2017/2018 お酒と家飲みトレンド総括・予測。最も気になるキーワードが決定!

2017年もあとわずか。名古屋の酒問屋イズミックの会議室に結集した4人の酒バイヤーたちが、今年のお酒と家飲みトレンドを総括、そして来年の大胆予想を試みました。そこで浮かび上がってきたのは、あのキーワード!

ライター:青田俊一青田俊一
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2017年総括!

今回、ご参加いただいたのは、イエノミスタイル「バイヤーズレポート」でおなじみの青田俊一さん(Web事業部:ソムリエ)、安藤琢哉さん(商品政策部:シニアソムリエ )、海田恵利さん(商品政策部:シニアソムリエ)、藤井信宏さん(商品政策部:利き酒師・焼酎きき酒師)の4方。まずは、それぞれの今年の注目トレンドベスト3を挙げていただきました。
2017年総括!
藤井信宏さん(商品政策部:利き酒師・焼酎きき酒師)
藤井信宏さん(商品政策部:利き酒師・焼酎きき酒師)
藤井(イズミック商品部:利き酒師・焼酎アドバイザー)私が1番目にあげたのは「クラフト」です。クラフトジン、クラフトウオッカ、もちろんクラフトビール、とクラフトの流れがあったのかなと。それだけお客様の感性が多様化してきているんじゃないかと思います。

青田 もう、クラフトっていうのは、ありますよね。この流れは止まらないんじゃないでしょうか。クラフトウイスキーやクラフトバーボンもあるし。焼酎メーカーもクラフトジンとか新たに色々出してきているし。

海田 ワインも小さいワイナリー、沢山増えてますね。手作り感がある小さい醸造所は、消費者も注目しているんじゃないですかね。

藤井 2番は「RTDへのシフト」。改正酒税法の影響で実質的に値上がりしたビールから、チューハイとかカクテル、ハイボールなどの低アルコール飲料に売り上げがシフトしたというのがありました。 そして、3番は「酒のイベント」。私自身、お酒、特に日本酒のイベントには積極的に参加しました。どのイベントもお客さんの入りは上々です。うちもお世話になっている名古屋の酒蔵、盛田株式会社さんも今年は何年かぶりに蔵の開放をしましたし、いつもは春だけ蔵解放をしているけど、今年は秋もやった、という蔵もありました。今、日本酒はもうひとつ盛り上がりには欠ける面もありますが、この日本酒イベントの盛況ぶりを見ると、まだまだ可能性はあるなあ、という感じがします。

青田 イベント関係は続きそうですね。でも家飲みにつながっているかというと、そうでもないですよね。

藤井 そうですね。その場で飲んで愉しんで終わり、という感じ。

青田 イベントに出すお酒も限定品が多いんで、その場で飲んで、美味しかったからどこで買えるの?となると、買えません、となったりして。
 
海田恵利さん(商品政策部:シニアソムリエ)
海田恵利さん(商品政策部:シニアソムリエ)
海田(商品部:シニアソムリエ)私の第1番は、「シャンモリワイン 柑橘香 甲州」。シャンモリは、イズミック子会社のワイナリーで、いわば自社製品なんですが、「日本ワインコンクール」でこの製品が2年連続金賞&コストパフォーマンス受賞ということで、社内でも盛り上がりましたし、知名度もあがったので。

安藤 シャンモリ、すごいですよね。別の製品も含めたら3年連続で受賞している。なかなかそんなメーカーいないですよね。

青田 シャンモリの醸造担当の矢崎さんと話をしたら、受賞ワインは、彼的にはまだまだ伸びしろあるらしいですよ。

安藤 そうなの?

青田 ええ。「いやー、うちは、もっと良いの試してるんで」って感じで言ってましたよ。あれはまだまだなんですよねー、的な(笑)。

安藤 なるほど~!引き出しスゴイな~。

海田 2番は「新潟の胎内高原ワイナリー」。まだ出来て10年目の新しいワイナリーで、うちで扱いはじめて3年ですが、全国から名指しで問い合わせが増えているワインです。売上も倍増の勢いで注目の商品ですね。農薬なしで自然な造りをしているということで、消費者の注目も集まっています。こういうコアなファンがついている希少性のある商品をフックにして、いろんな新しいものを紹介していきたいですね。

藤井 新潟はワインってイメージないですよね。バリバリ清酒という感じだけど……。

海田 新潟のワイン、注目されてきてますよ。新しいワイナリーも増えていて、今は、ワイナリー数全国5位ですね。 それと、私の3番目は「日本ワインイベント」。大阪でも大阪のワイナリーだけ集めたイベントがあったり、名古屋でも色々開かれていて、どこも好評を博しているようです。やっぱり、日本ワインは伸びているカテゴリーで、全国的にも浸透してきてますね。数字を見ると、日本ワインは前年比104%ぐらいの伸び。去年一昨年ぐらいからの傾向です。ただ、日本ワインの伸びとうらはらに原料の調達が難しくなってきているというのがメーカーさんの課題ですね。
 
