シメにラーメンを食べてしまうのは、なぜなのか〈老けない人は何を飲んでいる? ⑧〉

たんに食いしん坊というだけでなく、「ニューロン」が作用しているからかもしれません。

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アルコール自体のカロリーが高いのに食欲が湧いてしまう不思議。

お酒の健康に対する効用は、食欲増進、ストレス発散、心筋梗塞などの虚血性心疾患の予防があげられます。ただし、たとえば日本酒なら1合程度など、適量が条件になるのはいうまでもなく、さらに個人差もあることを忘れてはいけません。

アルコール(エタノール)は、1gあたり約7kcalほどあり、脂肪(1g約9kcal)に次いでカロリーが高い成分です。通常、食品からカロリーを摂取すると、脳の食欲信号が抑制されるため、満腹感を感じます。ところが、逆にアルコールは、食欲が増長します。カロリーを摂取しているので本来ならば食欲がみたされるはずなのに逆の作用があります。

たとえば、食前酒。食欲が刺激され美味しくお食事を楽しむことができるようになります。そして、さんざん飲んで食べた夜のシメにラーメン。これは考えるとおかしなことです。他の食べもの同士、たとえばパンを食べれば食べるほどご飯を食べたくなる、そういうことありません。このアルコールと食欲増進の関係は経験的にわかっていたものの、どうしてそのようになるのか、メカニズムまではっきりとはわかっていませんでした。

お酒を飲みながらだとどんどん食べられる。そしてお酒を飲んだ後にさらに何か食べたくなるというあの欲求。あれは、実はきちんとした理由があったのです。

シメにラーメンやチャーハン。ニューロンが指令を出しているのかも。

この研究成果を報告する論文《DOI:10.1038/ncomms14014(2017)》を簡単に紹介したいと思います。

結論から言いますと、空腹感を助長する働きのある脳細胞が、アルコールを摂取することでも、活性化するというのが理由です。

Denis Burdakov氏ら研究グループ(ロンドン大学など)は、アルコールを投与したマウスと、アルコールを投与されないマウスを比べたところ、アルコールを投与したマウスに食物摂取量が有意に増加したことを実験で確認し、その理由を解明しました。

マウスの脳の視床下部にある摂食回路の一部に存在するAgrpニューロン(アグーチ関連ぺプチド細胞)がアルコールによって活性化し、それによって食欲が増すというものです。

Agrpニューロンは神経細胞で、通常、空腹感をアップさせる働きをもっています。アルコールによる過食は、Agrpニューロンの働きが関わっていたのです。

研究報告によると、これはマウスの実験による結果なので人間にそのまま当てはまるとは限らないとされています。でも、人間もマウスと同様にAgrpニューロンが作用しているのかも知れません。飲酒後のシメに、ラーメン、ご飯もの、スイーツなどが無償に食べたくなるのは、決して自分が人並み以上に食いしん坊だからではなく、ニューロンの働きのせい・・・そう考えれば気が楽になるかも知れませんし、ここは自重しておこう、というきっかけになるかも知れません。皆さん、お酒の席の食べ過ぎにはどうかお気をつけください。


※記事の情報は2018年1月30日現在のものです。
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