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〈ファミマのバターコーヒー〉商品開発の要、ドトールコーヒーの皆さんにインタビューしました。

ドトールコーヒー

ベストセラー「最強の食事」で話題のバターコーヒーを、いつでも手軽に飲めるように開発されたファミリーマートのバターコーヒー。その商品化までの道のりは山あり谷ありでした。コーヒーとバターを合わせて商品として仕上げる工程を担当した、株式会社ドトールコーヒーのご担当者に、開発秘話のお話をうかがいました。

(写真左から)営業本部 営業企画部 松野宏昭さん/リテール営業部 チルド課 後藤佳奈さん/営業企画部 営業商品開発課 森田理恵子さん

「おそらくできないでしょう」が出発点、バターコーヒーの開発。

─ ─ バターコーヒーの開発はどのようなきっかけでドトールコーヒーさんに持ち込まれて、どのように始まったのでしょうか。

 

後藤 私はファミリーマートコレクションを始めとする様々な商品の営業窓口として、ファミリーマートさんと長くお付き合いいただいております。その過程で、このバターコーヒーについても、ドトールコーヒーでできないかというお話をいただいて、それを受けて弊社の開発部隊に打診したのが、1年以上前のことです。そのときは、社内で検討して、お店で飲んでいただくのならともかく、コンビニエンスストアに並べるパッケージ商品としてはおそらくできないでしょう、という回答をしました。

 

─ ─ なぜそのように回答されたのですか。

 

後藤 もともと、弊社でもバターコーヒーというものの話題には注目していたんです。でも、弊社の商品ラインナップはお客様に安心して買っていただけることが第一のブランドです。先取りしてブームを作るということはあまりなかったので、一般的にあまり認知されていないものはハードルが高いと感じました。トレンドに敏感な人は「あ、バターコーヒーってあれね」って結びつくとは思うのですが、何も知らない人が「バターコーヒー」って聞くと、どういう印象を受けるでしょうか。弊社の商品は幅広い年齢層に飲んでいただいていますので、バターコーヒーという商品は正直どうかな、と懐疑的になっていたことは確かです。

 

松野 バターコーヒーというものにどのぐらいの認知度があって、飲まれているか。それがわからないなかで、ファミリーマートさんの広い販路に並べる。その結果、お客様にどれだけ買っていただけるのか全く予測できませんでした。そもそも飲料では、オイルを使う商品は非常に難しいといわれています。商品イメージや、品質の安定性の面で、もともと課題のある領域です。最初の段階ではそうした感度でお話をしていました。

 

森田 実際、MCTオイルは結構前から興味があって、何か商品にできないかというお話もあったし、「最強の食事」が話題になったときに、我々も通販でグラスフェッドバターを買ってみて、本に書かれているレシピで試作してみたことがあったんです。なるほど、でも、これをお客様に分かりやすく伝えられるのは、難しいなと思っていました。

 

後藤 それから、原料の確保。弊社はコーヒー原料は手配できますが、グラスフェッドバターやMCTオイルはどこから仕入れればいいのか、経験がありませんでした。さらに、コーヒーとオイルを乳化させて安定化させる技術についても未知数な点があったので、商品化は難しいと考えたんです。

 

─ ─ そうした状態から開発スタートに到るには、どういうきっかけがあったのでしょうか。

 

後藤 グラスフェッドバターやMCTオイルを含む原料は不二製油さんに開発していただき、弊社に納入していただけるという話になったので、それだったらその原料を使って、配合量やコーヒー豆の選定はこちらでできるかもしれません、と開発が現実味を帯びてきました。それが5月、初夏ぐらいのことです。サンプルも作りはじめました。乳化剤の選定はちょっと難しい部分はありましたが、弊社で担当しました。

誰も知らない、味わいのベンチマーク。一番の苦労はそれを見つけること。

─ ─ 開発ご担当の森田さんがこの事業に着手したときは、どのような印象を持たれましたか。

 

