おなじみの麺料理を「ぬき(麺なし)」でおつまみに

酒飲みならば一度は憧れる「ぬき(麺なし)」。近頃は麺なしラーメンが各社から続々発売されるなど、「麺なし」はグルメの新潮流としても話題を呼んでいます。今回は定番の麺料理5つを麺なしで作り、酒飲み視点で食していきます!

ライター:泡☆盛子泡☆盛子
メインビジュアル:おなじみの麺料理を「ぬき(麺なし)」でおつまみに

粋な大人の酒肴「ぬき」を家飲みで楽しむ

数多の酒飲みが「一度はこれで飲んでみたい」と憧れを抱く酒の肴、それは「ぬき」。天ぷら蕎麦などから麺を抜いたもので、蕎麦を台に見立てて「台ぬき」と称されることもあるようです。

食通として名高い作家の池波正太郎が愛した蕎麦前としても知られ、彼が贔屓にした店でそのスタイルを真似て「天ぬき」(天ぷら蕎麦)や「鴨ぬき」(鴨南蛮)を頼むファンもいるほど。粋な大人の肴という感じで格好いいですよね。

しかし、店で頼むのは「ツウぶっているように見られないかしら」「どうせなら麺も食べたい」などの葛藤もあり(筆者の場合)、なかなかありつけずにいます。

そこでひらめきました。
「家でやってみればいいじゃない!」
と。

もちろん、クオリティはお店にはるかかないませんが、まずは雰囲気だけでも予習しておけば、然る後、店でも格好よく味わえるかも〜。

そんな下心を抱きつつの「ぬき」チャレンジ。せっかくなので蕎麦だけでなくほかの麺料理も「ぬき」にしてみたら、これが予想以上に楽しいものでした。

さー、麺なしの麺料理で飲みますよー!
 

ぬきで一杯! 麺なしおつまみレシピ5品

  • 天ぷら蕎麦×熱燗
  • カレーうどん×黒ビール
  • チャーシュー麺×ビール
  • ソーキそば×泡盛
  • ナポリタン×レモンサワー

ぬきで一杯その① 天ぷら蕎麦×熱燗

ぬきで一杯その① 天ぷら蕎麦×熱燗
<材料> 
・市販の天ぷら
・市販の蕎麦つゆ
・ネギ、柚子、みつばなど好みの薬味

<作り方>
① 蕎麦つゆを温める。
② 天ぷらをトースターなどで温める。
③ 蕎麦つゆ、薬味を器に盛り、食べる直前に天ぷらを入れる。

ここがpoint
市販の天ぷらは、アルミホイルを一度丸めてから広げて乗せると、凹んだ部分に油が落ちてカラッと仕上がります。
 
抜き天ぷら蕎麦
スーパーの惣菜コーナーで求めたエビ天を使ったら、とても家庭的なビジュアルになってしまいました。これはこれで「家のぬき」って感じでいいですけどね。

つゆに浸ったエビ天の先を食み、熱燗をクイッ。天つゆよりも醤油がちな蕎麦つゆのキリッとした味が、酒でまろやかになりました。天ぷらが丼で半身浴しているようなビジュアルになかなか目が慣れませんが、冷めないうちに食べていきます。

水分を吸ってもろもろっとほどけていく衣を箸先で集めて「おっとっと……」なんて言いつつつまんだり、シャキッとしたネギで口を変えたりしつつ盃を上げ下げ。

ついに天ぬきで飲んでるんだな〜というしみじみした気持ちが、味わいを深めてくれたように思います。ただ、エビだけでは少々飽きがきてしまったので、次やるときはかき揚げも買ってこようっと。

難易度 ☆☆☆☆
麺が欲しくなる度 ☆☆☆☆☆

ぬきで一杯その② カレーうどん×黒ビール

ぬきで一杯その② カレーうどん×黒ビール
<材料> 
・めんつゆ
・カレールゥ(固形、フレークなど)
・牛肉
・青ネギ

<作り方>
① めんつゆを希釈して沸かし、ルゥで風味を加える。
② 牛肉を入れて硬くならない程度に火を通す。
③ 器に盛り、青ネギをあしらう。
 
京都のカレーうどん
筆者の住む京都ではカレーうどんの具といえば牛肉やお揚げと青ネギ。東京の編集部にそれを伝えると「珍しいですね。こちらでは豚肉と長ネギです」とのこと。それも間違いなく美味しいやつ! お試しになる場合はお好きな組み合わせでどうぞ。最近流行りのラム肉薄切りなんかでも合いそうですね。

