ギリシャの食卓におじゃまします！【前編】〈家飲みオリンピック①〉

オリンピック発祥の地・ギリシャでは、どんな家飲みが繰り広げられているのか？　日本にお住まいのギリシャ出身の方に取材しました。

2019.04.29

メインビジュアル：ギリシャの食卓におじゃまします！【前編】〈家飲みオリンピック①〉

「ビールに枝豆」という独特の家飲み文化が日本にあるように、世界には、国の数だけオリジナルの家飲みスタイルがあるのでは？　だったら見てみたい！ということで、イエノミスタイル編集部員が、生まれた国を遠く離れて日本で暮らす方々に故国の家飲みの様子を見せてもらいに行ってきました。第一回目はオリンピック発祥の地・ギリシャ。家飲みにおける「平和の祭典」、始まります！

数多くの神話や文化が生まれた国、ギリシャ

エーゲ海やイオニア海に浮かぶ数千もの美しい島々を擁するヨーロッパ南東部の国、ギリシャ。数々の神話や偉大な文明が生まれた歴史のある国でもあり、パルテノン神殿やメテオラなど数多くの古代遺跡をもつことでも有名です。

今回私たちが訪れたのは、そんなギリシャのご出身で、日本に暮らして18年になるというフラギス・アサナシオスさんのお宅。イギリスで出会ったという奥様の由美子さんと、今は茨城県内でギリシャの食材やワインを扱う「ノスティミア」という輸入会社を経営されています。

「シンポジウム」の語源は、“一緒に飲む”？

そもそもギリシャの人は、どのくらいお酒を飲むんでしょうか？　早速フラギスさんに話を訊いてみました。
「ギリシャ人はみんなお酒が大好き。特に週末は、飲み始めるとすごく長いよ。家族や友だちと、好きなことを好きなだけ喋りながらずっとお酒を飲んでる」

さらにこんな興味深い話しも。
「『シンポジウム』という言葉あるでしょ？　あれは、もともとギリシャ語が語源で、“一緒(syn)に飲む（posis）”という意味なんだ」
古代ギリシャ人たちは、ワインにあえて水を入れて、それを飲みながら頭をリラックスさせた状態で延々と討論していたといいます。その習慣が今もギリシャの人々に根付いているんですね。

ちなみにギリシャでは、日本のようにおつまみだけでお酒を飲むということはせず、あくまで食事と合わせて楽しむものなんだそう。しかも一人飲みではなく、誰かと一緒に、というのがギリシャ流なのだと話してくれました。

家ではワインかビール、ウゾはカフェで飲むもの

では、ギリシャの人々は、ふだんどんなお酒を飲んでいるんでしょうか？
「家族や友人と一緒なら、やっぱりワインかビールかな。ワインでいうと、ギリシャではサバティアノという品種が一番有名。ギリシャの南のほうでよく栽培されているよ」

「あと、ウゾ（ouzo　※ウーゾとも呼ばれる）というギリシャならではのお酒もある。ただしウゾは、カフェやシーサイドで人を待っている時とかに飲むけれど、家ではあまり飲まない。飲むにしても食前酒としてだね」
筆者もその場でウゾを飲ませてもらいましたが、確かにアルコールが強くて香りもかなり特徴的なので、食事と一緒にというお酒ではないんだなと感じました。

アルコール度数が40℃近くあるウゾは、蒸留酒にアニスなどのハーブで香りをつけた薬草系のリキュール。水を入れると白く濁る

ギリシャの食を語る上で欠かせない、オリーブオイルとフェタ

ところで、日本でも親しまれているギリシャの食材として思い浮かぶのが、オリーブオイルではないでしょうか。ギリシャのオリーブオイル生産量は、スペイン、イタリアに次いで世界第3位。やはり現地の食卓にも欠かせないものなんでしょうね？「もちろん。ギリシャの家庭では、調理油といえばオリーブオイル。ギリシャでは1人で一年間に約25Lのオリーブオイルを消費するんだ。だから現地では瓶ではなく5リットル缶で買うことが多いね」日本の消費量とはケタ違いです。ギリシャでは、サラダはもちろん、煮込み、フライ、ローストなどあらゆる料理にたっぷりのオリーブオイルを使うのだそう。そうすることで、たとえば肉料理でも、冷めてもパサつかずしっとり感が続くといいます。ゆっくりと時間をかけて食事を楽しむギリシャの食文化に、オリーブオイルは欠かせない食材なんですね。

「もうひとつ、ギリシャ人の大好物として忘れてはならないのが、フェタだよ！」
フェタとは羊や山羊のミルクで作られる塩味の強いチーズで、ギリシャで作られたものしか「フェタ」と呼べないそう。
「ギリシャに暮らす姉の家でも、オリーブオイルと同じようにテーブルにはいつもフェタチーズが置いてあって、大人も子どもたちもナイフで好きなだけ切って食べる。みんなフェタが大好きなんだ」