食中酒にぴったり! ロゼワインの基礎知識と楽しみ方をソムリエが伝授します

ロゼワインは見た目のかわいらしい色合いから甘い味を想像しがちですが、実は近年はドライな味わいのものが主流で、食事にも合わせやすいワインです。つくり方から飲み方、相性のいいおつまみまで、今日から使えるロゼワインの知識をお届けします。

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ロゼワインとはどんなお酒?

ワインは赤ワイン、白ワイン、オレンジワイン、スパークリングワイン、そしてロゼワインと5つに大別できます。そのなかでもロゼワインはピンク色のワインで、「ロゼ(Rose)」はフランス語で”バラ色”という意味です。

醸造方法や味わいについて詳しくは後述しますが、ロゼワインは白ワインよりもコクがあり、赤ワインよりも軽めな飲み口のものが多いため、料理のジャンルを問わず、幅広い食事のシーンに合わせられます。

ロゼワインのアルコール度数は11~14%程度。色調は透明に近いピンク色から濃いピンク色まで、飲み口も甘口〜辛口までさまざまなスタイルがあります。

世界で人気のロゼワインが日本人にぴったりな理由

ロゼワインで乾杯
ロゼワインは近年世界的に消費が伸びている傾向にあります。特にフランスでは白ワインをしのぐほどの人気で、ロゼワイン一大生産地である南仏のプロヴァンスを中心に日常的に親しまれています。ひと昔前は「ロゼワインといえば甘口」というイメージが強かったですが、現在はドライな飲み口のロゼワインが主流になっています。

ドライな飲み口のロゼワインは食中酒にぴったりで、和食はもちろん、中華料理やエスニック料理との相性もいいワインです。“食に対する多様性は世界一”と言われる日本人の食生活にとって、ペアリングの汎用性が高いロゼワインはライフスタイルにとても合っているワインと言えます。日本ではまだまだ赤ワインや白ワインほど定着していませんが、日本人の食生活になじむ軽い飲み口のものが多いので、今後は日本でもより一層需要が高まっていくと予測できます。

ロゼワインの色が幅広いのはなぜ?

ロゼワインの色比較
ロゼワインは一口にピンク色と言っても、淡いものから鮮やかなもの、朱色っぽいものや紫がかったものなど色合いはさまざまです。その理由はロゼワインの醸造方法にあり、大きく分けて「セ二エ法」「直接圧搾法」「混醸法」の3種類が挙げられます。それぞれの製法でつくったロゼワインの色合いや味わいにはどんな違いがあるのか、ご紹介していきます。

ロゼワインのつくり方①│赤ワインづくりに似た「セニエ法」

セニエ法はロゼワインを醸造する製法のなかで、最も多く用いられている手法です。赤ワイン用の黒ぶどうを使用し、赤ワインの醸造方法と同じくように、ぶどうをつぶしてタンクに入れた後果汁を抜き取り、発酵させます。ぶどうの果皮と果汁が接する時間が長いため、セニエ法でつくられたロゼワインは果実味が濃厚で色調も濃い目になる傾向が強いです。生産者によっては果皮と果汁と接する時間を調節して、色調のバランスを取る場合もあります。

ロゼワインのつくり方②│白ワインづくりに似た「直接圧搾法」

直接圧搾法もセニエ法と同様に赤ワイン用の黒ぶどうを使用しますが、白ワイン醸造方法のようにぶどうを圧搾してから果汁だけで発酵を行います。圧搾する際に果皮から若干のアントシアニン色素が果汁にうつるので、色調はセニエ法のロゼワインと比べると薄めで、味わいもすっきりとした辛口になる傾向が強いです。

ロゼワインのつくり方③│黒ブドウと白ブドウを混ぜる「混醸法」

混醸法は、発酵前の黒ぶどうと白ぶどうを一定の割合で混ぜて発酵を行う方法です。あまりメジャーな製法ではありませんが、ドイツのロートリングというワインは混醸法でつくられています。現在ロートリングはほとんど生産されておらず、ドイツ国内でもあまり目にすることはありません。誤解されがちなのはあくまでも発酵前に黒ぶどうと白ぶどうを混ぜているのであって、それぞれがワインになってからブレンドしているわけではありません。また、このタイプのワインは厳密にはロゼワインと分類することはできませんが、色合いはロゼ色なのでロゼワインとして販売しているところも多くあります。

赤ワインと白ワインを混ぜてもロゼワインはつくれない?

