2018.06.05
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冷蔵庫に残る食材の活用法をイタリア人の奥さまに教えてもらいました(1)

冷蔵庫に残る食材の活用法をイタリア人の奥さまに教えてもらいました(1)

パスタやリゾット、イタリア風のおつまみなどを作ろうと、気合を入れて本場の食材を買ってみたものの、余ってそのまま冷蔵庫に放置、なんてこと、ありますよね。そこで、せっかくの食材を無駄にしないイタリア流の活用法を、日本で暮らすイタリア人女性に聞いてきました。

イタリア流サルベージを教えてもらいます!

以前「イタリア男子に学ぶ、モテる家飲み」の回で、マッテオさんにイタリア料理の手ほどきを受けたリサさん。その後、その美味しさに感化され、サラダやリゾットを自宅でも作っているそうだ。そんな彼女にちょっとした悩みが…。

 

「美味しく作ろうと思うと、つい本格的な食材を買ってしまうんです。そのとき、使い切れないケースが多くて。そのまま冷蔵庫に眠っていて(笑)。そのうち使おうと思いながらも何カ月か経つと、もう蓋を開けるのもコワくて(笑)」

 

しかし、それはよくある話なのです。日本食の材料ならば、1つの食材につき、いくつかの料理のバリエーションが自然と浮かぶでしょう。つまり、勘が働くわけですが、イタリア料理となると、1つの料理のために、いくつかの食材を買い足す形になることが多いのです。

 

「それなら、友達のイタリア人に聞いてみよう。餅は餅屋、イタリアのことはイタリア人に、というわけだ」

 

そこで、以前にもこのコラムに登場してくれた東京在住18年目のベテラン主婦クラウディアさんに相談してみたところ、

 

「もちろん。よくサルベージ・パーティーをやるから、お役に立てるわ。この前好評だったレシピを教えてあげるわよ」

 

そう快い返事をいただきました。さて、彼女の口から出た「サルベージ(Salvage)」という言葉、ご存知でしょうか? 英語で「海難救助」を指す一種の専門用語なのですが、これを最近では「冷蔵庫の残り物活用」という意味でも使っているのです。まさに冷蔵庫に漂う食材の救出ですね。

それではクラウディアさんと一緒に「救出作戦開始!」といきましょう。

イタリアでもよく残る食材で、絶品パスタを作ります

早速、最初の「救出食材」。まずは、ケッパーと黒オリーブです。いずれも、日本では瓶詰めが多く出回っていますね。特にケッパーのように味の強い食材は、一度にたくさんの量を使うことができません。少量をサラダなどに混ぜるなどして、味のアクセントとして利用するもの。そのような材料って、残りやすいですよね。

 

「それに黒オリーブも、グリーンオリーブに比べて味にクセがあるから、イタリアでも、グリーンオリーブが先になくなって、黒が残りやすいわ」

と、クラウディアさん。そこで、このイタリアでも残りやすいという2つの食材を一気に活用できる、お手軽パスタを教えてくれることになりました。その一皿とは「スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ(Spaghetti alla puttanesca)」。訳すと「娼婦風スパゲッティ」というパスタです。

 

まずは材料4人分。

 

スパゲッティ 320g, ミニトマト400g, 黒オリーブ(種なし) 80g, ケッパー 大さじ2杯, ニンニク 1片, 唐辛子 1片, イタリアンパセリ 適量, 塩 適量, エキストラバージン・オリーブオイル 適量

調理する前に、簡単な下ごしらえから。まずケッパーは商品によって塩味の加減が違いますが、30分~1時間ほど水に浸して塩を抜き、ペーパータオルなどで水気を切っておくとパスタにほどよく合います。

 

それから、ニンニクはスライスせずに、潰しておきます。そうすると焦げにくく、香りがよく立ちます。またオリーブは輪切りにしておくと味がなじみやすいですよ。

 

では調理開始です。フライパンにオリーブオイルを引いて、潰したニンニクをゆっくりと炒めます。油に香りが移ったら、オリーブ、ケッパー、唐辛子を加えます。

火加減は中火の弱火、といった程度。焦がさないようにやさしく炒めます。1分ほどしたら、ミニトマトを丸ごと投入。

このままジワジワと10分ほど火を通します。トマトの皮がはがれる感じになってきたら、塩をひと振り。さらに刻んだパセリをまぶして彩りを加えます。

 

とにかく、材料を順番に炒めているだけ。それなのに、香ばしく、食欲をそそる匂いが立ち上がってきます。なんとシンプル、それでいて、なんと美味しそう。

パスタをおいしく仕上げるコツはこれだ

その間に、パスタの準備をします。鍋で茹でるとき、イタリアでは先に、茹で汁の方に塩味を加えます。

 