森田 何しろすべてゼロベースからの開発です。ベンチマークになるような味わいが一体どこなのか、その見極めが非常に難しかったです。コーヒーの形はいろいろありますが、たとえば牛乳とコーヒーの組み合わせは弊社も今まで経験がありますから「これがおいしいカフェオレだ」という認識は持っています。ではバターコーヒーは、一体どういうバランスがおいしいのか。毎日飲み飽きないバランスは一体どこなんだろう。まずそのベンチマークを設定するということに、いちばん苦労しました。

 

ドトール 森田さん

─ ─ それはどうやって設定したのですか。

 

森田 いろいろな組み合わせを試すしかありません。豆の選定や抽出の方法、どのくらいの濃さにしていくか。技術的なところでは、不二製油さんのバターミルクのベースと、コーヒーを乳化させて安定させること。これもずっと検証を続けてきました。味の組み方として、本当に何通りも試しました。

 

─ ─ 牛乳は熟知しているけど、バターは未知の世界。そこがやはり難しかった点ですね。

 

森田 本当にそこですね。どういうふうに組み立てたらおいしくできるか、試行錯誤するしかありませんでした。

 

─ ─ バターコーヒーでは、コーヒー豆はアラビカ種だけを使っています。これはどういうことなのでしょうか。

 

森田 コーヒー豆は、大きく分けてアラビカ種とロブスタ種があります。味の傾向としては、ロブスタ種は力強さやパンチがつくという使い方があります。ただ今回の商品に関しては、あと残りがせず後味がすっと消える、コーヒーの余韻が甘く残るような形に仕上げたかったのです。バターのベースがしっかりしているので、コーヒーは最後に香ばしさと甘さで消えていくように。どこが一番おいしく心地よく飲めるか、ベースとコーヒーのバランスにはこだわりました。いい印象を残して「ああおいしかったな。また明日も飲もう」という動機づけになるようなコーヒーを選びたかったので、中南米のアラビカ種をベースに組み上げました。グアテマラは甘さ、ブラジルは香ばしさ、コロンビアはしっかりしたボディ。そのバランスを組み替えて個性を出していきました。

 

—— バターの味とは、どういうものなのですか。バターは「甘く」はないのですか。

 

後藤 バターは甘くはないですね。牛乳はミルクの甘みがあります。

 

森田 バターは、甘くはありませんが、優しい感じではあります。試作した感じでは、ただやっぱり、牛乳に比べると、うまみに欠けるという印象はあります。そこを、コーヒーとのバランスを工夫して、調整するわけです。

 

—— 不二製油さんの段階ですでに第一段階の乳化が済んだものをコーヒーに混ぜるとき、もう一度乳化させる。その工程がまた難しかったのですよね。

 

森田 そうですね。それも検証あるのみで、不二製油さんにも検証していただきながら、我々も検証して。乳化剤の選定や配合割合の違いを、マトリクスを組んでつぶしていきながら、試作品を静置してそれが分離するかどうかをひたすら見るという作業でした。

 

後藤 その時点ではけっこう、開発と営業とでもめましたよね。私はやはり発売日ありきで、この日に世の中に出さなくちゃいけないという使命感があります。でも開発は、世の中に出すためには未完成なものを出せないという使命があって、お互いにギクシャクしたときもありました。申し訳ないなと思いつつ、なんとかしてくださいよと無茶を言ってお願いすることもありました。(笑)

 

—— ファミリーマートさんからの味についての修正の要望などは、途中から出たのでしょうか。

 

後藤 そうですね。最初のテーブルサンプルを商談に持って行った時の味は「OK」と言われていたのですが、工場の実機でテストをしたときに、「コーヒーが薄くないか?」という指摘をいただきました。提案通りに進めてはいたものの、やはり実機で回したときの抽出方法や温度で少し違いが出てしまいます。コーヒーの風味が弱いという指摘をフィードバックして調整をして、ようやくOKをいただけました。

 

—— 通常よりもコーヒーを濃い目にする必要があったのですか。

 

後藤 思っていたよりも、商品にしたときにコーヒーが薄く感じたという表現が正しいかも知れませんが、最終的には、確かに通常のカフェオレよりはちょっと濃くはなっています。ファミリーマートさんのこだわりで、そこまで細かくジャッジしていただいたおかげで、この商品がロングランになっている、ということはすごく感じます。

