「東京 インターナショナル バーショー 2025」に行ってきた

毎年5月に開催される「東京 インターナショナル バーショー」は誰でもバー文化を体験できる機会です。国内外の酒類メーカーや商社のブースが50も並び、腕利きのバーテンダーがカクテルを提供します。今年も気になるカクテルやお酒がいくつもありました。その模様をご紹介します。

メインビジュアル:「東京 インターナショナル バーショー 2025」に行ってきた

これぞ洋酒のブランドで展開『ザ・ディーコン』『ブンブー』『季の美 京都ドライジン』

人気が年々高まっているバーショーですが、今年も大勢のバーファンが駆け付け、初日(5月10日)の午後2時には入場制限がかかっていました。例年、午前11時の開会時には入場を待つ長い列ができますが、会場内が人でいっぱいになると、お客さんが退出した分だけ入場させざるを得ません。入場は開会時か、空き始める午後4時以降がスムーズなようです。
毎年、会場に沿って入場を待つ長い列ができる
毎年、会場に沿って入場を待つ長い列ができる

今回、最初に目が留まったのは、茶色のフレームのゴーグル型のサングラスをかけたお客さんがあちこちにいる景色でした。SF映画に出てくるようなゴーグルはスコッチウイスキー『ザ・ディーコン』ブースで配っていたもので、SNSで写真を投稿すると貰えました。熟成年数や構成原酒、樽の種類など酒そのものを語るウイスキーブランドが多いなかで、「常識破りのスコッチ、フルーティーとスモーキーの調和」と味わいだけをアピールしています。
「ザ・ディーコン」のゴーグルをつけてアピールするスタッフ
『ザ・ディーコン』のゴーグルをつけてアピールするスタッフ。「マッドマックス」や「北斗の拳」を連想するのは50歳以上か?

その隣にはダークラムの『ブンブー』。ボトルに大きく「X」のマークが埋め込まれたデザインは一度見たら忘れられません。カリブ海のバルバドス島生まれのこの酒は、砂糖を加えているのではないかと思うほど強い甘みを感じました。バナナやマンゴーのような南国のフルーツを思わせる香りも魅力的です。
「ブンブー」8種類のサトウキビを使い分けて複雑な味わいを実現しているそう
『ブンブー』は、8種類のサトウキビを使い分けて複雑な味わいを実現しているそう

次に現れたのはジャパニーズクラフトジンのパイオニア『季の美 京都ドライジン』です。2014年に京都で誕生したこの酒は、今や世界中で飲まれるグローバルブランドになりました。茶や柚子の香りが日本を感じさせます。ブースには立派な盆栽が置かれ、スタッフは和装で提案していました。
和をアピールする「季の美」
和をアピールする『季の美』。ここまでの3つはペルノ・リカール・ジャパンのブースで、素材よりもブランドをしっかり出すプレゼンが印象的だった

構成原酒を試す至福『富士山麓』

キリンビールのブースでは同社のキリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所のフラッグシップ商品『富士山麓』の構成原酒を試せました。3種類のグレーンウイスキーと2種類のモルトウイスキーです。こうした試みは20年くらい前のウイスキーが売れなかった時代には、ウイスキーライブやウイスキーフェスティバルなどの試飲イベントの定番メニューで、もちろん蒸溜所に行けば「ぜひ、試してみてください」と薦められたものでした。世界中がウイスキーに注目する今とは隔世の感があります。
ウイスキーは複数の原酒をブレンドして味わいを固めるが、いくつか鍵になる主要な原酒がある
ウイスキーは複数の原酒をブレンドして味わいを固めるが、いくつか鍵になる主要な原酒がある

