西村まどかの目指せ!唎酒師⑤ 地元福井の酒蔵めぐり〈その1〉

タレントの西村まどかさんが「唎酒師」の資格をめざして日本酒の勉強を行う連載コラムの第5弾。今回は地元・福井県の酒蔵を見学します!

ライター:西村まどか西村まどか
メインビジュアル:西村まどかの目指せ!唎酒師⑤ 地元福井の酒蔵めぐり〈その1〉

まどかの学び① 見学できる酒蔵もある

この連載ももう第5回です。これまでに日本酒のタイプや製法、飲み方、料理との合わせ方、サービスの仕方など、いろいろ勉強してきましたが、日本酒をつくっている酒蔵にはまだ一度も行ったことがありません。

一般人が酒蔵を見学させてもらえるかどうかも知らず、そもそも日本酒は大好きだけれど酒蔵を訪ねるという発想がありませんでした。

そこに唎酒師の受験をサポートしてくださっている酒文化研究所の山田聡昭さんから、「西村さん、こんど酒蔵に行ってみませんか? せっかくだから地元の福井の蔵がいいですね」とうれしいお誘いです。

山田さんによると、見学を積極的に受け入れている蔵は少なくなく、酒蔵のホームページにはたいてい見学希望への対応が記載されているのだそうです。さらに各地の国税庁がつくっている「酒蔵マップ」には蔵の所在地と見学の可否も書かれているのだとか。ネットで検索するとすぐにわかるとのことでした。
黒龍酒造社屋
黒龍酒造の社屋は昔ながらの日本建築。直営ショップがあり永平寺をお参りした後で立ち寄る方が多いそう

まどかの学び② 酒づくりは伝統を受け継ぐだけじゃない

私が日本酒好きになったのは、地元福井のお酒がおいしかったからですし、とても身近だったからです。故郷の酒蔵を訪ねることになって前日からドキドキワクワク、2日かけて3つの酒蔵に足を運びました。

最初に訪ねたのは、水野社長が福井県の酒蔵の団体の会長をされている黒龍酒造(永平寺町)。お坊さんの厳しい修行で知られる永平寺のすぐ近くです。一般の見学は受け入れていないのですが、今回はこの連載の取材のために特別に受け入れていただきました。

そして蔵に着いた瞬間、そのオーラと迫力に驚きました。青空にそびえ立ち、壁の黒龍の文字がかっこいいです。
酒造工場
酒造工場は本社のそば。大きく頑丈そうな建物に圧倒される
酒づくりでは各工程で独自の創意工夫を凝らしているそうで、お酒がおいしくなる新しい設備の導入にも積極的。伝統を守りつつ、常にアップデートを続けているそうです。撮影禁止な部分もあり、伝統を大切にしながら変化し続ける黒龍プライドを感じました。

まどかの学び③ 酒蔵のあふれる郷土愛

僭越ながら水野社長にたくさんお話しを聞かせていただきました。最初、厳格そうな方だと感じたのですが、とても穏やかでお洒落な方でした。

水野社長は、以前、フランスを訪ねた際に、ワイン文化やワイナリーを巡る観光プログラムに触れて、地元福井の自然や文化を大切にする気持ちが一段と強まったとおっしゃいます。福井の米と水で、福井の食に寄り添う酒づくり目指すと熱心にお話しくださり、とても勉強になりました。

なかでも心に残った言葉は「このお酒達は娘のようなものだから、綺麗に嫁入りさせたい」です。ボトルやラベルにもこだわっていて、福井名産の越前和紙や織物を使ったり、手作業でラベルを貼ったり、リボンを付けたり、木箱に詰めたり。一本一本、丁寧に大切に、愛情が込められているのでした。
水野社長と蔵の前で記念撮影
せっかくなのでマスクを外してダンディな水野社長と蔵の前で記念撮影

まどかの学び④ お燗でもおいしい大吟醸

そして本社から少し離れた「兼定島 酒造りの里」に移動して試飲です。蔵の方からひとつひとつ説明を聞きながらいただきました。たくさんのこだわりや工程を伺った後だからでしょうか、いつも以上においしく、味の違いがよくわかかったように思います。
説明をしっかり聞いて一生懸命試飲しました!
説明をしっかり聞いて一生懸命試飲しました!
『黒龍 しずく』『九頭龍 大吟醸』『黒龍 あどそ 純米大吟醸』『黒龍 貴醸酒』
試したのは『黒龍 しずく』『九頭龍 大吟醸』『黒龍 あどそ 純米大吟醸』『黒龍 貴醸酒』。『あどそ』は大野市阿難祖地区で栽培された上質な酒米「五百万石」でつくった限定品
どれも言葉で言い表せないほどおいしかったのですが、なかでも驚いたのはお燗で楽しむようにつくったという『九頭龍 大吟醸』です。かつて大吟醸は冷やして飲むのが常識だったそうで、私もそのイメージがありました。それを覆してお燗がおいしいというこの商品が登場した時には、日本酒業界に衝撃が走ったそうです。

