日本発の伝説のホップ「ソラチエース」使用のビールが全国で発売!

ライター:長谷川小二郎長谷川小二郎

多くの方にソラチエースの魅力を味わってもらうため価格は低めに

サッポロビール系のビールブランド「Innovative Brewer」から発売されてきたソラチエース使用銘柄は今回で3銘柄目です。前の2銘柄である「伝説のSORACHI ACE」(①、2016年発売)と「伝説のホップ ソラチエース」(②、2018年発売)とは、どんな違いがあるのでしょうか。

新井:まず3銘柄に共通するのは、ソラチエースのシングルホップだということです。そして①のときは、海外で有名だが日本ではほとんど知られていなかったソラチエースを、とにかく紹介したかった。実は、今回のSORACHI1984と、つくり方はほとんど同じです。非常に評判が良かったので、大きく変える必要がなかったからです。②ではさらに、国産ホップを盛り上げていきたいという思いがあり、上富良野産を100%使用しました。ソラチエースはサッポロビールが育種してきたことと、量はまだ全然取れないという希少性を一緒に訴えました。「国内にもこんなにすごいものがあるんだ」と知ってほしかったのです。350ml缶1本1125円という価格は決して安くありませんが、「それだけの価値があるんです」と自信を持って言えました。前にも述べた通り、上富良野産ソラチエースは特に繊細。だから②はピルスナーの製法を採用してホップ以外の特徴を極力下げて、ホップの特徴をより味わってもらうことを狙いました。①②を含めて、Innovative Brewerブランドで展開してきた銘柄のなかでは、「Nelson Sauvinの真髄」「絶妙のMosaic&Citra」「Polaris & Apolloの魔法」という、ホップを特徴として前面に出した銘柄の評判が特に良かったんです。そこで、Innovative Brewerブランドには従来は販売地域や経路で限定的な面があったところを、本格的な全国展開をする通年販売の銘柄として、ソラチエースというホップを特徴とするビールをつくろうとなったのです。

①は1本360円、②は1125円にしてきたなか、今回は270円(いずれも税込)と、かなり買いやすい価格になっていると思います。今回は①②と比べて文字通り桁違いの、22万ケース(350ml×24本換算)という販売計画によるスケールメリットがきいているからできたのでしょうか。

新井:今回も希少性を基にして、価格設定をもっと上げるという判断もあり得ました。しかし本当にしたいことは、なるべく多くの方にソラチエースの魅力を味わってもらうこと。スケールメリットももちろんありますが、この目的を達成するために、いろいろと努力をしました。

目下、ソラチエースを使った国内で入手できるビールとしては、常陸野ネストビールの「ニッポニア」や、2月から国内で通販が始まったブルックリンブルワリーの「SORACHI ACE」がありますが、「SORACHI1984」をつくるにあたって意識した点はありますか。

新井:もちろん両方飲んだことがあります。どちらも満足度が高く、良い気分にひたるのに素晴らしいと思いました。私たちの新製品は、前にも述べたように、ソラチエースの魅力を前面に出し、なるべく多くの方に味わってもらい、さらに「もう1杯おかわりしたい」と思ってもらえるような味わいを目指しました。価格帯も違いますので、競合としては見ておらず、むしろこの素晴らしいホップを一緒に盛り上げられればと思っています。

「SORACHI1984」からのミッションを遂行してもらう「ミッションアンバサダー」を1984名募集しましたね。ビール会社が公募して任命するこの規模のアンバサダー企画は、少なくとも日本では初めてではないでしょうか。この企画を実施した経緯と効果について教えてください。

新井:SORACH1984を広めるに当たって「ブランドブック」という冊子もつくったように、誰かに話したくなるストーリーを丁寧に伝えることを重視しました。ストーリーブックを見ながら飲めば、誰かに話したいことがたくさん見つかるでしょう。それを発信してもらう場としてはSNS(交流サイト)が良いと判断して、アンバサダー企画を採用し、採用者に製品2本とブランドブックをお送りし、飲んだ感想をSNSで発信してもらいました。製品名の一部であり、ソラチエースが生まれた1984年にちなんで、1984名を募集したところ、なんと1万名超もの応募がありました。皆さんがお書きになったアンバサダーへの意気込みは、社員が本当にすべて目を通して、1984名を選びました。SNSで流れてくる投稿を眺めていると「ビール好きはみんな任命されている」と思うかもしれませんが、きちんと審査しましたので、当たり前のことかもしれません。面白かったのは、1984年生まれの方や、空知郡に縁がある方が反応してくれたことです。またアンバサダーの方々の投稿は、「当たった、うれしい」とか「おいしい」といった単純なものではなく、長く書かれたものが多いですね。ブランドブックが製品に関する情報の引用元になりますし、それに共感してくれた方が多かったのではと感じています。これまでにない試みとしては、業務用の樽の販売をすることです。従来、Innovative Brewerの銘柄の樽は、サッポロビール系レストランチェーンの銀座ライオンで飲めることはありましたが、それ以外にも卸すのは今回が初めてです。これまでも「卸してくれないか」と引き合いが多く、外飲みでもぜひにぎやかに味わってもらいたいと思っています。
ビアグラスセット
「銘柄名にソラチエースの『エース』はありませんが、ホップの絵をよく見ると『A』が入っているんです」と新井氏。オリジナルビアグラスセットはAmazon.co.jp限定で発売

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「SORACHI1984」の特徴をよく味わうために、他のソラチエース使用銘柄と並べて飲んでみた。左から「SORACHI1984」、昨年サッポロが限定発売してちょうど2019年4月が賞味期限だった「伝説のホップ ソラチエース」、常陸野ネストビール「ニッポニア」「ニッポニアピルスナー」、ブルックリンブルワリー「SORACHI ACE」だ。2019年4月現在、「伝説のホップ ソラチエース」を除いて、小売店かネット通販で買うことができた。

まず大まかな傾向としては、サッポロの2銘柄と常陸野ネスト・ブルックリンの3銘柄で違いがある。前者はソラチエースのヒノキやレモンのような香りが際立っていてすっきりしているのに対し、後者では麦芽の甘味を想起させる香りや他のフルーティーな香りと調和していて、全体としては濃厚だ。

「SORACHI1984」と「伝説のホップ ソラチエース」を比べると、前者はまずヒノキのような上立ち香(アロマ)がある。口に含むとすっきりとしているが甘味もあり、甘味と高まり合うオレンジのような香りも感じられる。しっかりとした苦味が感じられて、まるでマーマレードのような味わいだ。後者は前者よりもすっきりしていて、よりヒノキらしさが感じられ、その次にレモンのような味わいがある。どちらもなるべく静かに、泡を立てずに注いで、口の中で弾けるホップの味わいを楽しんだ。

税区分の「ビール」に、世界で尊敬されている日本発の材料を用いて、味わいの個性も強く、しかしながら買いやすい価格の通年銘柄が登場した。日本のビール市場の健全な発展は、この銘柄が定着するかどうかにかかっていると言っても過言ではないと思う。
ソラチエース使用銘柄
ここ1年で比較的簡単に入手できた、ソラチエース使用銘柄
※記事の情報は2019年4月15日時点の情報です。
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