【アブサン】酒好きがハマる「本物のアブサン」の魅力とは?

真のお酒好きがハマるというアブサンの魅力を、100種類以上のアブサンをそろえる銀座のVanilla Var (ヴァニラバー)のオーナー浅野進一郎さんに教えていただきます!

ライター:nonnon
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アブサンといえば100年に渡って禁酒されていたとか、ゴッホが愛飲し身を滅ぼす原因になった酒と伝えられるなど、いわくつきなイメージがありますが、その噂は本当なのか? 

真のお酒好きがハマるというアブサンの魅力について、100種類以上のアブサンをそろえる銀座のVanilla Var (ヴァニラバー)のオーナー浅野進一郎さんにお話を伺いました。

アブサンってどんなお酒?

アブサン棚
浅野 「アブサンはスイス発祥のお酒で、フランスやスペインなどヨーロッパで広く飲まれてきました。アブサンの基本となるハーブは『ニガヨモギ』『アニス』『フェンネル』『メリッサ』『ヒソップ』ですが、ベースとなるお酒については特に決まりはありません。ビート(甜菜)やワインスピリッツが主流ですね。

およそ400種類以上の銘柄がありますが、使うハーブの種類やベースとなるお酒によって味わいも様々。アルコール度数は45度から高いものだと80度くらいまであります。

アブサンは無色透明な「ブランシェ」と緑色の「ヴェール」に分けられます。アブサンというと鮮やかなエメラルドグリーンの色が印象的かと思いますが、天然ハーブを漬けることで色付けされたアブサンは時間の経過と共に変色するので、鮮やかなグリーンは着色によって作られてることも多いようです。

アニス特有の風味が苦手という人もいますが、女性のお客様にはすんなりと飲まれることが多いですね。パクチーなどもそうですが、女性はハーブを使った料理を好むことと関係しているのかもしれませんね。ハーブの香りがしっかり感じられるのでクラフトジンが好きな人にもおすすめです」

アブサンは禁断のお酒? カラダによくないといわれるワケは?

浅野 「スイスでは1910年~2005年にかけて禁酒されていた歴史から誤解されている部分も多いのですが、カラダに害があるお酒ではありません。

禁止される要因となったのは、主原料となるニガヨモギに含まれるツヨンという香味成分。幻覚や麻痺作用があるとされていますが、こうした作用はニガヨモギの生草をかなり大量に摂取した場合のみに起きることで、アブサンを飲むくらいではなんら影響はありません。

現在ではアブサンの悪評の原因は、単なるアルコールの過剰摂取や安価なアブサンに含まれていた化学物質によるものというのが定説になっています」

1915年から禁止となっていたフランスでは1988年にツヨン濃度を制限したうえで、「ニガヨモギを含むアルコール飲料」の製造・販売を認めることになり事実上、アブサンが復活しました。

しかし正式にアブサンの禁止の法律が廃止され製品に「アブサン」という名称を使用できるようになったのは2011年になってから。 現在、EUではツヨンの最大含有量は1ℓあたり35mgと定められていますが、日本ではコーデックス委員会(消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として設置された国際的な政府間機関)の基準を採用してるため10mgが上限になっています。


浅野 「私がいわゆる『本物のアブサン』に出会ったのは2007年。とあるアブサンを輸入する在日のスイス人に出会ったのがきっかけでした。彼から現地での伝統的な飲み方や歴史、様々なエピソードを聞いて大変ショックを受けました。

当時は今以上にアブサンに関する詳しい情報がなかったため、毎年のようにスイスやフランスの蒸留所を訪れました。 そこで見たのは彼らが誠実な姿勢でアブサンづくりに邁進する姿。それは私が事前に思っていたダークな一面とは全く正反対のものだったのです。

一部のアブサンファンはツヨンについて、あるいははツヨン濃度の話題を好みますが、多くの生産者はその話には興味を示しません。 彼らにとって重要なのはニガヨモギが持つ香り、味、効能でそれを彼らの作品にどう生かすのかということ。純粋においしいお酒としてアブサンを飲んで欲しいという思いが伝わってきました」

儀式のようで楽しい! 伝統のスタイルで楽しむアブサン

アブサン
アブサンを飲むための「アブサンファウンテン」
アブサンファウンテン
陶器製のものは10万円近くするものもあるとか

浅野 「アブサンファウンテンという専用のポットから水を少しずつ垂らして飲む『ドリップ』が現地のスタイル。お店で使っているアブサンファウンテンはすべて海外で買ってきたものです。日本では作っているところはほとんどないと思いますね。

水を加えると白濁するのは、ハーブの精油成分などが析出(液状の物質から結晶や固体状成分が分離して出てくること)するため。 時間をかけてゆっくり水を垂らすことで香りが立ち、より複雑な味わいを楽しむことが出来ます。そして何よりゆっくりと白濁していく様を眺めるのはアブサンの最大の魅力なんですよね。

スイスでは食前酒として飲むのが一般的で、ハーブの作用で食欲が増進するようです。また、食後に飲むと消化促進の作用もあるようですね。 甘いものがお好きな方には角砂糖を溶かしながら飲む方法もおすすめです」

自宅でアブサンを…という場合は、茶こしに氷をひとかけら乗せて、水を少しずつ垂らすと近い雰囲気が楽しめるとか。これからの季節ならシンプルにソーダ割りで飲むのもおすすめ。アルコール度数が高いので、3~4倍に薄めて飲むのが美味しく楽しく飲むコツだそうです。

焼酎ベースで飲みやすい、国産のアブサンに注目!

国産アブサン
「アブサン クスシキ」「アルケミエ アブサン」「 アルケミエ 蕗の花」
浅野 「日本では以前、サントリーやモンデ酒造などが作っていましたが、しばらくの間、国産のアブサンは製造されていませんでした。 しかし近年、国内でアブサンを作る酒造メーカーが出てきています。

生産数が限られるため入手困難な場合もありますが、当店では2つの国産銘柄を扱っています。ひとつは「晴耕雨読」「不二才」などで知られる、鹿児島の佐多宗二商店ーが手がける『AKAYANE アブサン クスシキ』。自社で製造した芋焼酎をベースとし、更に自社畑で栽培したニガヨモギや日本固有のボタニカルを使った柑橘が際立つ味わいが魅力です。

もう一つは、岐阜の郡上八幡の辰巳蒸留所が製造している『アルケミエ』。 こちらは本場スイスの系譜を感じさせつつ、焼芋焼酎とちこり焼酎をベースにすることで新たな日本アブサンの味を表現しています」

どちらも「アブサンを広めたい」という強い想いで生産されているとか。焼酎ベースのためほんのり甘く、海外産に比べると飲みやすい印象。初心者でもおいしく飲めそうです。 ネットでも購入できますが、数量限定のため売り切れていることも多いので、興味がある方は探してみてくださいね。いろいろなボタニカルが使われていて、複雑な味が楽しめるのがアブサンの魅力。

クラフトジンの次はアブサンブームが来そうな予感です!

この方にお聞きしました

浅野進一郎さん

アブサンとシガーが楽しめる大人のためのバー、Vanilla Var (ヴァニラバー)のオーナー。海外から国産のものまで100種類以上のアブサンがそろっている。アブサンを使ったカクテルも人気。

浅野さん
※記事の情報は2019年3月18日時点のものです。
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