西村まどかのサケ・コレクション⑥ がんばりました全国燗酒コンテストで審査員

唎酒師でタレントの西村まどかさんは全国燗酒コンテストに審査員として参加し、200種類を超える燗酒をテイスティングしました。真夏にたくさんの燗酒を試してみて、彼女は燗酒にどんな魅力を感じたのでしょうか?

ライター:西村まどか西村まどか
メインビジュアル:西村まどかのサケ・コレクション⑥ がんばりました全国燗酒コンテストで審査員

エアコン効かせて真夏に燗酒

毎日35℃越えの日が続く8月上旬、全国燗酒コンテストが東京で2日間にわたって開催されました。13回目の開催となった今年、全国の酒蔵が「うちで燗がおいしいのはこれだ!」と出品してきたお酒は812種類です。

私、西村まどかは、僭越ながら、このコンテストに審査員として参加させていただきました。審査員は2月に開催された「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」以来です。燗したお酒を審査するのは初めてでしたが、バラエティ豊かなさまざまなお酒と出会うことができました。
暑さに負けず元気に参加してきました
初日、暑さに負けず元気に参加してきました
コンテストを運営する酒文化研究所さんから「燗酒シーズンの秋冬に備えて、審査会は真夏に開催しています」とお聞きした時は、暑い時に熱燗ですかとビックリしました。でも、エアコンの効いた涼しい部屋でたくさんの燗酒を試してみると、真夏の燗酒もあり、とてもおいしいじゃないという新たな発見。そして、燗酒はとてもお腹が空くのですね。お酒の旨みがたっぷりで何かおつまみが欲しくなるのでした。
v広い会場でディスタンスをたっぷりとり、スタッフが審査酒を銘々にサービスして審査
広い会場でディスタンスをたっぷりとり、スタッフが審査酒を銘々にサービスして審査

おもしろいけれどタフな燗酒審査

審査会は2日間にわたっておこなわれ、200種類以上の燗酒を品評しました。お酒をひとつにつき1~2分のペースで5段階で評価します。点数、評価のポイントをコメントするのですが、ずっと集中しているので、なかなかタフです。しかも、酒蔵が厳選して出品してきたお酒ですから、ハイレベルなものばかりです。淡々としたペースで進むなか、驚きあり、感動ありで、貴重な経験となりました。

審査ではとても緊張していたのだと思います。やっている時には感じませんでしたが、2日間とも晩はぐっすり眠れました。
お猪口に注がれた燗酒の評価を審査シートに記入します
お猪口に注がれた燗酒の評価を審査シートに記入します
私が担当した部門は、お値打ちぬる燗部門とプレミアム燗酒部門、そして特殊ぬる燗部門の3つです。お値打ちぬる燗部門は720mlで1100円以下のお手頃価格のお酒が対象です。このお値段なら気軽に試せますね。プレミアム燗酒部門はそれよりも高価なお酒で、燗向きの純米吟醸や大吟醸などが出てきます。そして、特殊ぬる燗部門は、にごり酒、古酒、樽酒、極甘酒等の燗酒です。
1時間弱で30点を評価して15分休憩。約3時間かけて100点ほどを審査した
1時間弱で30点を評価して15分休憩。約3時間かけて100点ほどを審査した

個性豊かな特殊ぬる燗部門

審査をして特に驚きと発見があったのは特殊ぬる燗部門でした。

ふだんは飲みやすい吟醸香のあるタイプを冷やして飲むことが多く、長期間熟成した古酒や杉の香りをまとう樽酒を燗で飲む機会はなかなかありません。出てきたお酒は冷やした吟醸酒の真逆のような味わいなのです。
こんな褐色に色づいた古酒もあった。複雑な味わいで余韻が長い
こんな褐色に色づいた古酒もあった。複雑な味わいで余韻が長い
とにかくひとつひとつ表情が豊かで、香り、口当たりが違います。バナナ、イチゴ、チョコレート、ヨーグルト、ヒノキのような香りだったり、まろやかな口当たり、ピリッとした口当たりや、ザラザラとしたにごりが味わえるものがあったり、色や粘度など見た目も違います。最初はどう評価するのか難しいと思いましたが、女性視点で、最年少の立場として、感じたまま、率直に、素直に評価するのがいいと割り切って、コメントしていきました。
評価や印象を即座にコメントするのには慣れも必要
評価や印象を即座にコメントするのには慣れも必要

