いまあちこちで話題の「バターコーヒー」とは何か? 一旦まとめてみた。

いま「バターコーヒー」のうわさを聞くことが多くなりました。ネット上ではダイエットにいいとか元気になるとか、いろんなことが語られ、多くの有名人もバターコーヒーのファンであることを打ち明けています。あちらこちらで話題のバターコーヒーとは一体なんなのか。誰が言い出して、どういう経緯で流行っているのか、一旦まとめてみました。

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チベットの「バター茶」がルーツ

チベットの「バター茶」がルーツ
バターコーヒーのルーツが、チベットで古くから飲まれているバター茶であることはまちがいないでしょう。チベットで撮影したテレビ番組などでもよく出てきます。バター茶(現地語で「プージャ」)はチベットの人にはなくてはならない飲みもので、黒茶にヤクの乳から作ったギー(バターの水分やタンパク質を除いた純粋な乳脂肪)と岩塩を加え「ドンモ」と呼ばれる専用の大きな撹拌器で混ぜたもの。チベットではお茶は貴重品なのでごく薄く淹れます。代わりにギーと塩が効いているので濃厚でしょっぱく、お茶というよりはスープのようなものらしいです。で、現地の人はこれを一日に10杯ぐらい飲む。飲む人はもっと飲む。外国人がチベットを訪れると、おもてなしとして何杯も奨められるそうです。

それで、外国からチベットを訪れた人たちのなかに、チベット人の皆さんはあまり食材事情も良さそうでないのになんでこんなに元気なんだろう、ラサ(首都)の標高も3700メートルあって、標高5000メートル以上の村にも平気で人が住んでいて、この人たちはなぜこんなに寒さに強く高山病にもならないのだろうと考えて、もしかしたらやたらと飲んでるこのバター茶っていうのがいいんじゃないの? と考える人が出ても不思議はないわけです。
 

「完全無欠コーヒー」の誕生

「完全無欠コーヒー」の誕生
チベットのバター茶に感銘を受けた人のなかに、アメリカ人のデイヴ・アスプリー氏がいました。シリコンバレーでIT企業家として成功していたアスプリー氏ですが、体重が140kgあって、その重過ぎる体重ゆえにさまざまな体調不良を起し、いつも気分が思わしくなく、悩んでいたそうです。いろんなダイエット法や健康法を試しまくって少し体重を落としてはそれ以上にリバウンドというのを繰りかえしていた氏が、チベットを訪れたのは2004年。標高5580メートル、気温零下23度の村にあるゲストハウスに到着し、一杯のバター茶をふるまわれて生き返ったような心地になり、これが「完全無欠コーヒー」(Bulletproof Coffee)誕生のきっかけになったそうです。

アメリカに帰国したアスプリー氏がいろいろなバターを試してみて、たどりついた結論が「グラスフェッドバター」(牧草飼育のバター)がいいということ。そして、「カビ毒の少ない良いコーヒー」にこのバターを加え、さらに以前から健康的だからと注目していたココナッツオイル等から抽出された「MCTオイル」も追加してしっかりと撹拌したら、最高にクリーミーで美味しかったこと。そしてこのコーヒーを飲むと、「脳が復活し、食物への渇望から解放」され、氏は人生のあらゆる分野で成功しはじめたのだそうです。
 

〈完全無欠コーヒーの作り方〉

作り方

  • コーヒーを淹れる。金属フィルターでコーヒーオイルも抽出する
  • グラスフェッドバターとMCTオイルを加える。砂糖やミルクは加えない
  • ブレンダーを使ってしっかり撹拌する
*グラスフェッドバターの代わりに良質の無塩バター、MCTオイルの代わりにココナッツオイルを使用したコーヒーを、アスプリー氏は単に「バターコーヒー」と呼び、それでも良い、としています。

書籍がアメリカでベストセラー化。2015年に日本でも注目



結果的に、アスプリー氏はマイナス50kgもの減量に成功。氏はこのコーヒーをBulletproof Coffee(直訳すると「防弾コーヒー」、日本では「完全無欠コーヒー」と訳された)と名づけ、そのレシピと自分がそこから得た健康上の有益性についてネットで公開し、広く伝える活動をはじめます。2011年にはレシピに基づいたコーヒー豆やオイルのEC販売をはじめ、2013年には「Bulletproof」の健康法を啓発する会社を立ち上げ。そして翌2014年に書籍「The Bulletproof Diet」を出版、これが賛否両論を巻き起こしながら大ベストセラーとなるのです。

「The Bulletproof Diet」の副題は「Lose Up to a Pound a Day, Reclaim Energy and Focus, Upgrade Your Life」つまり「一日に0.5kgずつやせ、エネルギーと集中力を取り戻し、あなたの人生をアップグレードする」というもの。主に食事を通して人間の身体を「バイオハック」して、「人生をアップグレードさせる」方法を説いています。


本書が翻訳され、日本で「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」(栗原百代訳)というタイトルで出版されたのは2015年。この日本版も短期間でたちまち版を重ね、以来、この本によく似た「最強の○○」「最高の○○」といった本が次々と発行されることになります。

良い脂肪を積極的に摂ることがポイント

「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」は、食べものに関しては、食べるべきもの、食べてはいけないもの、非常に多岐にわたるハウツーが書いてあります。詳細については本書を読んでいただきたいと思いますが、著者の持論の大きな柱は、小麦やでんぷんの摂取を抑え、カロリーの50%〜70%を「健康的な脂肪」からバランスよく摂ろうというものです。そして、脂肪にも「良い」ものと「ダメな」ものがあり、積極的に摂るべき脂肪の例が、不飽和脂肪酸の一種であるω-3脂肪酸(おめが-さん-しぼうさん)や、飽和脂肪酸のうちの中鎖脂肪酸だというのです。「完全無欠コーヒー」を飲む習慣をつけて、中鎖脂肪酸をはじめとする「良い脂肪」を摂っていこう、というのがポイントです。




一方で、バターコーヒーに入っている「MCTオイル」の主な原料のひとつである「ココナッツオイル」について詳しく紹介した「ココナッツオイル健康法」(ブルース・ファイフ著/三木直子訳)という本も注目されました。こちらは「最強の・・・」よりも早く、原書が2013年、邦訳が2014年に出版されています。ココナッツオイルが「健康を促進させる『良い』油のひとつである」と主張するこの本も、短期間で重版されるヒット書籍となっています。

これら翻訳本が出版されると、日本国内でもプロスポーツ選手、テレビタレントなどバターコーヒーのファンになる人が続出。SNSなどでそのことを公開して、話題になります。一般の人でもバターコーヒーダイエットを実践してその歓迎すべき結果をブログなどに綴る人が増えてきます。2017年には東京都内にバターコーヒーの専門店も開店。バターコーヒー熱が高まって今日に至っているというわけです。
 
日本国内でもプロスポーツ選手、テレビタレントなどバターコーヒーのファンになる人が続出
いかがでしたでしょうか。「バターコーヒー」がどのような経緯でスタートし、広まっていったのかを駆け足でご紹介してみました。バターコーヒーについては、今後も詳しく追いかけてみたいと思います(イエノミスタイル編集部Y)。


※記事の情報は2017年11月29日時点のものです。


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