【びあけん(日本ビール検定)】1級合格者が教える勉強法とは?

2012年から毎年実施されている日本ビール検定(愛称:びあけん)。1級の合格率はなんと1桁台の難関の検定です。2019年は9月29日(日)、申し込み締め切りは8月27日(火)。新設された2級・1級併願制度によりいきなり受検できるようになった1級の対策に加え、2級と3級用の勉強法についてもお届けします。

ライター:長谷川小二郎長谷川小二郎
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筆者は2016年に初めてびあけん1級を受検し、先に1級に受かった方に対策の仕方を教えてもらったおかげもあって合格でき、その後、2017年、2018年も連続して合格できている。以来ずっと、「ビールについて調べて公正・中立に書く」という筆者の仕事の一つの役に立ち続けている。

具体的な勉強法に入る前に、びあけんがそもそもどんな思いで設計されたのかを、主催する一般社団法人日本ビール文化研究会の理事・事務局長である大登貴子さんに聞いた。検定の意義を知ることによって、テキストを読むのに一段と身が入るはずだ。

主催者に聞く「びあけん」とは?

一般社団法人 日本ビール文化研究会 理事・事務局長 大登貴子さん
一般社団法人 日本ビール文化研究会 理事・事務局長 大登貴子さん

――改めて、2012年に第1回びあけんを開催するまでの経緯や、検定自体の意義を教えてください。

大登もともと、1999年にサッポロビールのなかで、「ビールアドバイザー」という資格制度が始まりました。対象はサッポログループの従業員で、年に1回、受検の機会を設けていました。

グループ全体を見わたすと、ビール会社を中核企業とするグループなのに、業務のセグメント化が進むことにより、ビールのことをよく知らない従業員が出てきてしまっていました。それを解決するためにグループ内でテキストを作成し、この資格制度を始めたんです。そのときの思想として「サッポロビールのことだけを語っても、ビール全体の話はできない」ということがありました。

そうして毎年テキストを見直し、加筆をしていくうちに、現在発行されている書籍『日本ビール検定公式テキスト』に迫るほどになったんです。さらに、資格を取得した従業員の名刺には「ビールアドバイザー」という肩書きを添えるようにしたところ、受け取った取引先の方々などから「自分たちのようなサッポログループ以外の人間にも受けさせてほしい」という声が多く上がるようになりました。

そこでサッポロビールとは別組織の一般社団法人を立ち上げて、ビールの検定を実施することにしたんです。 実施の目的は、日本のビール文化を守り、継承していくことです。折しも、若者のビール離れがクローズアップされる一方、小規模ブルワリーのビールの製造量が復調して「クラフトビール」という言葉がよく使われ始め、従来と違って「ビールは特徴で選べる飲み物」という魅力が認知されてきたころでした。

そうして2012年に第1回を開催しました。 従来の日本のビール会社はマーケティングばかり重視していて、ブランドイメージばかりが広まっていました。しかしビールが本当に好きな人は、例えば原料や製造工程のことをもっと知りたいはずで、そうした情報を提供するのはビール会社の責務だと思っていたことも、開催の背景にありました。

アップデートしつづける「びあけん」テキスト

――ひとりの読者として見ても、『日本ビール検定公式テキスト』は非常に公正に書かれていると思います。特に2018年4月にも改訂版が出たのは、税制上のビールの定義が変わったタイミングでしたから、意義深いと感じました。

大登検定を始めるに当たって、出版社と一緒に編集してテキストをつくって、市販することになりました。正確かつ根拠を明らかにすることが求められたので、必要に応じてさまざまなところに取材に行きました。これまで2年に1度、改訂版を出し続けていて、2018年もその周期の一環でした。

――テキストや検定問題を見ると、「アルコールと健康」「適正飲酒」まで網羅されていて、例えば大手メーカー5社による「ビール酒造組合」の活動の目的にもかなうように見えます。協力にサッポロビール以外のメーカーが入る可能性はありませんか。  