つくり手の意向を汲み取りつつ燗酒を評価

200種類を超す燗酒を試飲して思ったことは、おいしいと感じるお酒に2パターンが自分の中で出てきたことです。ひとつは口にしてすぐに、おいしいと感じるものです。わかりやすいおいしさとでも言いましょうか、誰が飲んでもおいしいだろうと思うお酒です。

もうひとつは、口の中に含んでからジワジワとおいしさがやってくるタイプです。味や香りが複雑で、口の中で味わっているうちにおいしいなあと感じてきます。どちらが良いということではなく、どちらもそれぞれ良いなぁと思いました。

また審査が進むうちに、口に含む前、立ち上がる香りから味がイメージできて予想が当たって嬉しかったり、予想外な味わいに驚いたりと、自分の感覚が鋭くなっていくのを感じました。評価もいろいろな角度から見るようになっていったと思います。これはどんな料理と合うだろう?これはお酒だけでゆっくりじっくり味わって楽しみたいなどと、考えながらやるとどんどん違いが見えてきたのです。
2日目は審査にも慣れて、いろいろな角度から酒を見られた
2日目は審査にも慣れて、いろいろな角度から酒を見られた
ただ、長所や短所を総評して点数にすること、感じたことを適切に言葉で表すことは、最後までとても難しかったです。

味の好みや、おいしいと思う基準は人それぞれです。だからこそ、味の良し悪しだけでなく、なぜこの香り、味わいにしたのか、どういう意味が込められているのだろう?など、つくり手の想いを汲み取る姿勢が大切だと思います。

昨年、酒文化研究所の山田聡昭さんにサポートしてもらいながら日本酒を勉強して、一本のお酒にたくさんの人と時間と労力がかけられているかを知りました。大切に丁寧に味わうことを心がけることで、より日本酒を楽しむことができるのではないでしょうか。
審査の3時間、ひたすら燗をつけ続けるスタッフたち。燗酒の審査会を運営する労力はたいへんなもの
審査の3時間、ひたすら燗をつけ続けるスタッフたち。燗酒の審査会を運営する労力はたいへんなもの

「熱燗」と一括りにはできない!

燗酒をお店で頼むときは、あまり考えずに「熱燗ください」という方も多いと思います。でもお酒のタイプによって、また温度によって味わいがまったく変わってきます。そもそも「熱燗」は熱めに燗をするということで50℃~55℃(審査では55℃まで加温して猪口に注ぐ)、ぬる燗は40℃~45℃(〃45℃まで加温して注ぐ)、ちなみのその中間は上燗(じょうかん)と言います。

繊細で個性豊かな日本酒の違いを少しでも知って、いろいろな温度や飲み方で飲み比べたり、カジュアルに楽しんだりしてみて欲しいです! そうすると日本酒の奥深さがもっと見えてきて、ただ「熱燗ください」とは言わなくなるかもしれませんね!

まだまだ勉強中な私ですが、もっともっと日本酒を広めたいです。これからも日本酒の楽しみ方を発信していきます。応援よろしくお願いします!
いろいろな日本酒をお燗で試してみてください!
いろいろな日本酒をお燗で試してみてください!
全国燗酒コンテスト2021の結果はこちら。

※記事の情報は2021年8月19日時点のものです。
 
 
 ▼参考サイト
西村まどか Instagram Twitter

日本酒のソムリエ唎酒師

   

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