相対するお酒を何にしようか迷いましたが、カレー×めんつゆのダシ感という強そうなタッグには、どっしりと腰を据えたビターな黒ビールなんていいんじゃないでしょうか。

うん、うん、これでよかったです。カレー風味のダシをまとった牛肉をわしわしと噛み締め、ほろ苦い黒ビールで後口をさっぱりさせて次のひと口へ。この繰り返しであっという間に完食です。黒ビールは2缶空きました。

難易度 ☆☆☆☆
麺が欲しくなる度 ☆☆☆☆

ぬきで一杯その③ チャーシュー麺×ビール

ぬきで一杯その③ チャーシュー麺×ビール
<材料> 
・チャーシュー(※)
・味玉(※)
・もやし
・ネギ
・市販のラーメンスープ(麺コーナーで売っている小分け袋など)

※ラーメン店のテイクアウトやスーパーなどで購入するのももちろんアリですが、今回は家庭でもめちゃくちゃ簡単にできるチャーシューの作り方をご紹介します。ベースになっているのは、東海林さだお先生の名エッセイ『ブタの丸かじり』に掲載されたレシピ。

なんといっても材料がたった2つなのがすごい! そして手順も驚くほどにシンプルなのです。

<チャーシュー、味玉の材料> 
・豚肩ロース塊肉…300〜400gほど
・醤油…約300ml
・茹で玉子…好きなだけ

<作り方>
① たっぷりの湯を沸騰させ、豚肩ロース塊肉を30〜40分ほど煮る。中心部に竹串などを刺してみて、透明な肉汁が出たらOK。赤っぽい肉汁が出るうちはまだ火が通っていないのでさらに煮る。
② ①とゆで玉子を耐熱性のポリ袋(アイラップ、ジップロックなど)に入れて醤油をどぼどぼと注ぎ、全体が浸かるようにする。
③ 20分ほどで味がしみるので取り出してしばらく置き、冷めてから切り分ける。
※残った醤油は煮物や野菜炒めなどに使う。筆者は大量の味玉を仕込み、煮物やスープで使い切りました。

東海林先生曰く、
「ぼくはもともと気の大きいほうではないが、大量に醤油を使わなければならない料理のときは、心臓がドキドキする。鍋に醤油をドブドブと注いで、醤油ビンの醤油がドブドブ減っていくのを見ていると、もったいなくてもったいなくてハラハラドキドキしてきて、それでもまだドブドブ注がなければならないときなど、このまま死んでしまいたい、と思うほど絶望的な気持ちになる。醤油がドブドブ減っていくのは死ぬほどつらい」

東海林さだお 『ブタの丸かじり』文春文庫「簡単チャーシューの作り方」より
その気持ちが痛いほどわかるくらいの量の醤油を使うので覚悟なさってください。東海林先生はなるべく量を減らすべくペットボトルの上部をカットしたものを使っておられましたが、ポリ袋の方がより少ない量ですむように思えます。
チャーシュータレ漬け
それでもこんな感じに醤油をドブドブ注がねばなりません。

チャーシューと味玉ができたら、ラーメンスープを作り、茹でたもやし、ネギとともに盛りつけましょう。
 
チャーシュー麵
自家製だとチャーシューを心置きなくてんこもりにできるのが最高。使ったのは醤油だけだとは思えないほど、お店っぽい味になっています。

筆者は脂と赤身のいいとこどりな肩ロースが好きなのでこれを使いましたが、あっさりめがお好きならモモ肉、こってり好みならバラ肉で作ってみてください。

で、合わせるのはビール一択でしょう。豚の甘みと醤油の風味がガツンときたところによーく冷えたビールをキュビビビビ! 文句なし!

