福井の酒と食、伝統工芸を発信-ESHIKOTOプロジェクト始動

福井を代表する銘酒「黒龍」。地酒ファンならずともその名を知る方は多いだろう。2024年春に北陸新幹線は、福井と東京は2時間53分で結ぶようになるが、「黒龍」はそれを見据えて「ESHIKOTO(えしこと)プロジェクト」を始動した。

メインビジュアル:福井の酒と食、伝統工芸を発信-ESHIKOTOプロジェクト始動

ブルゴーニュのようなSAKEツーリズム

清酒『黒龍』などを製造する黒龍酒造を抱える石田屋二左衛門株式会社(福井県永平寺町)は、6月17日に酒蔵観光施設ESHIKOTOをオープンした。

同町下浄法寺地区に3万坪の敷地を確保し、現在はレストラン&ショップの「酒楽棟」とスパークリングSAKEの貯蔵セラーのあるイベントスペース「臥龍棟」、そして清酒や焼酎の長期熟成用の「地下蔵」が完成、今後は宿泊施設や蒸留所を建設し、北陸・福井の酒と食にこだわりながら、伝統工芸や永平寺の文化を国内外に発信する。

ちなみに「ESHIKOTO」は永久(とこしえ)を逆から読んだ造語で、「いいこと」の意味もある。さまざまなつくり手やクリエーターがここで交流し、福井の「いいこと」を発掘・開発・育成を目指す。
 
臥龍棟でESHIKOTOプロジェクトの主旨を説明する水野直人社長(左)と畑山浩杜氏(右)
臥龍棟でESHIKOTOプロジェクトの主旨を説明する水野直人社長(左)と畑山浩杜氏(右)
水野直人社長はこの事業を構想した経緯をフランスのワイン産地に触発されたという。清酒と同じ醸造酒のワインに関心を持ち、何度も渡仏するなかで、銘醸地ブルゴーニュ地方を世界中のワイン愛好家が訪れ、ワインの生産者をはじめ地元の人々と交流する姿を目の当たりにした。ブドウ畑しかない田舎で繰り広げられるハイセンスな文化交流、これを福井で、清酒でもできないだろうかと考えたのがきっかけだったそうだ。

長く温められた構想は10年ほど前から具体化に向けて動き出し、四季を通じて九頭竜川の美しい眺望を楽しめる下浄法寺地区に白羽の矢を立てる。用地を取得すると35軒の地元住民に主旨を丁寧に説明し、理解を得ながら開発を進めたという。
大きな屋根が圧巻の臥龍棟
大きな屋根が圧巻の臥龍棟(約230坪)(通常は非公開)。設計者のサイモン・コンドル氏は、イギリスを拠点に世界中で住宅、コミュニティスペース、ワークスペースなど、数多くの空間を手掛けてきた
臥龍棟は天井がたいへん高く開放的
臥龍棟は天井がたいへん高く開放的。イベントスペースとして活用する
臥龍棟内の試飲カウンターは直径1mを超える杉の巨木を使用
臥龍棟内の試飲カウンターは直径1mを超える杉の巨木を使用。その大胆さに驚かされた

「スパークリング」は清酒のフロンティア

ESHIKOTOで提供される酒は黒龍酒造が製造し、ここでしか販売しない商品として同ブランドを展開する。ラインナップには瓶内二次発酵させたスパークリングSAKEもあり、これを長期熟成させるために、国内最大級の貯蔵施設を設けた。

醸造責任者の畑山浩氏はスパークリングSAKEについて「清酒の製法は江戸期に確立したが、スパークリングSAKEはまだ始まったばかり。この酒への取り組みで新しい清酒の技術開発が一気に進むと感じている。乾杯の華やかさがありながら、肌理の細かい泡と味わいの複雑さ、清酒ほんらいの酸と旨味もあり幅広い料理に合わせられる酒を目指し、最低15ヶ月貯蔵している。大きな貯蔵庫をつくったのは、それだけの広さが必要であると同時に、きちんと貯蔵していることを見せる意図もある」と説明した。
スパークリングSAKEを9000本貯蔵するセラー
臥龍棟にはスパークリングSAKEを9000本貯蔵するセラーを設置。瓶内二次発酵で長期間熟成させる
臥龍棟とは別に5万本を長期貯蔵するを地下蔵(非公開)が設けられた
臥龍棟とは別に5万本を長期貯蔵するを地下蔵(非公開)が設けられた

ケーキとアペロを楽しむ「酒楽棟」

そして臥龍棟と並んで目を惹く大きな建物は酒楽棟だ。2階のテラスからは目の前を流れる九頭竜川を臨むことができ、階段を上がっていくとスイーツとアペロ(おつまみと軽いお酒)を楽しめる「acoya福井」とショップ「石田屋ESHIKOTO店」が左右に並んでいる。

acoya福井の店内は、黒を基調とした「アペロacoya」と白を基調としたコーナー「パティスリーaccoya」に分かれており、前者ではESHIKOTOでだけ提供されるスパークリンSAKEや梅酒を味わえる。フードはもちろん厳選した福井の食材を活かしたもので、フレンチをベースにすぐ近くにある永平寺の禅を意識し仕立てたおつまみが並ぶ。一方のパティスリーaccoyaはケーキや焼き菓子を提供する。
「酒楽棟」
「酒楽棟」(454坪)2階のテラスへの階段からの九頭竜川の眺望は格別だ
禅寺の総本山である永平寺に因んでランチは膳で提供
禅寺の総本山である永平寺に因んでランチは膳で提供。朝食とランチ営業のみ
ESHIKOTOのスパークリングSAKE
ESHIKOTOのスパークリングSAKE。低温でじっくり熟成させたエレガントな味わい。窓の向こうに九頭竜川が見える
ショップ「石田屋」では「ESHIKOTO」のほか「黒龍」の主要商品が並ぶ
ショップ「石田屋」では「ESHIKOTO」のほか「黒龍」の主要商品が並ぶ
ここでしか販売されない「ESHIKOTO」シリーズ
ここでしか販売されない「ESHIKOTO」シリーズ。製造は黒龍酒造が担当する
店内には立派なカウンターを設け試飲もできる
店内には立派なカウンターを設け試飲もできる
《所在地》
〒910-1202 
永平寺町下浄法寺12-17 レストランacoya  
TEL:0776-97-9396
石田屋ESHITOKO
TEL:0776-63-1030
ESHIKOTO公式サイト


※記事の情報は2022年7月7日の情報です。

  

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