大登「アルコールと健康」は2012年から、つまり「びあけん」になってから章立てをして入れました。「飲みすぎは良くない」ということを伝えないと、社会への貢献にはなりません。

印象的だったのは、「適正飲酒」に関する問題です。2016年の1級にこの言葉そのものを問う問題を出しましたが、正答率は37%と、私たちの期待に反して低かったんです。これをきっかけに一人でも多くの人に知っていただきたいと思っています。

協力については、仲間は常に探しているかたちです。「協力」というクレジットには入りませんが、他のビール会社からは例えば写真提供をしてもらっています。この協力関係は、各社が貴重な資料を持っているので、日本のビール産業を受け継いできた尊敬の上に成り立っている賜物だと、大変感謝しております。
びあけん
すべての級の対策の基本となる『日本ビール検定公式テキスト』

「びあけん」の反響は?

――第8回まで開催を重ねられてきた秘訣は何でしょうか。また、回を重ねることによって、当初は予想していなかった反響があれば教えてください。  

大登「知識が枯渇してしまっては検定を続けられない」と思っています。原料、製造工程、歴史といったそれぞれ得意とする方はいますが、それらをまとめ上げなければなりません。どこかの分野だけに精通した人がいろいろ調べてなんとか1回はテキストや検定をつくれても、その後のアップデートは難しいものがあります。

「世界のクラフトビールは知っているけれども、日本のビールの歴史は全く知りません」という感じでは、1級はまず受からないと思います。ビール文化について、あらゆる方面から話せるマスターを輩出しているんです。  

予想していなかったのは、1級合格者の方々との出会いです。お住まいもお仕事もさまざまで、1級合格がきっかけでメディアに出演する方もいます。初めての1級合格者が出てすぐの2014年初以来、毎年1回「1級合格者の会」を開催しています。  

この会を開いたきっかけは、検定第2回での初めての1級の合格率が、私たちの想定より大幅に低かったことです。20%くらいと考えていたのですが、フタを開けたら4.2%。かなりの難関でした。だからこそ、この難関をくぐり抜けた方たちを祝福する機会を設けたかったんです。1級はこれまで、合格率は1桁台で推移していて、延べの合格者数は73名です。
新年会
毎年開催される「びあけんマスターズ(1級合格者)新年会」は、1級合格の事実を噛みしめる機会の一つで、各地から参加者が集まる

「びあけん」対策術は?

――勉強を始める時期はいつからがよいでしょうか。  

大登いろいろ聞くと、1週間前という方が多いですが、もっと早くからをおすすめします。2級、3級は、1カ月前にはテキストを読み始めて、1週間前には太字部分を覚える勉強をした方がいいでしょう。

1級は1カ月前ではとても間に合いません。半年前から始める方もいますし、年中勉強している人もいます。私たちも作問は複数人で年中していますので、出来上がった問題は子供のようにかわいく思っています。3級は8割くらい合格するので難しくはありませんが、ぜひテキストを一度は通読して、流れを追ってもらえるとうれしいです。

――今年から、2級・1級併願が可能となり、この仕組みにおいて、「初受検の年から1級受検が可能」となりました。導入した理由を教えてください。

大登去年は台風の影響で、福岡、大阪、名古屋会場は中止になり、そこでの受検予定者約800名に全員に連絡を取って事情説明をしたところ、「来年どうしても1級を受検したいので、今年2級を受けたかった」という声が多く上がりました。就職・転職活動に間に合わせるためにいきなり1級を受けたいという声も前から上がっていましたが、去年は特に切実だったんです。

これまで1級に受かってきた人は2年掛かりで受かってきたので、不公平に思われないだろうかと議論して悩みましたが、このたび併願を新設することにしました。注意点は、検定日の時間割は、1級、2級という順番で、1級を受けるのに心の準備はできないかもしれません(笑)。しっかりと準備をしてきてください。

