【ピスコ】ペルーの蒸留酒ピスコってどんなお酒?(1)

「ピスコ」という酒をご存じだろうか? 南米のペルーでブドウからつくられる蒸留酒で、カクテル「ピスコサワー」が大人気となって欧米を中心に広く飲まれるようになった。この酒の魅力を石井豊さん(Bar Super Nova)にお聞きした。

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ピスコの魅力をお聞きしました!

今年の1月、東京でペルーの蒸留酒ピスコのセミナーがあると聞いて足を運んでみた。講師は横浜のBar Super Novaのオーナーバーテンダーである石井豊さん、店を1人で営業する傍らインポーターや日本ピスコ協会の協力を得て、手弁当でこのセミナーを各地で開催していくという。

この日、石井さんはひととおりピスコの成り立ちを説明したあと、ペルーで訪ねたピスコ生産者やバーの画像を示しながら、ピスコが現地でどのように飲まれ愛されているかを語り、試飲サンプルを順にテイスティングしていった。聴講後に「なぜピスコにそこまでの情熱を傾けるのかお話をうかがいたい」とお願いするとご快諾いただき、さっそくJR関内駅からほど近いBar Super Novaを訪ねた。
セミナー風景
バーテンダーなど業界関係者向けの自主セミナーでプレゼンする石井さん

ピスコはブドウ原料の単式蒸留酒

―先日のセミナーではお世話になりました。今日はピスコの成り立ちと石井さんご自身の普及活動について話をお聞きしたいと思っています。よろしくお願いします。早速ですがまったくピスコを知らない方に、この酒はどう説明するのがよいでしょうか?

石井 ピスコは南米のペルーでつくられている蒸留酒です。隣のチリでも製造されていますが製法が異なり、私がおすすめしているのはペルー産のものです。ペルーではピスコは原産地呼称制度で定められた5つの地域でつくられています。原料はブドウで、利用できる品種も8品種が指定されています。ブドウの発酵液を単式蒸留器で1度だけ蒸留し、加水することなくボトリングします。アルコール度数は38度~48度で、落ち着かせるために最低3ケ月タンクで貯蔵します。

――チリ産とはどこが違うのでしょうか?

石井 チリ産は単式蒸留器で複数回蒸留あるいは連続式蒸留器を使い、アルコール度数を調整するために加水するほか、樽で貯蔵するものもあります。

――ペルー産とは随分違いますね。

石井 はい。ペルーのピスコは、チリ産よりもブドウ品種の個性を楽しみやすいと思います。そして、たいへんバラエティに富んでいます。

原料と製法によって3タイプに分かれており、ひとつはプロと呼ばれる単一のブドウ品種だけでつくるタイプです(モストヴェルデを除く)。

もうひとつはアチョラドと呼ばれるブレンドタイプで、蒸留液をブレンドするやり方のほか、発酵液の段階でブレンドするやり方、さらに発酵前のブドウをブレンド、あるいはジュースをブレンドするやり方があります。

3つ目はモストヴェルデというスタイルで、発酵途中のものを蒸留します。発酵途中なので発酵液のアルコール度数が低く、より多くのブドウが必要になります。
石井さんはBar Super Novaのオーナーバーテンダー
石井さんはBar Super Novaのオーナーバーテンダー
―ホワイトブランデーの仲間だと考えていいですか?

石井 どう分類するかは難しいところで、ブドウ原料の蒸留酒だからブランデーと言いたくなる気持ちはわかりますが、その土地の歴史や文化の中から生まれた酒を、こちらの都合で好き勝手に分類するのには違和感があります。私は現地の人の気持ちや考えを尊重したいので、ピスコはピスコと説明します。
 

ピスコ誕生の歴史的経緯は?


――なるほど。ピスコ誕生の歴史的経緯はどのようなものでしょうか?

石井 南米の多くの国がそうであるようにペルーはスペインの植民地でした。16世紀にスペインがブドウを持ち込んでワインづくりを始めるのですが、本国がペルーでのワインづくりを禁止した時代があったようです。「ブドウ栽培はいいがワインをつくるのは駄目だ」となったためにブドウの発酵液を蒸留したピスコが発達したと言われています。

―ピスコの産地は原産地呼称制度で5地域が定められているとのことでしたが、ペルーの1部に集中しているでしょうか? それとも国内のあちこちに点在している?

