歩いて楽しむ酒⑥ バーボン蒸溜の仕組みを学ぶ、フォアローゼズ蒸溜所
歩いて楽しむバーボン第3弾。フォアローゼズ蒸溜所を訪れました。
ワイルドターキー蒸溜所の見学を終えると、急いでフォアローゼズ蒸溜所に向かいました。車で15分ほどとごく近くです。到着したのは17時前でガイドツアーは終了していましたが、ゲストハウス&ショップだけは見られるだろうと思ってやってきたのです。ところが予想に反して工場のなかも自由に見ることができ、よくわからなかったバーボンの蒸溜の仕組みを知ることができました。
おしゃれで上品なゲストハウス
フォアローゼズ蒸溜所はコンパクトにまとまり上品な雰囲気でした。立派な石造りの門を抜け、駐車場に車を停めて歩いてゲストハウスに向かいます。クリーム色な壁に赤い4つのバラが描かれたゲストハウスはオシャレで女性的、ワイルドターキー蒸溜所が男性的で力強い感じだったので、コントラストが際立ちました。
ビジターセンターの中も落ち着いた雰囲気でした。でも展示は自社のウイスキーをしっかりアピールする骨太の内容です。まず、原材料の「コーン」「ライ麦」「麦芽」が瓶に詰められ、実際に手で触れることができるようになっています。
そしてカウンターにはバーボン蒸溜の心臓部である連続式蒸溜器(ビアスティルと呼ばれる)の断面模型があります。原料の穀物の発酵液を加温し、下の段から蒸溜を繰り返して、香気成分は上に上に登って行きます。上に行くほど香気成分の純度は上がり最終的には純アルコールになりますが、バーボンは蒸溜時のアルコール度数が80度以下と定められており、どこまでアルコール純度を高めるかは目指すバーボンの酒質によって変わります。
また模型の右下側にタンクを伏せたような形の単式蒸溜器が見えますが、これが連続蒸留した蒸溜液の精留で使用するダブラーと呼ばれるものです。
蒸溜棟を見て行きなさい。自由に入ってかまわない
ガイドツアーは終了していたので場内を散策することにしました。ビジターセンターの裏手には東屋がありました。バーボンフェスティバルの期間中なので、昼間はガーデンパーティが開かれていたようで、スタッフが後片づけに追われていました。工場の中を見学できなかったのは残念だったと思いながら駐車場に向かっていくと、途中、フォークリフトを操作していた従業員が、「せっかくだから蒸溜所のなかを見て行ったら?」と話しかけてきました。「えっ、中へ入ってもいいのですか?」と聞き返すと、「もちろんだよ。こっちだ」とフォークリフトから降りて、蒸溜棟のなかに案内してくれました。あとは好きに見て行けと言い残して帰っていきます。追いかけて行ってチップを渡そうとすると、自分はここの従業員で当然のことをしただけだと受け取ってくれませんでした。なんていい奴なんだと『フォアローゼズ』の印象が赤丸急上昇した瞬間です。
蒸溜棟の中はそれはすばらしく、巨大なビアスティルの傍には内部の構造を見せる模型が置かれ、その横にダブラーがあります。連続式蒸溜機の中まで見せているのは、ここだけではないでしょうか。ウイスキーの蒸溜所にはあちこち行きましたが、他では見たことがありません。
見事な木桶発酵
蒸溜のパートですでに気分はガンガンに上がっていたのですが、奥にあった木桶の発酵槽も感動ものでした。糖化液がドドドっと音を立てて流れ込んでいる木桶があるかと思えば、ぶくぶくと盛んに発酵する桶もあり、いかにも酒造工場らしい景色は酒好き心を存分に掻き立てます。
すっかり満足して表に出ると、日没が間近な空にはうろこ雲。秋のフォアローゼズ蒸溜所の訪問は忘れられないものになりました。