ヤンマー×沢の鶴コラボの集大成! 純米大吟醸「NADA88」を飲んでみた

灘の老舗酒蔵「沢の鶴」と農機具大手の「ヤンマー」による6年にわたる酒米プロジェクトの集大成とも言える日本酒が発売。その味わいとは。

ライター:青田俊一青田俊一
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名古屋の酒類卸イズミックの青田が、いま注目のお酒の情報をバイヤー目線でお届けします! 今回は新しい取り組みによって生まれた日本酒をご紹介します。

沢の鶴×ヤンマーの酒米プロジェクトの集大成「NADA88」

少しずつ冬の気配が近付きつつある今日この頃、そろそろ日本酒の恋しい季節の到来です。

というわけで、今回は久しぶりに日本酒です。ご紹介するのは沢の鶴とヤンマーのコラボで生まれた日本酒「NADA88」です。
NADA88
ヤンマーは言わずと知れた農機具のメーカーですが、そのヤンマーと沢の鶴は、高品質な酒米の安定調達を目指し、”新しい酒米を作ること”を目標に掲げ、2016年に酒米プロジェクトを始動。そのプロジェクトから生まれた日本酒「Xシリーズ」は以前にもこちらでご紹介させていただきましたが、今回の「NADA88」はその集大成になる日本酒です。

今年の6月にクラウドファンディングにて先行販売され、目標金額を大きく上回る結果を達成。この10月に満を持して一般販売が開始されることとなりました。

ちなみにこちらの商品、順当にいけばXシリーズの4作目なので″X04”になるところですが、シリーズの集大成という位置づけということもあり、沢の鶴がある灘という場所と、沢の鶴が最も大切にしている米の字を分解すると八十八になることから「NADA88」という名前に決めたそうです。
「NADA88」の最大の特徴は″酒米”です。使われている酒米はヤンマーと沢の鶴の6年にわたる酒米プロジェクトによって開発された全く新しい品種「OR2271」。

この「OR2271」の開発の目的は、酒米の王様とも呼ばれる山田錦の抱える課題の解決です。山田錦の欠点は、稲が倒れやすいということ。倒れにくくするにするためには肥料をたくさん与えなければいけないのですが、与えすぎると酒米としては好ましくない成分、たんぱく質の含有量が高くなってしまうという問題があります。

2016年の酒米プロジェクト始動から6年の歳月を費やし、これらの課題をクリアしたのが「OR2271」です。山田錦に比べ草丈が短くなり、倒れにくく栽培しやすくなっただけではなく、特性としても山田錦と同等、もしくはそれ以上のポテンシャルを持った酒米となりました。

そうなると、その味わいがいちばん気になるところ。早速試飲といきましょう。

「NADA88」を飲んでみた

「NADA88」は精米歩合47%の純米大吟醸。「OR2271」は山田錦と比べアミノ酸が多かったとのことで、その旨みを活かすため、味わいがしっかりする生もと造りが採用されています。180mlで税込2,000円というややリッチな価格帯で、その分期待は高まります。

せっかくなので香りの開く大吟醸用のグラスで試飲しましょう。
NADA 88
りんごのような果実の甘い香りに、生もと造りならではの少しチーズっぽい香りがほんのりと混ざります。口に含むと驚きの味わい。米の旨みがしっかりとあって、かといってべたっとするわけでもなくキレはすっきり。スペック上は日本酒度が-16.0という、この手の日本酒ではあまり見かけない甘口タイプですが、甘さというよりは旨みがしっかりしています。最近飲んだ日本酒の中では一番バランスが整っていて、ちょっと感動です。

米の旨みが強く、濃い味付けの料理に合わせても負けない力強い味わいで、和食に限らず幅広い料理と合わせてお楽しみいただけると思います。個人的には麻婆豆腐のようなスパイシーな中華に合わせたいと思いました。

この「OR2271」は、まだまだ商用レベルとしては栽培実績が少なく、今後品質が変化してしまう恐れがあるため、引き続きヤンマーと協同でICTなどの先端技術を用いて商用レベルまで品質を向上させていく予定とのこと。山田錦に代わる新たな品種が台頭する未来もそう遠くはないのかもしれません。

日本酒の未来を担うかもしれない挑戦的な1本、普段の家飲みにはややハードルの高いお値段かもしれませんが、これからの酒米の未来に夢を見つつお楽しみいただければと思います。

 

純米大吟醸 NADA88【商品概要】

  • 精米歩合:47%
  • アルコール度数:15%
  • 日本酒度:-16.0
  • 容量 / 容器:180ml / 瓶
  • 参考小売価格:1,818円(税抜)
  • 製造元:沢の鶴
※記事の情報は2022年11月7日時点のものです。
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