石井 中部で首都のあるリマから南の沿岸部に、イカ、アレキパ、モケグア、チリとの国境に近いタクナと並んでいます。日本に正規で入ってきているピスコはほとんどがイカ産のもので、日本では知られていませんが、イカはペルーでのワイン産地でもあります。
ペルーのピスコ産地は5つ
ペルーのピスコ産地は5つ

ピスコの現地での飲み方は?

―現地ではピスコはどんな飲み方で飲まれているのでしょうか?

石井 ポピュラーなのは「ピスコサワー」です。ライムジュース、卵白、シュガーシロップを使った、甘みと酸味が調和したカクテルです。

―ショートカクテルは日本ではカクテルバーでないと飲めませんが、ペルーでは普通の酒場でピスコサワーが飲めるのでしょうか? 日本では焼酎をチューハイやお湯割りなどにしてアルコール度数を下げて食事をしながら飲みます。広く日常的に飲まれるようになるのは、ショートカクテルではなくロングカクテルのような気がします。

石井 もちろんペルーにはワインもビールもありますし、ピスコの代表的な飲み方としてよく知られているのがピスコサワーということです。日本ではペルー料理のレストランでも提供しています。現地でも多くの店で飲むことができると思います。ロングカクテルではジンジャーエールなどで割る「チルカノ」というカクテルがポピュラーですね。
ピスコサワー
ピスコサワー。卵白をシェイクしたふわふわの口当たりとさわやかな酸味が特徴

ピスコをおすすめする理由

―ところで石井さんがピスコに嵌った理由は何だったのですか? いろいろなお酒があるなかで、なぜ、ピスコだったのかお聞かせください。

石井 そうですね、バーテンダーとしておもしろい酒を見つけたというのが1番でしょうか。もともと自分はいろいろ新しいチャレンジをするタイプのバーテンダーなのですが、広く世界を見渡してみると日本では知られていない素晴らしいカクテルがたくさんあります。

私がバーテンダーを目指したころ、教本とした多くのカクテルブックにはジンやウイスキーベースのカクテルはたくさん載っていましたが、ピスコもピスコサワーも載っていませんでした。日本には1部のカクテルしか紹介されてこなかったということです。でも、世界中あちこちにその土地で生まれた酒の、現地の素材を使った素敵なカクテルがある。
独自にフレーバードしたスピリッツ
Bar Super Novaでは毎月、オリジナルのカクテルを提供。独自にフレーバードしたスピリッツも豊富だ
―そうした探求心に誘われて活動していく中でピスコに出会ったとして、なぜ、ピスコだったのでしょう? 

石井 この10年くらいでしょうか、カシャッサやメスカルも日本でも知られるようになってきて、熱心に取り組んでいるバーテンダーたちが何人もいます。検定などの資格制度も立ち上がってきているものもありますが、ピスコはもっとも後発です。そのようななかで自分はピスコの普及のために何ができるのかと考えて、自分が気に入った銘柄をインポーターさんに輸入してもらい、その商品を紹介しながらピスコを広めてみようと思いました。私がその商品を教材にしてピスコセミナーを開いてピスコを置く店を増やしていくという活動です。

―先日、聴講させていただいたピスコセミナーがその第1回ですね。あれから何回かおやりになりましたか?

石井 2月に埼玉でやり、3月は青森、4月は山口・広島でやる予定です。

先日のようにプロ向けで、試飲もストレートとトニックウォータで割ったものの比較というコンパクトな形もあれば、私がゲストバーテンダーとして入らせてもらって、お客様にもピスコをお出しするケースもあり、会場をご提供いただくお店と相談しながらさまざまな形で進めています。

―以前からピスコセミナーは開いていたのですか。

石井 ええ、かれこれ20回くらいやっているのではないでしょうか。バーテンダー仲間に声をかけたり、SNSで希望を募ったりして、マンツーマンになることもあれば、何人かバーテンダーが集まってくれる場合もあります。 

(後編に続く)

※記事の情報は2022年5月12日時点のものです。

  

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