日本発の伝説のホップ「ソラチエース」使用のビールが全国で発売!
「ソラチエース」をご存知ですか? 日本で生まれたこのホップを100%使用した話題のビールが本格的に全国発売されます。

この銘柄の最大の特徴は、銘柄名にも冠されているホップ品種「ソラチエース」が使われていること。このホップの名前の由来は、北海道にある地名・空知であり、実際にそこで開発された。そして空知の由来は、「下る滝」を意味するアイヌ語の「ソーラップチ」だという。ホップは品種によってさまざまだが、小さな滝が階段状に連続するような形はほとんど共通している。そのホップが「下る滝」の地でも開発・栽培されているのは不思議な縁があると言える。
ソラチエースは、サッポロビールが1984年に空知郡上富良野町で開発するも、その「ヒノキやレモングラスのような香り」は、当時は個性的すぎて使われなかった。しかし品種として残すために米国に苗を持ち込み、やがて米国を中心とした世界中のクラフトビールのうねりの中で人気を博すようになった。そして近年ではこのホップを使った国産・輸入ビールが日本の消費者の手に届き始め、今年はこのSORACHI1984によってソラチエースの人気が格段に上がるかもしれない。
開発を担当した同社のクラフト事業部ブリューイングデザイナーの新井健司氏に、このホップとビールの魅力を聞いた。

ソラチエースをとにかく味わってもらいたかった
新井:ホップは古くから、苦味付けをする「ビターホップ」、昔ながらの爽やかな香りを付ける「アロマホップ」、アロマホップよりも香りと苦味が穏やかで上品な「ファインアロマホップ」に分類されてきました。しかし例えば1970年代に米国で、柑橘類の香りと苦味成分の多さを特徴とする品種が開発・発売されるなど、従来のアロマホップやファインアロマホップの枠では説明できない個性の強いホップが誕生していき、それらがフレーバーホップと呼ばれるようになりました。「ユニークアロマ(独特な香りの)ホップ」や、苦味成分が多くて苦味付けにも使えることに着目して「デュアルパーパス(二つの目的に使える)ホップ」という呼び方もあります。ソラチエースもヒノキやレモングラスといった独特の香りがありつつ、苦味成分が多いという特徴があり、フレーバーホップに含まれます。

ビール製造の立場から見る、ソラチエースの特徴を教えてください。
新井:多くのホップの香りは、ビールに使うとアロマ(ビールを口に含む前、グラスに鼻を近づけたときにする香り)で強く感じますが、ソラチエースは口に含んでから少しした後や、後味でその香りがよく出てきます。異なる品種のホップとうまく組み合わせて使えば、アロマと後味で異なる香りが出せるという、深みのあるビールをつくることができます。しかし今回は、ホップはソラチエースのみのシングルホップ(単一のホップ品種のみ使うこと)でつくりました。香り付けも苦味付けもこのホップだけでしたということであり、このホップの特徴がどんなものなのか、とにかく味わってもらいたかったからです。そのために、ソラチエースはアルコール度数が高い銘柄に使われることが少なくないようですが、今回の我々の銘柄は5.5%で、ボディーは特に強調していません。その分、このホップの特徴がきれいに出ていて、よく感じられるはずです。
今回使ったソラチエースは米国産と北海道の上富良野産を併用しているということで、それぞれ特徴の違いはあるのでしょうか。
新井:分析結果が上がってきているわけではないのですが、違うという印象を持っています。両方ともビールに使うと、ヒノキやレモングラスのような特徴はもちろん共通します。しかし大ざっぱに言えば、米国産は荒々しく、上富良野産はおとなしい感じです。上富良野産の収穫量はまだまだ少なく、全国の皆さんに味わってもらうには足りないので、米国産と併用することにしました。

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