不思議だったのが、もやしを食べていると麺と錯覚しそうになるんですね。肉を噛みしめるのと違ってすするように食べるからだと思うのですが、何度も「あれ、なんで麺がないんだっけ」と考えてしまいました。

そういえば、市販のカップ麺でも「麺なしラーメン」なんてのがありますね。わかめとスープだけのものとか、かなーりヘルシー。でも骨の髄までいやしい私なら、きっと逆にラーメン欲に火がついて、完食したのちにラーメン屋に猪突猛進してしまいそう……。

難易度(チャーシュー自作) ★★☆☆☆
難易度(チャーシュー購入) ☆☆☆☆☆
麺が欲しくなる度 ★★★★

ぬきで一杯その④ ソーキそば×泡盛

ぬきで一杯その④ ソーキそば×泡盛
<材料> 
・軟骨ソーキ(レトルト)
・沖縄そばのだし(濃縮タイプ)
・青ネギ
ソーキそば素材
ソーキやそばダシは沖縄物産店やネット通販で入手できます
<作り方>
① 軟骨ソーキを袋の表示通りに温める。
② 沖縄そばのだしを適宜希釈し、①を入れて青ネギを散らす。
 
麺なしソーキそば
筆者の故郷・沖縄のソウルフードです。ソーキというのは豚のアバラ肉のこと。骨が並んでいる様子が「櫛」(沖縄の方言では「スキ」)に似ているため、スキ→スーキ→ソーキと変化したといわれています。

スペアリブとして食べられる硬い骨付きの肉は「本ソーキ」、軟骨周りの肉は「軟骨ソーキ」と呼ばれていて、最近はソーキそばといえば軟骨タイプが主流。沖縄そばにのせる以外にも、居酒屋メニューで登場することもあります。

自作するのはとても大変なので、今回はレトルトを使いました。
以前自作したソーキそば
ちなみに以前自作したソーキそばはこんな感じ

甘辛くてこっくりした味付けのソーキと、ドライな泡盛の相性のよさは言わずもがな。泡盛は島人流の薄い水割りに、タイミングよく入手できた生のシークヮーサーを搾っています。

沖縄気分が味わえるよきマッチングでした。沖縄そばの麺が大好きなので、途中で「やっぱり麺もほしい」と思ってしまったのは堪忍どすえ。

難易度 ☆☆☆☆☆
麺が欲しくなる度 ★★☆☆☆

ぬきで一杯その⑤ ナポリタン×レモンサワー

ぬきで一杯その⑤ ナポリタン×レモンサワー
<材料> 
・ウインナー
・玉ネギ
・ピーマン
・バター
・ケチャップ
・醤油
・玉子
・マヨネーズ
・粉チーズ、タバスコ(お好みで)

<作り方>
① バターで玉ネギを炒め、しんなりしてきたらウインナーを加える。
② 具を鍋の端に寄せ、空いたスペースでケチャップを中弱火で焼くようにして香りを出す。煮詰まって色が濃くなってきたら、醤油を加えて混ぜる。
③ ピーマンを加えて軽く火を通し、全体を混ぜる。
④ 溶き玉子にマヨネーズを加えて混ぜ、別の鍋で薄焼き玉子を作って添える。
 
麺なしナポリタン
実は以前にも「麺を茹でるのが面倒くさい」という理由で麺なしナポリタンをつまみにしたことがありました。

ぱっと見は普通のナポリタンなのに、どこまで掘っても麺が出てこないという現実に戸惑いながら飲んだものです。自分で作ったのにね。

そして今回もやはり「麺……ないのか」と心でつぶやいてしまうこと数回。それでもほんのりバターが香るケチャップ味はジャンクな美味しさで、爽やかなレモンサワーが進みました。

うちにはなぜかこの鉄板セットがあるので、薄焼き玉子を敷く形にしましたが、鉄板がなくてもまったく問題ありません。別で作って添えればいいだけですので。味つけがしっかりめなナポリタン(の具)の箸休め的に重要なポジションを占めるため、ぜひとも薄焼き玉子をお忘れなく。

難易度 ★★☆☆☆
麺が欲しくなる度 ★★★☆☆


***

麺なし麺料理は「知っている料理なのに初めての味わい」になるのが新鮮で楽しみどころだと思いました。

糖質制限やカロリーオフ狙いではなく、純粋に酒のつまみとして「ぬき」を家飲みライフの仲間に加えてみてください。

※記事の情報は2020年9月23日時点のものです。
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