安藤琢哉さん(商品政策部:シニアソムリエ )
安藤琢哉さん(商品政策部:シニアソムリエ )
安藤(商品部:シニアソムリエ)私の1番は「酒ディプロマ(SAKE DIPLOMA)」。これ、聞いたことない人がほとんどだと思うんですが、日本ソムリエ協会がつくった新しい日本酒の資格です。ずっと、日本のソムリエさんが自分の国のお酒のことをあまり知らないという状況が続いていて、そこをなんとかしたい、ということで今年発足しました。日本のソムリエさんが日本酒をどれだけ説明できるか、みりんを説明できるか、焼酎をどう語れるのか、そこを打開したい、という。もうすでに、世界のソムリエコンクールなんかでは、日本酒の問題も出ているらしいし、個人的には結構びっくりした出来事でした。

海田 酒ディプロマは知り合いのソムリエさんもチャレンジしている方いますよ。きっとオリンピックのからみもあるんでしょうね。

安藤 外国人の方にきちんと、日本のお酒を伝える役割が、ソムリエに期待されているということですね。 私の2番目は、藤井さんとかぶっちゃいましたが「クラフト」。私はクラフトビールの担当もしているんですが、ビールでいうと、もともと地ビールのブームというのがあって、ブームに乗っていろんな品質のものが出てきちゃって、それが一端淘汰されて、今はしっかり勉強した高品質なメーカーさんが残っている状況。それが今「クラフトビール」というカテゴリーで定着して、さらに強く地方色を出す、土地をアピールするように変わってきていると思います。あと、クラフトのジンとかウォッカのようなハードリカーも、にわかにブームになってきています。もしかすると今後は、リカーの割り材にも「クラフト色」を取り入れていくと、家飲みとしては面白い感じになるんじゃないかと思いますね。クラフト=手作りというものが広がってきているのは、価格ではなく、新しい価値を打ち出した商品に皆さんが興味をもっている証拠だと思います。

青田 確かに、オーガニックのジンジャーエールとかコーラとかレモネードとか、成城石井みたいなところを見に行くと棚のスペースとってますよね。高級な割り材で、安い甲類の焼酎がおいしくなる!

安藤 ジュースひとつとっても、有機栽培とか自分でプレスしちゃうとか、トニックウオーターとか、ジンジャーエールとか、そのままで飲むと個性的なやつも割り材として面白いし、ソーダも炭酸の圧が高いとか、普通より硬度が高いとか、そういうのが色々でてきたら面白い。ジンはそう何本も買えないけど割り材なら色々変えて楽しめる。シロップとかも。いつも同じ飲み方じゃなくてアクセントとがつけられると毎日の家飲みが楽しくなるのかなあ、と。

海田 バリエーションができていいですよね。

安藤 最後は「ふるさと納税」。今年は、ふるさと納税のプレゼントに地元のビールというのが非常に多かったんです。クラフトビールは、通常の売上げに加えて、この「ふるさと納税」の大きな受注があって、数字は良いですね。まだまだチャンスがあると思います。
 
青田俊一さん(Web事業部:ソムリエ)
青田俊一さん(Web事業部:ソムリエ)
青田(Web事業部:ソムリエ)僕はすごいミーハーです。1番は「インスタ」。インスタの流行、定着によって、今までよりお酒を飲む機会が増えたかなと思います。私も、ムダにインスタ映えするバーベキューとかホームパーティーとかやりましたし。結構、家で飲む、買って飲む、というところには寄与していると思いますね。あと、外飲みに関しても、これまであまり飲みに行かなかった女子たちがそれこそ「インスタ映え」欲しさに酒場に繰り出してくれたというものあると思います。 2番目は個人的な理由で「ロカボ(糖質制限)。私もゆるい糖質制限をやった結果、ビールは2杯までになりました。まわりでも、ビールを飲む量が圧倒的に減ってきたような気がします。健康志向の影響で飲み物が変わってきたんじゃないかと。

安藤 糖質制限というわりには、青田さん、日本酒結構飲んでなかった?

青田 ああ、日本酒飲んでます(笑)! でもビールは減った。なんかハードリカーに寄ってる感じるかな。

安藤 確かにハイボール増えた。ハイボールはブームがひと山あったね。

青田 糖質とかプリン体の部分で、ハイボールならまあいいか、となっている。レモンサワーにもはまりましたね。

藤井 レモンサワーはイベントもあったし、タカラさんがレモンサワー用の焼酎も出したしね。

青田 今年は、シャリキン・レモン多量に飲みました。 最後に、私の3番目は「クラフトジン」です。ジントニックたくさん飲んでました~!

2018年はこうなる?