ロゼワインのほとんどは前述した「セニエ法」「直接圧搾法」「混醸法」のいずれかでつくられていますが、赤ワインと白ワインを混ぜてつくるロゼワインは存在しないのか気になりますよね。

実はEUの規定で、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインをつくることは基本的に禁止されています。ただ、シャンパーニュのみ白ワインに少量の赤ワインを混ぜてつくる「ブレンド法(アッサンブラージュ)」が認められています。フランスのシャンパーニュ地方でつくられる「ロゼ・シャンパーニュ」のほとんどはブレンド法を用いています。

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ロゼワインの有名な生産地は?

ロゼワインの生産量世界第1位の国はフランス、第2位はスペインです。そのなかでもバカンス地としても有名なフランス南部のプロヴァンスが最大のロゼワイン産地と言われていて、プロヴァンスのワイン生産量のうち、約9割がロゼワインです。また、フランスでつくられるロゼワインのなかでも、「ロゼ・ダンジュ」「プロヴァンス・ロゼ」「タヴェル・ロゼ」は「フランス三大ロゼ」と呼ばれており、日本でも有名です。それぞれの特徴や代表的なロゼワインを紹介していきます。

フランス三大ロゼ①│ロゼ・ダンジュ(Rosé d’Anjou)
ロゼ・ダンジュはフランスのロワール地方の中でも、芸術の都と呼ばれる美しい景観が続くアンジュ地区で生産されるロゼワインです。価格は比較的リーズナブルで上質なロゼワインがつくられていて、世界各国で人気があります。ロゼ・ダンジュは土着品種の「グロロ」種のぶどうが主体です。やや甘口の仕上がりで、さわやかな果実味と酸味、控えめな甘みと渋みのバランスがよく、飲みやすいのが特徴です。

【ロゼ・ダンジュの代表銘柄】
ドメーヌ・デ・オート・ウーシュ ロゼ・ダンジュ
 
グロロ・ノワールを100%使用したフレッシュで果実味のあるやや甘口のロゼワイン。きれいなサーモンピンクの色調が目を惹きます。国内消費が多く、国外にはあまり輸出されないので現地で親しまれているワインですが、日本市場でも人気があります。

フランス三大ロゼ②│プロヴァンス・ロゼ(Provence Rosé)
ロゼワインの一大生産地のプロヴァンス。プロヴァンス・ロゼの特徴は淡い色調にあります。バラ色というよりも肌色に近く、「ローズゴールド」とも形容される淡色で、見た目からもエレガントな印象を受けます。ぶどう品種はサンソー、グルナッシュ、ムールヴェードル、シラーなどが使われます。あっさりとした飲み口に仕上がることが多く、プロヴァンスの郷土料理であるブイヤーベースや、野菜のグリル、魚介類を使った料理とよく合います。

【プロヴァンス・ロゼの代表銘柄】
ミラヴァル・ロゼ/シャトー・ミラヴァル
 
世界的スターであるブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが手掛けるロゼワイン。エレガントな見た目にすっきりした味わい、フルーティなアロマが印象的。魚介類を使ったタパスやシーフードピザに合わせて楽しみたいワインです。

フランス三大ロゼ③│タヴェル・ロゼ(Tavel Rosé)
タヴェル・ロゼはローヌ地方で造られるロゼワインで、「ロゼの女王」と呼ばれています。プロヴァンスのロゼワインと比べると、色調が濃いめで味わいもしっかりとしています。肉料理、魚料理、ピザ、パスタなど、ボリューミーなメインディッシュにも合わせられる厚みのある飲み口が特徴です。

【タヴェル・ロゼの代表銘柄】
タヴェル ギガル ロゼワイン
 
北部ローヌで有名な生産者・ギガルがつくるエレガントかつ飲みごたえを感じられるロゼワインです。グルナッシュ、サンソー、クレレット、シラーなどを巧みにブレンド。シャルキュトリー(ハムやソーセージ、パテなどの食肉加工品)や肉料理に合わせやすい味わいに仕上がっています。

