモンや生牡蠣がぴったり合い、力強くリッチな味わいのウイスキーは赤身肉やジビエ料理と相性が抜群です。

さらに「これを食べる時にはモルトウイスキーが欠かせない」と言われているのが「ハギス」です。羊の内臓のミンチと玉ねぎ、麦を羊の胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理で、国民的詩人・ロバート・バーンズの生誕を祝って毎年1月25日に行われる式典「バーンズ・ナイト」でウイスキーとともに振舞われます。日本ではなかなか食べることはできない料理ですが、過去の記事で再現レシピを紹介していますので、興味がある方はぜひ試してみてください。

スコッチウイスキー(シングルモルト)おすすめ銘柄10選

ご紹介してきたように、その地域の気候や水、風景がそのままウイスキーの香りや味わいに表れているのがスコッチの面白さです。ここでは特にその土地の風土が体現されているシングルモルトをいくつかご紹介します。
 
■SINGLE MALT SCOTCH①

 
「オーヘントッシャン 12年」
産地:ローランド
伝統的な3回蒸留で造られるローランドを代表するウイスキー。「オーヘントッシャン」とはゲール語で「野原の片隅」という意味。アメリカンオークバーボン樽で12年以上熟成したモルトウイスキーが使用されています。アーモンド、キャラメルのような芳ばしく甘い香りとスムースな味わい。クセがなくマイルドでソフトな口当たりで、食中酒としても最適です。  

■SINGLE MALT SCOTCH②

   
「グレンキンチー 12年」

産地:ローランド
首都エジンバラからほど近いロージアン地方の牧草地にある蒸留所。使用されるポットスチルはスコットランドの蒸留所の中でも最大級のもの。干草や花、ハーブを感じさせる香り、甘やかでクリーミーな味わいは食前酒にぴったりです。

■SINGLE MALT SCOTCH③
 
  「クライヌリッシュ14年」
産地:ハイランド
1819年にスタッフォード伯爵(のちのサザーランド公爵)によって建てられた蒸留所。ボトルに描かれているのは公爵の副紋章で、ハイランド山中に今でも棲息している山猫です。フルーティで気品のある香り、クリーミーな口当たり、深く豊かな余韻が続くのが特徴。海岸部に蒸留所があるため、潮っぽさもあります。

■SINGLE MALT SCOTCH④
 
「アバフェルディ12年」
産地:ハイランド
ソフトでマイルドな南ハイランドモルトの典型。「デュワーズ」のモルト原酒でもあります。仕込み水には現地の言葉で「水の神のプール」を意味し、昔からウイスキー職人たちの間で良水として評判だったピティリー川の水を使用。はちみつの香りと独特のスパイシーさの中に、ほんのりオレンジの風味が漂います。

■SINGLE MALT SCOTCH⑤
 
「ザ・グレンリベット12年」
産地:スぺイサイド
酒税法が改正され密造酒時代が終わった翌年の1824年に、政府公認の第1号蒸留所としてリベット谷で創業。名前の由来にもなっているリベット谷は良質な水とピート、清らかな空気に恵まれた土地で、かつては密造酒づくりのメッカでもありました。「ザ・グレンリベット12年」はトロピカルフルーツや花、夏の草原を想わせる香りがエレガントに調和し、バニラやはちみつのような甘さを伴う芳醇でソフトな風味が楽しめます。

■SINGLE MALT SCOTCH⑥
 
「ザ マッカラン12年」
産地:スぺイサイド
「シングルモルトのロールスロイス」と称されるマッカランは、地元スぺイサイドでの人気もNo.1。マッカランとはゲール語で「聖コロンバの丘」という意味で、蒸留所はスぺイ川の中流にあります。「ザ・マッカラン12年」は、自社で原木の選定から製樽まで徹底管理してつくられたシェリー樽で熟成させた原酒のみを使用。バニラやドライフルーツ、ジンジャーを思わせる香りと濃厚でなめらかな口あたりが特徴です。

■SINGLE MALT SCOTCH⑦
 
「ボウモア 12年」
産地:アイラ
アイラモルトの特色を知るには最適な1本。1779年創業のアイラ島で最も古い歴史をもつ蒸留所で、島の中心・ボウモア町の港に建っています。現在でも伝統的なフロア・モルティングを行っていることでも有名です。12年はボウモアモルトの代表的存在で、潮の香りとスモーキーさ、ピート香の中に爽やかな柑橘香もあり、すっきりと飲みやすい仕上がりになっています。