今度は、皆さんに来年来るであろう、注目のキーワードをひとつずつ上げていただきました。
注目のキーワードをひとつずつ上げていただきました。
青田 私は「炭酸割りで安飲み」。多分ビールの値上げの影響もあって、お店でも値上がりとは関係ないハードリカー系を炭酸で割るというのが主役になると思います。つまりハイボールブームというか、甲類の焼酎を飲む横丁ブームみたいな。それと同時に、家での飲み方もそういう流れが定着するのかなと。あとクラフトのハードリカー、ジンとかウオッカが入ってくるのと、あとなんといっても来年はサッカーのワールドカップ(ロシア開催)なんですよ、だから、みんなウオッカすんげえ飲むんですよきっと。炭酸で割って! 安く、おいしく、家で飲もうというのが来年はキーワードかなと思います。

安藤 焼酎は値上がり関係ないし、むしろ安くしてでもどんどん売りたい商材になるよね。

青田 そうですね、乙類の芋焼酎なんかだと、量を飲めるかというとそうでもないんで、そうなると甲類の焼酎。「ご当地サワー」みたいなものが色々出てくると思う。小さなメーカーのその地方でしか出回らないやつとか。今はほどんどリターン瓶(地域で回収・再利用するガラス瓶)なんだけど、最近はワンウェイの瓶も作りはじめているので、地方のものも全国で手に入りすくなるのでは。今も、地方ごとにご当地炭酸みたいなのが出てきていて、それこそクラフト炭酸というか。東京とか大阪は地炭酸メーカー多いですよね。

安藤 私は2つあって「酒類の値上げと、日本酒ブーム」です。値上げはビールもそうですし、ワインも、今年はヨーロッパのブドウの出来があまり良くなくて、収穫量が少なくなっていると聞きます。ということは、量を少なくしたり、価格を上げたりとなると思います。日本酒のほうは、小さくてコンパクトなサイズでいろんなお酒を楽しめるお店が増えているので、できれば、この調子で日本酒がブームになって盛り上がってほしいなあ、と。

海田 私は「まだまだ伸びる日本ワイン」。ここ数年、日本ワインは種まきの時期。ここで市民権を獲得して、着実に少しづつ皆さんの家庭に浸透してほしい。引き続き来年も伸びてほしいですね。小規模生産のワイナリーだけど、個性的な商品を出して売れてきているものもありますし。あと、先ほど新潟のワイナリーの話をしましたが、北海道もメーカーは増えています。長野と並んで同列2位ですから。聞いているとまったく違う職業の人がワイナリーを立ち上げているんですよ。元IT系です!とか。

青田 北海道だと、品種はどうなんですか?

海田 国際品種が多いですね。ピノ・ノワールとか。

安藤 しかしブドウが獲れるまでも時間がかかるし、たいへんだろうなあ。ワイナリーを立ち上げながら、他のジュースだったり、ジャムだったり、カフェなんかをやりながら…皆さん頑張っている気がします。

海田 あと東京とか大阪なんかで、都市型ワイナリーも出てきてますね。

青田 ああ、そういうのもクラフトの流れですね。

藤井 私は、ズバリ「燗」。希望的観測バリバリですが(笑)。私は清酒は燗をつけられるというのが最大の醍醐味だと思っています。今年のイズミックの展示会でも燗酒のブースをやりましたし。燗の魅力がわかると、もっと日本酒が好きになるのは間違いない。来年は燗ブーム元年になってほしいです。フレッシュさが魅力の無濾過生原酒のブームが落ち着いて、そこにとってかわるのが生酛系だとか、しっかりした味のものが候補として出てくる。それを思う存分楽しむには、やっぱり燗の世界に入っていただくほかないですよ。それでこそ、余すところなく酒の良さを味わえるのかなと。

青田 んー、燗ですよね、燗。

安藤 家で、ちろりを使って燗をつけるというのも面白いのでは。あと、真夏に燗酒とか、冷房ガンガンで。やっぱり燗を付けると味が違いますもんね 青田 特に料理と合わせるとなると、燗のほうがマリアージュという面では楽しめますよね。

藤井 今の無濾過生原酒ブームは、酒が主役という気がして。食事と楽しむ、ということになるとやっぱり燗。家飲みでも、この料理にはこの酒、というように好みの酒の燗をつけるみたいになってくれると嬉しいですよね。

青田 そういう家飲みになってほしいですね。

藤井 そういえば、酒器を選べるというのも日本酒以外ではないよね。

海田 確かに、ワインだと、これにはこのグラスが、といって提供されるものですよね。自分のお好みでいろんな柄や素材も選べて楽しいですよね。うちも酒器ばっかり増えていきます。

2017~2018 最大のキーワードは?

クラフト
お酒トレンド、2017年の総括から2018年の予測、いかがでしたか? 冒頭、藤井さんのクラフト発言から、一貫して「クラフト」を巡って進んだ座談会でした。2017年を貫き、2018年を牽引する家飲みキーワードはどうやら「クラフト」。ワイン、ハードリカーと話題が広がってもそこここに「クラフト」的なものが見え隠れする展開。家飲みの好みも多様化し、それに応えて個性的な小さいメーカーさんの頑張りが目立ちました。手作りで少量生産、地方色の濃いこだわりのお酒を、家でじっくり楽しむ、そんな最新型の家飲みの姿が見えてきました。「クラフト」は、来年のイエノミスタイルでも大きなキーワードになりそうです。
他に盛り上がったテーマは「日本ワイン」と「燗」。インバウンドの盛り上がりで海外からも注目される「日本的なもの」を国内から再評価する動きも高まって来るかもしれません。


※記事の情報は2017年12月13日時点のものです。
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