ロゼワインは冷やして飲む? 最適な温度とは

ロゼワインは白ワインと同じように冷やして飲みましょう。温度が上がるとタンニンや酸のバランスが崩れ、味にまとまりがなくなってしまいます。

辛口のロゼワインなら8~10℃、甘口のロゼワインなら6~8℃が適温と言われています。甘口は温度が上がると甘みを強く感じ、逆に冷やしすぎると甘みが感じにくいため、適温でないとよさが半減してしまいます。

また、発泡性のあるスパークリングロゼはよく冷やしていた
だくようにしましょう。冷蔵庫に入れて冷やせる温度帯(3〜5℃)で問題ありません。炭酸ガスは温度が上がると抜けやすくなるため、抜栓した後もワインクーラーで保冷するなどの工夫が必要です。

ロゼワインにおすすめなのはどんなグラス?

ロゼワインとグラス
グラスは大ぶりの赤ワイングラスよりも、シャープな形をした白ワイングラスの方が適しています。大ぶりのグラスだと温度の変化が大きいので、冷えた状態をキープするためにも、小ぶりなグラスの方がロゼワインに適しています。

またリーズナブルなロゼワインをカジュアルに飲むシーンなら、脚がついていないワイングラスもおすすめです。本場南仏やスペインの暑い地域では、グラスに氷を入れてロックスタイルでロゼワインを楽しむ習慣があります。アウトドアでのシーンや暑い夏の時期に飲むロゼワインなら、脚なしのワイングラスやカジュアルなタンブラーに氷を入れて楽しんでみましょう。

タイプ別に紹介! ロゼワインと相性のいい料理

ロゼワインは前菜からメインまで通してペアリングできる汎用性がありますが、どのロゼワインでも当てはまるわけではありません。色調や味わいの違いによってどんな食材や料理との相性がいいのか解説していきます。

■甘口×淡色のロゼワインと相性のいい料理
イチゴとモッツァレラのカプレーゼ
イチゴとモッツァレラチーズを使ったカプレーゼやいちじくのフルーツサラダなど、フルーツを使った軽い前菜と合わせたり、甘さが控えめでフルーティな味わいのロゼならエビチリや生春巻きといった中華料理やエスニック料理とも合わせられます。合わせる料理に「甘辛」な要素が入っているとロゼワインがうまく調和してくれます。

■甘口×濃色のロゼワインと相性のいい料理
麻婆豆腐
淡色の甘口ロゼワインに比べて、甘みに奥行きがあり、若干の渋みも感じる場合があるので、食前酒だけでなく、食後酒にも適しています。食中酒として楽しみたい場合は、甘さがややひかえめなタイプなら麻婆豆腐やスパイシーカレーのような味付けの濃い辛めの料理とも合わせられます。

■辛口×淡色のロゼワインと相性のいい料理
白身魚のカルパッチョ
辛口×淡色のロゼワインは魚介類と合わせて楽しみましょう。白身魚のカルパッチョやブイヤーベース、サーモンフライ、貝類のアヒージョなど、バリエーションが豊富でさまざまなシーンで楽しめます。唐揚げやエビの天ぷらといった揚げ物、ペペロンチーノといったオイリーな料理との相性もよいです。

■辛口×濃色のロゼワインと相性のいい料理
角煮
辛口×濃色のロゼワインは、タンニンがあり、味わいのボリュームも強いので、鶏肉や豚肉を使った料理と好相性です。なかでも醤油ベースの和食との相性はとてもよいので、豚の角煮や肉じゃが、焼き鳥などがおすすめです。また、魚の煮付けやサバの味噌煮といった濃いめの味付けの魚料理とも相性は◎。ベーコンやサルシッチャを使ったトマトベースのパスタなどの洋食にもよく合います。完成した時の料理の色味が濃いときは、色調の濃いロゼワインをセレクトしてみましょう。

甘口から辛口、淡色から濃色まで幅広い選択肢のあるロゼワインは、和洋中問わずさまざまな食事と合わせやすく華やかな彩りを与えてくれます。ロゼワインを気軽に楽しんで、より豊かな家飲みライフをお過ごしください。

※記事の情報は2022年9月15日時点の情報です。
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