そしてキリンビールと言えば『フォアローゼズ』です。2015年にケンタッキー州の蒸溜所を訪ねましたが、敷地は手入れが行き届いて美しく、案内してくれた方々はフレンドリーで心地よい記憶しかありません。「フォアローゼズ・シングルバレル」は数々のウイスキーコンテストで最高賞を受賞しており、レギュラー商品もバランスの良い上品な味わいで、ぜひ試してほしいです。
「フォアローゼズ・ブラック」は日本向けのブレンドでスパイシーな味わいが印象的
「フォアローゼズ・ブラック」は日本向けのブレンドでスパイシーな味わいが印象的
フォアローゼズ蒸溜所の入口
フォアローゼズ蒸溜所の入口。ほどよい広さで庭園がよく手入れされていた(2015年撮影)
ゲストハウス
ゲストハウスではショップと製法や原材料の展示。自由に出入りできた(2015年撮影)
蒸溜前の発酵工程
蒸溜前の発酵工程。アポはとっていなかったが、せっかくだからとスタッフが招き入れてくれたので好感度は爆上がり(2015年撮影)

ニッカウヰスキーブースでバーテンダーの技を堪能

ニッカウヰスキーブースは現地のバーの雰囲気をそっくりに再現したデザイン・演出で、今回はなんとザ・ワールド50ベストバー2024年と今年、連続して第1位に格付けされた「ハンドシェイク・スピークイージー」(メキシコシティ)です。ブースは現地のバーの雰囲気をそっくりに再現したデザイン、演出で来日したバーテンダーたちも納得していたようです。

この日はニッカ製品を使ったカクテルが5種類提供され、私が選んだのは「ビッグ・イン・ジャパン」。『ニッカ フロム ザ バレル』をソーダで割り、大葉を1枚添えたカクテルです。最近は『フロム・ザ・バレル』も手に入りにくくなりましたが、日本で1980年代に発売された数々のウイスキーのなかで、今も残っている数少ない商品です。

隣のカウンターではニッカの主要製品を試飲でき、先ごろ発売された『フロンティア』を試してみました。
ハンドシェイク・スピークイージーの「ビッグ・イン・ジャパン」
ハンドシェイク・スピークイージーの「ビッグ・イン・ジャパン」がこれ。いつかメキシコシティの店にも行ってみたいものだ
ニッカの基本的なラインナップを揃えた試飲カウンター
ニッカの基本的なラインナップを揃えた試飲カウンター。スタッフも来場者も和気あいあい

『iichiko 彩天(さいてん)』が遂に日本で発売

本格焼酎で唯一ブースを出店し続けているのは「いいちこ」の三和酒類(大分県)です。同社は、国内でバーに取り扱ってもらうのは輸出と同じ、地道に商品の魅力を丁寧に伝えて、理解してもらうと言い続けてきました。そうした活動のなかでたどり着いた答えのひとつが和ピリッツ『TUMUGI』です。商品が良くても“焼酎”というだけで門前払いされてしまうため、焼酎の技術の粋を集めてスピリッツ規格の商品を開発したのでした。『TUMUGI』は国際的なカクテルコンテストに出場するバーテンダーが、日本らしさをアピールするカクテルづくりの格好の素材となり、上位入賞をサポートしてきました。

こうした下地の上で満を持して発売されたのが『iichiko 彩天』です。麹のうまみを最大限に表現した麦焼酎で、米国のトップバーテンダーと共同開発したこの商品は、アルコール度数がジンやウイスキーに近い43%でカクテルベースに最適です。アメリカで先行発売され、カクテルコンテストを開催してきましたが、今年6月17日から日本でリリースされます。

いいちこブースでは日本のトップバーテンダーと海外で活躍する日本人バーテンダーが、『iichiko 彩天』のカクテルを振舞い大いに盛り上がりました。
バー ベンフィディックの鹿山博康さん(左)とニューヨークのバー マルティニーズの渡邉琢磨さん(中)。
バー ベンフィディックの鹿山博康さん(左)とニューヨークのバー マルティニーズの渡邉琢磨さん(中)。残念ながら二人のカクテルは完売だった
バー・ブルーの豊川紗佳さん
バー・ブルーの豊川紗佳さんも昨年に続いて登場
『iichiko 彩天』を使った豊川さんのカクテル「碧彩(あおい)~和製ペニシリン~」
『iichiko 彩天』を使った豊川さんのカクテル「碧彩(あおい)~和製ペニシリン~」