このときの塩加減がなかなか難しい。日本ではよく「海水の濃度」とか「水に対して1パーセントの塩」とか言われたりします。しかし、やはりこれは何度かやってみて、自分なりのいい塩梅を見つけるのがいいように思います。実は、イタリアでは「サーレ・グロッソ(Sale grosso)」という粗塩が簡単に手に入ります。粗塩といっても、岩塩を荒く削ったような感じ。この「サーレ・グロッソを一掴み」というのがイタリア流です。こんな感じ。

ここでクラウディアさんが、パスタを美味しく仕上げる大切なポイントを2つ教えてくれました。

 

1つ目、スパゲッティを茹でるのは「袋に表示されている時間の半分」にすること。「ゆで時間8分」であれば「4分」で取り上げます。

 

2つ目、麺を上げるとき、ザルに流さないで、菜箸やパスタ用の器具を使って麺だけをフライパンに移すこと。これは、茹で汁を後に取っておくためです。

 

さて、パスタを茹でている間、リサさんから質問が。「どうしてプッタネスカ(娼婦風)というのですか?」

 

「イタリアでは、いくつか説があるのだけれど、ナポリのスペイン人地区にあった娼婦の館のオーナーが、客の男性へサービスとして出したというのがよく言われているわ。これを食べると、また元気が回復すると評判になったとか。もう1つは、このパスタのソースが、その娼婦たちの下着やガウンの色を表しているというもの。例えば、トマトの赤、パセリの緑、オリーブの濃い紫は、彼女たちが客引きのために身につけていたランジェリーの色に似ているというわけよ」

 

というクラウディアさんの説明に、リサさんもなるほどとうなずくばかり。確かに、その香りのよさ、彩りの鮮やかさに、すでにかなりの食欲をそそられております。これ食べたら、こりゃ、いろんな意味で元気が出るだろうなあ。そんなことを思っているうちに、パスタもいい頃合いに。

このようにスパゲッティをぜんぶフライパンに移したら、鍋からゆで汁を取って、フライパンに注ぎます。

こうしてフライパンの中で再度煮込むために、パスタのゆで時間を半分にしていたのですね。フライパンで、他の具材と一緒にゆでることによって、ソースの絡みが良くなり、また乳化してパスタ全体にコクが出るのです。

さあ、盛り付け。もう一度刻んだパセリを全体にかけて、彩りを加えます。さらに、エキストラバージン・オリーブオイルを好みでかけたら、できあがりです。

 

「プッタネスカはイタリアでも、南部のパスタなの。日差しが強く、暑くて、とても乾燥した地域ね。だから、合わせるワインはフレッシュで果実味のある、さわやかな辛口の白がおすすめ。今日はカンパニア州産のファランギーナを用意したわ」

 

と、さすがクラウディアさん。「ワインと料理の産地を合わせる」という、イタリアの食の基本をしっかりとおさえています。

それでは、たっぷりいただきましょう。Buon appetito!(ブオナッペティート)

「ソースがすごく濃厚。でも、とてもさっぱり。ケッパーとオリーブの塩味が、いいアクセントになっていますね」とリサさん。食べ出したら、止まらない、といった勢い。

 

満足そうにうなずくクラウディアさん。「冷えた白ワインがよく合いますね。トマトをとろとろにして、パスタにしっかり絡ませるようにすると美味しく仕上がります。すると、このようにワインがまろやかな感じるでしょ?」

 

そう言われて、ワインを味わうリサさん。「本当にスッキリ。この白は、ワインだけで飲むとフルーティーだけど、パスタに合わせたらコクがある感じに。ふしぎです。パスタをつまみにワインもありですね。新しい家飲みのパターンができそう。パスタとワインの女子会とか。盛り上がるかも」

 

と言いつつ、二人の女子会、すでにかなり盛り上がってます。冷蔵庫の残り物でこんなに喜んでもらえるなんて。するとクラウディアさん、さらにうれしい活用法を教えてくれました。それはまた次回に。

 

※記事の情報は2018年6月5日時点のものです。

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フェウディ・ディ・サン・グレゴリオ セッロチェロ

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京藤好男

京藤好男

東京外国語大学イタリア語学科卒業。1995年ヴェネツィア大学留学。イタリア文学専攻。その滞在期間中、ヴェネト州のヴェローナ、ピエモンテ州のランゲ、トスカーナ州のモンタルチーノなど、ワイン名産地の人々と親交を持ち、イタリア・ワインに親しむ。現在、慶應義塾大学など複数の大学で講師を務めるほか、2006-2008年にNHKラジオ『イタリア語講座』、2007年にNHK『テレビイタリア語会話』で講師を務めるなど、様々なメディアで講師活動をしつつ、ワインを始めとするイタリア文化の普及に努めている。著書に『指せば通じる旅のらくらく会話 イタリア』、『文法から学べるイタリア語』(共にナツメ社)、『中級へのイタリア語文法』(三修社)など多数。

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