■SINGLE MALT SCOTCH⑧

「ラガヴーリン 16年」
産地:アイラ
「この強烈な個性を知らずしてシングルモルトを語れない」という商品コピーの通り、遠慮のないピート香と潮の香り、ドライさで多くの愛好家から“銘酒中の銘酒”と言われている1本。フィニッシュも非常にパワフルで長く余韻が続きます。蒸留所はアイラ島のラガヴーリン湾に面していて、背後の丘には仕込み水を湛える豊かな湖があります。ちなみにラガヴーリンとはゲール語で「水車小屋のある窪地」のこと。

■SINGLE MALT SCOTCH⑨
 
「スプリングバンク 10年」
産地:キャンベルタウン
キャンベルタウンで唯一安定したウイスキー造りを行っている蒸留所で、キャンベルタウンモルトの伝統を現代に受け継いでいます。製麦からボトリングまでのすべての工程を蒸留所の敷地内で管理、また「スプリングバンク 10年」は“2回半蒸留”を行っている点もユニークです。洋ナシやバニラを思わせる豊かな香りは「モルトの香水」と称されるほど。独特の塩味に甘さやコクが絶妙にマッチしています。

■SINGLE MALT SCOTCH⑩

 
「タリスカー 10年」
産地:アイランズ(スカイ島)
複雑な海岸線や切り立った山が多く、海霧が発生しやすいことから別名「ミストアイランド」と呼ばれるスカイ島。タリスカーはその島の西岸にある、島唯一の蒸留所です。「タリスカー 10年」は、まさに島に厳しく吹きつける潮風や立ち込める海霧をそのままボトリングしたような味わい。力強いピートのスモーキーな香り、舌にはピリピリとした黒胡椒の風味や塩味が残ります。

スコッチウイスキーをより深く知るための本

スコッチウイスキーの魅力を1本の記事で語り尽くすことはできません。そこでもっとディープにスコッチの世界に浸りたい方のために、案内役となりそうな何冊かの本をご紹介します。

■BOOKS①

『スコッチウイスキー、その偉大なる風景』
マイケル・ジャクソン著/小学館/5800円
英国人のウイスキーライターでありコラムニストであるマイケル・ジャクソン氏。スコットランドの全蒸留所を熟知した彼が、スコットランドの風土からスコッチウイスキーの特徴を捉えようと思い立ち開始した“蒸留所巡礼の旅”のレポート。美しい写真も多数掲載され、まるで著者と一緒に旅するように読み進むことができる一冊です。

■BOOKS②

『完全版 シングルモルトスコッチ大全』
土屋守著/小学館/4400円
ウイスキー評論家でスコッチ文化研究所の代表である土屋守氏が1995年に発刊し、ウイスキー愛好家たちのバイブルとなっている『モルトウイスキー大全』。その最新かつ完全版で、シングルモルトスコッチの知識を網羅的に得るにはうってつけの一冊。土屋氏が実際に足を運んで取材したスコットランドのすべての蒸留所のデータ、主要銘柄のテイスティング・ノートが収録されています。

■BOOKS③

『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』(新潮文庫)
村上春樹著/新潮社/649円
作家・村上春樹が、酒類メーカーがかつて発行していた季刊誌のために書いた小さな旅行記をまとめたもの。スコットランドのアイラ島で訪れた蒸留所では「アイラ的哲学」を授かり、アイルランドの町や村のパブをはしごしてアイリッシュ・ウイスキーを堪能する。ウイスキーを片手にゆっくりとその“ことば”に浸りたくなるエッセイ。

■BOOKS④

『ウイスキー・ウーマン―バーボン、スコッチ、アイリッシュ・ウイスキーと女性たちの知られざる歴史』
フレッド・ミニック著/明石書店/2970円
長く“男の飲み物”とされてきたウイスキーですが、「酒瓶に秘められたウイスキーと女性たちの知られざる歴史」とキャッチコピーにある通り、女性たちの活躍なしには今日までの発展はなかったかもしれません。シングルモルトを楽しむという文化を世界に広めたラフロイグの才女・ベシーウィルソン、禁酒法時代のアメリカに質の高いスコッチウイスキーを密輸した「バハマの女王」ことガートルード・リスゴーなど、酒の歴史を作り上げてきた女性たちの物語を紹介する文化史。

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スコッチウイスキーの世界、いかがでしたか? 琥珀色に輝く魅惑的な液体は「スコットランド」そのものだということがお分かりいただけたかと思います。その風景や匂い、時の流れをゆっくり味わってみてください。

<参考文献・サイト>
・『改訂版 モルトウイスキー大全』土屋守 著/小学館
・『モルトウィスキー・コンパニオン』マイケル・ジャクソン 著/小学館
・『ウイスキー 起源への旅』三鍋昌春 著/新潮社
・『ウイスキーの歴史』ケビン・R・コザー 著/原書房
サントリー「シングルモルトガイド」
「The Scotch Whisky Regulations 2009」



※記事の情報は2022年5月24日時点のものです。
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