難関のびあけん1級の合格に近づく勉強法

ここからは筆者なりの「びあけん1級対策」をお伝えする。

1級対策もテキストを読むことが基本となるが、時事問題や小規模ブルワリーの動向、さらには海外のビール事情まで出題される。また出題方法も3級・2級と異なり、これまで4択問題だけでなく、単語を書き出す記述問題と、200字以内の作文をする論述問題が出されてきた。100点満点中80点以上で合格だ。

今年から出題方法が変わる可能性がないとは言えないが、昨年までの出題傾向に沿って、項目ごとにコツを記す。
試験会場
今年の検定は札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5会場で実施される
 論述問題は満点を狙う
論述問題の解答は200字以内。仕事上でちょっと注意が必要な説明を含めたメールを書いたら、すぐに届いてしまう文字数で、配点は20点。特別に深い知識を聞かれるわけではないので、指定されたキーワードの使用といった制約を守って、素直に書こう。よほど的外れなことや独りよがりなことを書かない限り減点されないし、逆に時間をかけて凝った内容や表現にしても、20点以上はもらえない。

必要最低限の時間で済ませて、4択問題と記述問題で考えたり見直したりする時間を多くしよう。
 
テキストの精読がとにかく基本
ある1級合格者による調査によれば、4択問題と記述問題(いずれも配点40点、計80点)は毎回、テキストを丸暗記して、4択問題の正答の期待値を加味すれば、50点前後取れる。つまり論述問題が満点の20点であれば、合計70点以上となり、合格に大きく近づく。だから対策の基本はテキストになる。副読本もいくつか紹介されているが、手を出すのはテキストを最低でも2回は精読してからにしよう。

テキストの精読の際、コラムはもちろん、ページの最下部にある「Key Word」からもよく出題されるので、文字通り「すべての文字」を読む必要がある。また当然、読んでいて分からないことは徹底的に解決するようにしよう。
 
 記述問題はあやふやでもとにかく書く
記述問題はこれまで1問2点配点・計20問、出題されてきた。筆者のこれまでの経験や、他の1級合格者に聞いてみたところ、多少の誤記があった場合は部分点、つまり1点もらえることがある。記憶があやふやでも、とにかくまず解答用紙に書き出してみよう。部分点がもらえるかもしれないし、実際に書き出してみることによって正しい答えを思い出すこともある。
 
「キリがない」時事問題に取り組む方法
ビールが人間にとって欠かせない飲み物だと思わせるのが、毎日、国内外を問わず何かしらのニュースが報道されることだ。それらをチェックすることで、1級受検者を悩ませる、4択と記述の両方で問われる時事問題の対策をすることができる。

Yahoo!ニュースやGoogleニュースで「ビール」を単語登録すれば効率良くビールニュースを集められそうだが、難点は広告やタイアップ記事も拾ってしまい、どれが重要な記事なのか、慣れないと判別がつかないこと。「世界最古」「500周年」といった客観的にすごいと分かる社会的関心事でないと、出題はされにくい。

おすすめは、日本経済新聞の電子版を購読して、「ビール」をキーワード登録することだ。関連する記事は毎日メールで案内してくれるし、実際にほぼ毎回のメールで何かしらのビールニュースが含まれる。

また日経という国内最大の経済専門紙に掲載される出来事は、社会的関心が高いと言え、さらに記事中に他業界との比較が書かれることも少なくない。ビールそのものやビール業界を客観的に見る視点も養えるのだ。
 
ビール審査会での受賞結果は客観的事実なので出やすい
現在、世界ではさまざまなビール審査会が開催されていて、日本の銘柄が受賞すると、地元メディアなどで報道されることがある。びあけんでこれまで出されてきたのは、世界最大の国際的な審査会であるワールドビアカップ(米国、偶数年に開催)と、毎年開催では世界最大の国際的な審査会であるオーストラリアンインターナショナルビアアワーズが中心だ。

今年はワールドビアカップがない代わりに、奇数年に開催するインターナショナルブルーイングアワーズ(英国)が開催され、複数の日本の銘柄が受賞したので、確認しておいた方がいいだろう。
びあけん認定書
検定後、合格通知とともに届く認定書

※記事の情報は2019年6月26日時点のものです。
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