コーヒーの新しい形として。幅広い層にバターコーヒーを定着させたい。

─ ─ 完成品をはじめて飲んだ時の感想はいかがでしたか。

 

森田 喜びは大きかったです。やっとできたという安心感。コーヒーの風味もしっかり出ているので、バランス的にもちょうどいいところにでき上がったなっていう印象を受けました。

 

松野 私もまず、ようやく完成したっていう達成感ですね。本当に新しい商品です。そして、飲んだときに「これだったら何回も買ってもらえそうだな」という安心感がありました。おいしい、おいしくないは人それぞれ嗜好もありますが、もともと世の中に出ていたバターコーヒーと呼ばれるメニューとも比較して、飲みやすくて多くの方たちに受け入れてもらえるような、しかも特性を持ったいい商品になったと改めて感じます。

 

ドトール 松野さん

 

後藤 開発の最初のころよりも、最終的な商品はずっと飲みやすくもなっているし、ここまでおいしくなったのかっていう驚きがあります。商品特性から、おいしいものを飲みたくて買われるというより、目的があって買われる方が大半だと思っていました。でも、弊社内でも、これを毎日のように飲んでいる人がいますが、「この味だから続けられる」と言っています。その意味でも、本当に大成功のおいしい商品になったなと思います。

 

森田 既存商品では他にないですからね。健康意識が高くて、バターコーヒーを飲みたい人が、自分で毎日作ることを考えたら、手軽にリーズナブルに買えるのはとても魅力的だと思います。

 

─ ─ このプロジェクトに携わった感想をそれぞれお願いします。

 

森田 たくさんのお客様に支持していただいて、毎日これだけの方に飲んでいただける。これまでの牛乳とコーヒーの組み合わせではなくて、新しい飲み方の定着になれば、コーヒー屋としてもすごく嬉しいことです。そのチャレンジに携わる機会をいただいて、非常にありがたかったと思っています。

 

後藤 もともとは数量限定という話もありました。こんなに売れるとは思っていなくて、それがこんなに多くの方に受け入れられて、本当によかったなと思っています。どうだ、見たかっていう感じです。今は、これからどうやって1本でも2本でも日販や週販を上げていけるかと、ファミリーマートさんとお話をさせていただいています。

 

松野 率直には本当によく売れているなっていう印象です。チルドカップの市場環境に、いままでこういう商品は無かったと思います。バターコーヒーは、ショップではメニュー化されたりもしていて、ダイエット、健康ニーズの高まりから、こういう商品を着実にしっかり取り組んでいくのは面白いことになるかもしれないという実感がわきました。それでも、健康志向系のコーヒーって、各社さんもいろいろやってはいるものの、なかなか難しいんです。出ては消えを繰りかえしているなかで、この売れ方には、やっぱり驚きがあります。コーヒープラスアルファの成功事例として、この実績を元に、今後も面白いことを考えられるのでは、というように思っています。

── バターコーヒーを今後、どういう人に飲んでもらいたいですか。

 

後藤 ファミリーマートさんからお話を聞くと、比較的、都市部で売れ行きが良いと聞いています。これからは、バターコーヒーの良さをもっと理解していただき、もっと広い地域の皆さまにも認知を広げて、全国的によく飲まれるような商品になっていけばいいなと思っています。

 

森田 私も同じく、幅広い層の皆さまに飲んでいただきたいです。

 

松野 これから新しくコーヒーを飲用する人たちも、一つのきっかけとして飲まれるような商品になっていくと、うれしいですね。コーヒーに馴染みのなかった若者層、ダイエット志向の方、こういう入り口からコーヒーとの接触を持てるような商品として、若い層に手に取ってもらえるような商品として広がっていってほしい。それから、ショップでもまだそれほどメニュー化されていないバターコーヒーというものを、コーヒーのひとつのメニューとして日本でも海外でも受け入れられるように発信する、この商品がその発信源になっていけるなら、ますます面白くなっていくのではと期待しています。

※記事の情報は2018年4月11日時点のものです。

 

提供/ファミリーマート

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