カクテルで四季を味わうサントリーブース

そして日本で洋酒、カクテルをリードし続けてきたサントリーです。昨年から4面を囲ったクローズドなブース展開で、中はロの字型のバーカウンターになっています。入場に待ち時間が必要ですが、一流のバーテンダーたちが四季をイメージしたカクテルを提供していました。ウイスキーのイベントが多数開催されるようになったので、ウイスキーの紹介はそちらに任せてバーショーはカクテルにフォーカスするという姿勢は納得です。
午後4時を過ぎるとだいぶ列が短くなってほとんど待たずに中へ
午後4時を過ぎるとだいぶ列が短くなってほとんど待たずに中へ
春夏秋冬のオリジナルカクテルのほか定番カクテルも選べる
春夏秋冬のオリジナルカクテルのほか定番カクテルも選べる
一杯目にオーダーした秋のカクテル
一杯目にオーダーしたのは秋のカクテル。スティックシナモンとモミジが緑茶を思わせる液色に映える
ミルキーなショートカクテルはおそらく冬
ミルキーなショートカクテルはおそらく冬。この頃になると試飲が続いて記憶があいまい(ゴメンナサイ)

ユニークな酒が続々と登場

そのほか気になった商品やブースをイッキに見て行きましょう!
ベルモットづくりに取り組んでいるバーテンダー、ジャンカルロ・マンチーノさん
軽快になったベルモットに異を唱え自らリッチなベルモットづくりに取り組んでいるバーテンダー、ジャンカルロ・マンチーノさん。『マンチーノ・ベルモット』とキナをたっぷり使った苦い『マンチーノ・ベルモット・キナート』をアピール

プレミアムスピリッツとしてグローバルマーケットとなったテキーラ&メスカル
プレミアムスピリッツとしてグローバルマーケットとなったテキーラ&メスカル。個性豊かな味わいだが、メスカルをベースにつくったジンがこちら。メスカルの風味をおもしろいと言う人と、これはジンではないと言う人ではっきり分かれるそう

ロンドンドライジン
ジンをはじめ薬草を使うスピリッツはベースのスピリッツが味わいを左右する。ロンドンドライジンは穀物由来のニュートラルスピリッツを使ったものが多いが、なかにはブランデーベースのものも。『ジーヴァイン ジン フロレゾン』はコニャックの白ブドウのブランデーがベースでエレガントな味わい

片手にシンガニ(ボリビア産のホワイトブランデー)を持つ豊島屋のスタッフ
片手に『シンガニ』(ボリビア産のホワイトブランデー)を一方に、本みりんを持つのは神田明神のおひざ元 豊島屋のスタッフ。甘酒で知られる老舗が造る本みりんは食後酒にぴったり。ベルモットのようにカクテルに使ってもおもしろい

チリのピスコ
チリのピスコ。ピスコはチリとペルーが産地。チリでは複数回の蒸留と樽での貯蔵が認められ、ペルーでは単式蒸留で希釈は認めないなどルールが異なる。洋酒専門店の武蔵屋のブースは今回チリ産ピスコにフォーカスした

アメリカ合衆国ブースのライウイスキー
アメリカ合衆国ブースでライウイスキーを発見。ライウイスキーはスパイシーながら単調な香味の印象があったが、近年は複雑で幅のある味わいの商品が続々登場している。ライ麦比率の高いバーボンウイスキーもおすすめというのはイオングループの輸入商社コルドンベールのスタッフ

唯一の日本酒ブースは「獺祭」
唯一の日本酒ブースは「獺祭」。昨年に続いての出展で、今回は獺祭カクテルを提供した

※記事の情報は2025年6月5日時点のものです。

  

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