歩いて楽しむ⑩「上杉家御用達の酒」(山形県米沢市)

気持ちのいい季節になりました。今回は新しい時代にふさわしい酒を求めて、米沢の酒蔵をご案内します。

メインビジュアル:歩いて楽しむ⑩「上杉家御用達の酒」(山形県米沢市)

米沢の銘酒「東光」

山形県の南部に位置する米沢市は、雪深い盆地で酒づくりに欠かせない良質な水が豊富です。ここに日本で11番目に古いといわれる『東光』醸造元・小嶋総本店(慶長2年/1597年創業)があります。もともとは戦国武将の上杉謙信が初代となる上杉家の御用酒屋でした。山形県内だけを南から北へ流れ日本海にそそぐ最上川の源流に最も近い酒蔵でもあります。

『東光』は、酒文化研究所が運営する「全国燗酒コンテスト」や「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」、ロンドンでおこなわれるIWC(International Wine Challenge)のSake部門など、国内外のメジャーなコンテストでたびたび入賞、品質の高さは折り紙付きです。

4月に蔵を訪ねると酒造工場は要所に最新鋭の装置を導入しており、高品質酒を生み出すのは当然と納得しました。たとえば良質な酒には、原料の米の状態に合わせて適量の水を吸わせ、目的に合わせて蒸しあげ、麹が菌糸を米の奥深くまで伸ばすように条件を整える必要があります。実現するには一つ一つの工程にそのための道具・装置と技術が要りますが、この蔵ではすべてしっかり整えられていました。

また小嶋総本店は昔ながらの酒蔵の暮らしと酒づくりを見られる、酒造資料館「東光の酒蔵」を併設しています。酒蔵の一般公開はしていない同社ですが、資料館は一年を通じて見学可能です。連休中に出かけてみてはいかがでしょうか?
東光
小嶋総本店(米沢市)の『東光』は数々のコンクールで多くの入賞歴を誇る

圧巻はずらりと並ぶ木製の大桶

東光の酒蔵に入ると最初に出会うのはかつての酒蔵の帳場です。襖を取り払うと大きな広間になる昔ながらの日本家屋。その一画に商いの要となる帳場が置かれます。ピカピカに磨かれた板の間、太い柱と立派な梁、凛とした佇まいに見とれてしまいます。
酒蔵資料館
酒造資料館「東光の酒蔵」。落ち着いた風情は外国人観光客にも人気
酒屋の帳場
酒屋の帳場を再現した一画。忙しく働く店員と酒を買いにくるお客の姿が目に浮かんでくる
先に進むと現れたのは大きな杉の樽です。室町期に大きな鋸(のこぎり)が発明され、太い材木をつくれるようになり大きな桶が誕生します。それまでは甕や鏡開きで使うようなサイズの樽で酒をつくっていました。小型の容器では酒造業の大規模化は難しく、大桶が生まれた後に我々がイメージするような酒蔵が生まれてきます。

現在はステンレスやホーロータンクが多く使われています。これらは洗浄・殺菌しやすく発酵容器を清潔に保つことができます。そのため雑菌に汚染されず優良な菌を培養しやすく、昭和30年代ごろには木桶はこうしたタンクに置き換わっていきました。ただ、きれいになった酒質はおいしいけれどおもしろくないという声があり、近年は発酵容器をあえて昔ながらの木桶に戻すところが出ています。
木桶
大きな木桶が並ぶ様は迫力がある。この木桶は近隣の味噌屋から譲り受けたもの。かつては酒屋が使った木桶のお古が味噌や醤油づくりに回った。酒屋が木桶からホーローやステンレスのタンクに切り替えたため、新桶の発注がなくなり大桶をつくれる職人が激減した
分祀された三輪明神大神神社
酒づくりの神様として知られる三輪明神大神(おおみわ)神社(奈良県)。東光の酒蔵内に分祀されている

『東光』は清酒も梅酒も極上の味わい

見学の後はお楽しみの試飲とお買い物。現在は資料館を見学せず、買い物と試飲ができるようになっています。ここでしか買えない限定のお酒もいくつかあり,よく売れるそうです。売場にはいち早く「令和」ラベルのお酒がありました。どの酒もおいしいので、あれがいい、これがいいと言えないのが残念です。

清酒だけでなく梅酒もありました。この梅酒も大阪の天満天神梅酒大会で、日本一になったこともある名品です。ていねいなものづくりの精神と姿勢が徹底しているメーカーは、何をつくらせても一級品に仕上げるという好例です。

お時間のある方はこの連休中に足を運んでみてはいかがでしょうか?
 
ショップ
試飲コーナー
ショップは小嶋総本店の主要なお酒が揃う。試飲も10種類くらい無料でできる
令和ラベルの純米大吟醸
「令和」ラベルは企画担当者が「やらせてください」と強く提案して発売いしたそう
小嶋会長
小嶋会長は数年前に代々当主が名乗った彌左衛門を襲名し23代目彌左衛門となった

※記事の情報は2019年5月2日時点のものです。

  

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