2022年はビールがブームに? 王者「アサヒスーパードライ」もフルモデルチェンジ

一昨年秋に減税されたビールは、コロナ禍での家飲みシフトも重なって家庭用での消費が好調。このタイミングで「アサヒスーパードライ」は発売36年目にして初のフルモデルチェンジに踏み切る。ビール復活の年となるのか。

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キリンは既存ブランド強化

例年、1月初旬に大手ビールメーカーはその年の事業方針説明会を開催する。今年は1月6日に揃って会見をおこなった。

午前10時、東京・八重洲の会場で口火を切ったのはキリンビール。多くのメディアが詰めかける中、堀口社長は「ブランドと人材を磨き上げる」と基本方針を述べ、好調な「キリン一番搾り」と新ジャンルの「本麒麟」の露出をさらに高め、トライアルを促す機会づくりに全力で取り組むとした。新製品を出さず、既存の中核ブランドを磨き上げることに重点を置いた粘りの戦略である。
キリンビールの堀口英樹社長(左)と山形光晴常務(右)
キリンビールの堀口英樹社長(左)と山形光晴常務(右)
「キリンホームタップ」にクラフトビールを追加
家庭で樽生ビールを楽しむ「キリンホームタップ」にクラフトビールを追加。経済性と高付加価値に二極化が進むビール類のニーズに応える

昨年は家庭用ビールが堅調

各社が発表した昨年の実績は下表のとおり。社ごとに発表内容が異なるので正確には比較できないが、おおよその動向は掴める。

最大の特徴は全社とも「ビールが好調」だったことだ。飲食店での酒類消費は低迷を余儀なくされたが、家庭用ではビールがよく動いた。キリンは前年比104%、サントリーは家庭用缶ビールが126%、サッポロも99%と健闘した。発泡酒や新ジャンルなどリーズナブルなビール風の商品が登場してから「ビール」は17年連続で減少してきたが、各社家庭用の缶ビールは前年を大きく上回り復調気配が濃くなっている。
ビール4社の2021年実績前年比

2022年目標はビール2桁増

ビール類は来年(2023年)の秋、そして2026年の秋に酒税率の改正が予定されている。ビールは2段階で減税となり、これから数年間は追い風が吹き続けると予想される。これまで酒税率の低い新ジャンルに押されてきたが、酒税率が同じになるこの機会をとらえて復活を狙う。

下表は今季の目標数値だ。全社がビールは2桁増を計画しており、発泡酒と新ジャンルが前年並みの計画であるのとは対照的だ。ここ数年毎年2桁増で推移してきているRTDやアルコールテイスト(ノンアル・微アル)並みの高い目標地となっている。
ビール4社の2022年目標

新「アサヒスーパードライ」は2月下旬から順次

キリンに続いて12時から会見を開いたのはアサヒビールだ。昨年は主力の「アサヒスーパードライ」が前年比93%と苦戦した。ビールのトップブランドとして君臨する「アサヒスーパードライ」が発売されたのは1987年である。それまでシェアを下げ続け最下位転落という声すら出ていたアサヒビールだったが、「アサヒスーパードライ」の大ヒットで復活し、その後、キリンビールを抜いてトップに躍り出る。

今や「アサヒスーパードライ」は、知名度、好感度ともたいへん高いスーパーブランドである。しかし、経済的な新ジャンルに押され、さらにハイボールや缶チューハイの成長でビール市場全体がシュリンクし、近年は数字を落としてきた。依然としてビールのナンバーワンブランドであり、2位の「キリン一番搾り」を大きく引き離してはいるが、このままじり貧を続ければ輝きを失うことは免れない。

どこかで変えなければならないならば、ビールに追い風が吹いている今が好機と見たのであろう、アサヒビールは今春、「アサヒスーパードライ」を初めてフルモデルチェンジすることを発表した。

新しくなった「アサヒスーパードライ」は2月下旬から市場に投入され、3月17日頃にはすべて切り替わる見込み。既存ユーザーだけでなく新しい「スーパードライ」を試してみたい方は多いだろう。現行タイプを自宅にキープして、新「アサヒスーパードライ」と飲み比べてみることをおすすめする。
アサヒの塩澤賢一社長(右)と松山一雄専務(左)
フルモデルチェンジを発表するアサヒビールの塩澤賢一社長(右)と松山一雄専務(左)
新旧「スーパードライ」
左が新「スーパードライ」。会見では現行品との比較試飲も実施。飲んだ瞬間の飲みごたえを強化し、スッとキレる後味はこれまでのまま
新旧スーパードライパッケージ
新「スーパードライ」(左)はブランドロゴを大きく配し、ラベル部分をマット(艶消し)処理して強弱をつけ、飲みごたえとキレのコントラストの強さを表現

糖質ゼロ「パーフェクトサントリービール」もリニューアル

続いて午後2時からサントリーが会見を開いた。同社も家庭用ビールの好調さを強調し、昨年発売した糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」のリニューアルで躍進を狙う。「糖質ゼロ」など機能系といわれるカテゴリーは、コロナ禍で健康意識の高まりを背景に、好調なビールのなかでも特に好調を続けている。

今回のリニューアルでは中身とデザインの両方をブラッシュアップする。味わいはさらに力強い飲みごたえを実現し、糖質ゼロとは思えない仕上がりであった。デザインは「PSB(パーフェクトサントリービール)」のロゴを際立たせ、「糖質ゼロ」を端的にアピールする。

また、飲食店に強いサントリーらしく、業務用の樽生も発売する。飲食店では樽生ビールは一種類しかないことが多い。そこに糖質ゼロの樽生ビールを提案するという。糖質を嫌ってウイスキーハイボールやレモンサワーを選ぶ人は少なくないが、彼らを再びビールに引き戻すことができるかもしれない。
「パーフェクトサントリービール」を担当する稲垣亜梨沙さん
「パーフェクトサントリービール」を担当する稲垣亜梨沙さん。初年度200万ケースを販売したこの商品をリニューアルして、今年は1.5倍の300万ケースを狙うという
リニューアルした「パーフェクトサントリービール」
リニューアルした「パーフェクトサントリービール」。メリハリのあるすっきりしたパッケージに変身。味わいは一段とリッチに。1月25日から順次切り替わる。飲食店向けの樽生も発売され、お店でも「糖質ゼロ」ビールを楽しめるようにする
※記事の内容は2022年2月3日時点のものです。

  

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