同行してくれた酒文化研究所の山田さんは、全国燗酒コンテストを設計し今も運営に携わっています。「きれいな味わいの大吟醸も低温でゆっくり熟成させると、温めた時に豊かな味わいが膨らみます。今度は燗を集中的に勉強しましょうね」とトレーニングをプッシュしてきました。

『九頭龍 大吟醸』はお燗すると、華やかで、上品で、やわらかくて、飲んでいてゆったりと気持ちいい気分になりました。まさに計算され尽くしたおいしさです。

黒龍酒造では適温の燗を上品に楽しめる道具も考案され、お得意先の飲食店におすすめしてきたそうです。お燗で提供してくださいとお願いしても、お店によって温度や酒器がまちまちなので、『九頭龍 大吟醸』を十分に楽しんでもらうように工夫されたのだと思います。
『燗たのし』に熱い湯をはり徳利を沈め。頃合いを見て引き上げる。好みの温かさでゆっくり味わえる
『燗たのし』に熱い湯をはり徳利を沈め。頃合いを見て引き上げる。好みの温かさでゆっくり味わえる

まどかの学び⑤ 季節のお酒と旬の食材を合わせる楽しみ

初日の酒蔵見学は黒龍酒造だけ、晩は福井市内の「のちのち」へ。こちらは日本酒が楽しめるお店で、私も昔から大好きです。お料理もおいしくて、福井のお酒の品揃えが豊富で、いろいろ教えてもらっていました。それに、なんと言っても、女将さんがひってもんに(福井弁:とっても)美人なんです。

当たり前ですけれど周りの皆さんが思いっきり福井弁なので、私も福井弁丸出しでリラックス。やっぱり地元はいいですね。
「のちのち」の看板
「のちのち」は片町の入口近くの2階。なかなか予約が取れない人気店
この日、最初に出てきたお酒は、女将さんイチオシの『純米大吟醸 微発砲 白岳仙 み空』。昼間、とても暑かったので微発砲が心地よく、夏らしいフレッシュでフルーティーな味わいは、女性に受けそうです。実は明日、このお酒をつくっている安本酒造(福井市)を訪ねます。思わぬところでいい予習ができました。

このお酒で鱧のお刺身。鱧はさっぱりしながらも、噛むほど甘みが広がり、『白岳仙』のさわやかな香りと旨味が鼻から抜けていきました。
夏らしいお酒とお料理の組み合わせ。見た目も涼しげです
夏らしいお酒とお料理の組み合わせ。見た目も涼しげです
そして印象的だったのが、こちらのひと品です。福井は油揚げ消費量が全国一位で、私も小さい頃から食べてきたのですが、日本酒のおつまみにしたことはありませんでした。周りのお野菜はさっぱりした酢漬け。これに『純米吟醸 無濾過生原酒 雲の井 あらばしり』を合わせました。生原酒らしい濃厚さと旨味が油揚げの甘みとぴったり。でも重すぎることはなくすっきりいただけました。
油揚げは福井県民のソウルフード。酒の肴にもおいしいのでした
油揚げは福井県民のソウルフード。酒の肴にもおいしいのでした
〆は私の大好き越前おろし蕎麦。締めと言いながらお酒も。『純米原酒 越前岬 九頭竜』です。ほんのり酸味のある味の締まったお酒で、まさに〆にぴったりでした。
大根おろしでさっぱり食べるのが越前そば。〆はこれです
大根おろしでさっぱり食べるのが越前そば。〆はこれです
どのお料理もお酒もおいしくて、すべてを書き切れないのが申し訳ないのですが、いろいろなペアリングのさせ方があるのは、料理との相性の幅広い日本酒ならではかもしれません。そのうえ季節酒や旬の食材があり、旬の物でも年によって味も違って、組み合わせは無限にありそう。やっぱり日本酒は楽しいですね。

さて、明日は『白岳仙』醸造元の安村酒造と『常山』醸造元の常山酒造を訪ねます。次回のレポートをお楽しみに。
 
最後に美人女将とツーショット
最後に美人女将とツーショット

※記事の情報は2020年9月28日時点のものです。
 
▼参考サイト
西村まどか Instagram Twitter

日本酒のソムリエ唎酒師

  

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